プロローグ『影が薄いと良い事無いよ』
僕の名前は新城 一紅
突然だが僕は今、信じられない出来事を体験した。
――十五分前
「じゃあホームルームを終わりにする。いつも言ってるが寄り道すんなよ」
「起立・礼・「「さようなら」」
帰りの挨拶を済ませ僕は用事は無いと帰ろうとした。その時一人の生徒が教室全体に聞こえる声で話し始めた。
「みんな少し聞いてもらえるかな」
――彼の名前は輝波光。圧倒的カリスマ性でクラス内……いや学校内ナンバー1の人気を誇る男。人気な理由はその神から与えられたカリスマ性だけでは無くどこぞの俳優にも劣らないその美貌。学校内では高嶺の花、街を歩けば三度見上等。なのに彼女が居ない不思議君。
……まああくまで周りからはそう思われてるってだけ。僕はそうは思わない。
閑話休題
彼の言葉を聞いたクラスメイト達は彼の方を向いた。僕を含めた全員ね。
「すぐ終わるから聞いてほしい。みんなも知ってると思うけどもうすぐ文化祭がある、その出し物を来週の学活で決めたいと思う。だからみんなにはその意見を考えてきてほしい……良いかな?」
そうかもうすぐ文化祭か、去年は何も出来なかったから今度こそは頑張りたい。何をするか決まって無いけどやる方もくる方も楽しめる出し物が良いな。家に帰ったら考えてみよう。
やる気があるのは僕だけでは無くクラスのみんながやる気のようだ。
「おう。俺に任せとけよ」
といつも元気な輝波の親友、市川信太。あだ名は豪傑男
「私も張り切りましょうかね……ウフフ」
とお淑やかで輝波に好意を抱いているだろう女子、菊海ヨウ。あだ名は腹黒女
「僕がいれば文化祭成功間違い無しだね!」
と僕と同じ一人称で輝波の幼馴染、浅見美紅あだ名はミルク
他の生徒たちもやる気満々で輝波の方へ熱意の籠った視線を送る。
あ、それと浅見は女の僕っ子。僕は男の僕っ子。一人称は同じでも性別は違うからね。
「みんなありがとう。俺も頑張るよ! それで今から渡す紙にやりたい事を詳しく書いてきて欲しい。なるべく細かく計画的な物を頼むよ」
そういうと彼は先生の机の上に置いてあったプリントをみんなに配り始める。
「みんなその紙に書いて月曜日の朝に集めようと思う」
みんな「分かった」と言って自分の鞄に丁寧に入れ始める……が僕の分が無い。僕まだ貰って無いよ。
僕は分かり切ってたとは言えやる気があっただけあり虚しくなった。去年の文化祭は劇だったけど僕の役割回ってこなかった。
――別に虐められてる訳じゃ無い。僕は影が薄いのだ。それはもう薄い。
朝の出席では名前がちゃんと呼ばれる。ただそれは名前が名簿に書いてあるから先生が呼んでいるだけ。返事をする前に次の人の名前が呼ばれちゃう。
昼ご飯は購買部で何も買えないので自分で毎日お弁当を作ってる。お金が無いんじゃ無くて購買部のおばちゃんが気付いてくれないんだ。
授業中だって名指しされた事なんて無い。学校内で挨拶なんてした事ない。スーパーに行っても買えないのでネットで取り寄せ。両親も影が薄くいつの間にか交通事故で死亡。
僕はいつも一人。でも一人は寂しくない。大変だとも思わない。生活していけるし交流関係が無くても大丈夫。でも家に帰って誰も居ないとたまに辛い。
僕がネガティブ思考なりかけた時、輝波の「それじゃ解散」の言葉で「はっ!」と目が覚めた。親を失って二年。こういう風になったのは三度目だ。もう考えまいと思ってたんだけど……
輝波の話が終わり帰ろうと教室を出ようとドアを開こうとした時違和感を感じた。
ドアが開かないのだ。何度も力強く横に動かそうとしてみるがビクともしない。何か詰まってるのだろうと考え前の方から出ようと考え行動に移そうとした瞬間、教室の床から不思議な模様がたくさん描かれた光る円が現れた。光り方は今まで見た事が無いような綺麗で少し嫌悪する摩訶不思議な色だった。
それを見た自称オタクの馬場柿通称オタガキがいきなり発狂しだす。
「うおおおおおお!!!!!!! こ、これは夢にまでみた異世界転移。うひょひょひょ!! そしてこのいかにもな感じの魔法陣これは確定でーーすね!!」
一瞬クラス内の視線がオタガキに移るがすぐにこの異常現象に対して考えだす。しかし魔法陣は考える時間を与えないと言うかのように強く発光しだす。そしてまだ叫んでるオタガキ。そして近くの人も見えない位光りだし光が収まると教室とは違う場所に居た。そして冒頭に戻る。
まだ見ぬ異世界に興奮する者。自分の身を案じ恐怖する者。とにかく纏まり安全を確保しようとする者。三者三様の動きを見せる中、僕はそのどれにも属さなかった。
――その頃、日本では
2-Aから眩い光が消え去った後、教室内は静寂が響いていた。
それからは大騒ぎだった。○○学園で起こった集団失踪。神隠しなど言われ三日三晩ニュースで取り上げられた。しかしそれからその騒ぎが嘘であったかのような落ち着きをみせ2-A集団失踪の謎を解明しようとする者はぱったり居なくなった。まるで意識を操作されてるかのような静けさに不気味さを抱く者を誰一人として居なかった。