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第5話 ガーディアンって何なの?

「喋った……」


この目の前の全身黒いスーツで決めている青年は、つまるところ俺のガーディアンなのだ。


熱血はガーディアンは喋っらないと言っていたが、それがなぜか今喋っている。

「どうした?せっかく私が護ってやるというのに挨拶の一言もなしか?」


「あ……よろしく……お願いします」


青年は、そんなかしこまらなくてもいいのに、と照れたように微笑むがそんな事はもはや問題じゃない。


なぜ喋ってる……?

周りも異変に気がついたのか、俺の周囲に集まってきた。


「え……今亮太のガーディアン、喋らなかった?!」

「私の名前はシロンだ。以後お見知りおきを」


「まぁ……こんな感じで喋るんだ、こいつ」


「マスター。私はこいつではないぞ。シロンだ」


なんか俺、意外に速くも馴染んでる?


そんな不思議な会話を交わしていると、皆の間を割ってやっとのことで熱血がやってきた。


「こいつぁ驚いた……」


余程シロンが珍しいらしく、熱血は柄にもなくぽかんと口を開けて唖然としている。


「ねっけ……じゃなくて先生!俺のガーディアン喋るんですけど」


取りあえず放心状態っぽかったので事実を突き付けてみた。


すると熱血は顔一つ変えず、ただ口だけを動かした。

「お前は……上級グランデだな」


「その通りです。さすがはねっけ……先生」


ガーディアンも飼い主に似るのだろうか。


シロンはこほん!と一つ咳ばらいをすると、改まって深くお辞儀をした。


「私は上級ガーディアン、シロン・パトリーヌと申します。どうぞよろしく」


こいつどんだけ挨拶好きなのだろうか。


「上級って?」


すると太一が質問した。


「お前たちはこれから自分のガーディアンを鍛えていくんだ。そして上級まで育てあげると、ガーディアンは意思を持つようになる」

え?

話の流れからするとどうやら俺のガーディアンは既に上級らしいけど……


「意思を持つってことは、つまり勝手に動くってことですか?」


クラスの誰かがさらに質問する。


「そうだ。つまり、自立するんだ」


『…………』


ん?何だろうこの居心地の悪い沈黙は。

なぜかクラスの皆は俺の方を恨めしげに見つめている。


「先生、じゃあなんで亮太のガーディアンは最初から上級なんですか?」


太一の質問にクラス一同が揃って頷いた。


なるほど、ガーディアンの強さはそのまま実技の点数に直結してくる。つまり皆はそれが羨ましいのか。


「それは先生もよくわからないんだが……よし高村!放課後職員室まで来なさい!」


「は、はぁ……」


り、理不尽!だけど逆らったらきっとあのムキム筋肉で平らにされてしまう。


「くそっ!嵌められたか……」


隣ではシロンがご愁傷様♪と両手を合わせて俺を拝んでいる。


「シロン!少しはマスターのことを敬えよな!」


取りあえずシロンに当たってみたのだが、それでもシロンはニィッと不敵に笑った。


「まぁまぁマスター。そうカッカなさらずに。不細工な顔が台なしですよ?」


「全然フォローになってねーよ!」


全く。口が多いってのも考えものだよ。でもクスクスと笑うシロンの笑顔を見ていると、取りあえずなんとかやっていけそうな気がした。


「い〜よな〜亮太は。最初から強いなんてずるいってのよ」


太一はちぇっとつまらなそうな顔をする。


「いーじゃねえか。お前は可愛い女の子のガーディアンなんだろ?」


「そっか!そうだったよ!早く喋るようになんないかなぁ〜!」


やべっ!墓穴掘ったよ!

このままだと太一が機械の女の子にあんなことやこんなことを……


「っひっく!ヒドイ!まさかマスターがそんな趣味だったなんて……!」


シロンが泣きまねをしながら涙に訴える。


「だれがそんな趣味持つか!っていうか勝手に人の心を読むなっ!」


ガーディアンは人の心を読めるのだろうか?


……こいつの近くで自分を慰める行為をするのはやめよう。


「マスター。自慰行為は人間の生理機能だ。私はそんなこと気にしませんよ。……私もするし……」


え、何最後の聞き捨てならない言葉は!


「いやいや、お前機械じゃないのかよ!」


「いいえ!」


「じゃあなんなんだよ!人間か?!」


「いいえ、ケフィアです」

「うごぉぉぉあああ!!」

すごい!温厚な俺をここまで本気にさせるやつがいるなんて!


「二人共もう仲がいいみたいだわね」


すると余程俺達がうるさかったのか、気がつくと後ろにはぷいと頬を膨らませた白雪さんが立っていた。


「そ、そんなことないよ!こいつ、うるさいし!」


「こいつではありません。ケフィアです」


こいつっ!殺す!白雪さんの前で恥かかせたら殺すっ!

「ほら、仲良くなんかないでしょ?」


そう顔では笑いながら目でシロンをシバく。


しかしシロンはただただニコニコと愛想笑いをしたまま顔色一つ変えない。


あぁ、どこかにガーディアンをいたぶる方法を書いた本はないだろうか。


そんな俺達の光景を見て、白雪さんは呆れたように笑った。


「やっぱり仲がいいわね。っていうか、ずるいわよ」

あ、やっぱりみんなそう思うよね。


「まぁ確かに最初から上級なんて反則だよね」


「それもあるけど、ガーディアンと話せるなんて友達みたいだし。私も早く上級になりたいと思ってね」


そう言って白雪さんは遠くを見るようにぼんやりする。

その仕草が猫のようで、とても可愛い。やっぱり白雪姫はどこから見ても有り得ないくらい綺麗なのだ。


そんなことを考えると改めてドキッとして、俺はちょっと調子に乗ってみる。


「もしかして、白雪さん寂しいの?」


「死にたいのかしら?」


「いや、あっすいません」

っ恐ぇぇぇ!

思ったより恐過ぎるよ!


白雪さんはそのぱっちりとした漆黒の瞳を冷酷に染める。


あっ、もしかして地雷踏んだのか?やっちまったのか?

俺がそんなことを想像して震え上がっていると、ようやくシロンが口を開いた。

「なっさけないですよマスター。押してダメなら押し倒せ!です」


今すぐその笑顔をブチ抜いてやろうか。


「あ、あはは!シロンのことは気にしないでね!ちょっと故障中でさ」


「誰が故障なんですか!ヒドイですよマスター!」


「ああ?お前のことだよケフィア!」


「ケフィアってだ〜れですか〜?」


「ってめシロンっ!」


「シロンってちゃんとわかってるじゃないですか♪」

「うぐぉあああ!!」


「ふふっ……」


そんなこんなで俺たちが胸倉を掴み合っていると、白雪さんが楽しそうに笑った。


よかった!機嫌を取り直してくれたみたいだ。


「今日の授業はここまでだ!時間からは対戦に入るからな!」


とここで熱血の馬鹿でかい終了の合図が響いた。

いろいろなことが有りすぎて何したかよく覚えてないんだけど。


「対戦、か。絶対ぶちのめしてあげるわよ、高村君」

「あはは、俺だって負けないから」


そんな風に最後に俺にウインクすると、白雪姫は走って先に教室を後にした。


「亮太、何話してたんだよぉ〜」


すると直後に後ろから妬ましそうな顔をした太一がにゅいっと顔を出した。


白雪さんの後にこいつの顔は正直ギャップが厳しい。

「別にたいしたことじゃねぇよ」


本当は最後に白雪さんがしてくれたウインクが可愛過ぎて死にそうだったけど、そんなこと言ったら周りからカッターが飛んできそうなので黙っておくことにした。



そして運命の放課後が訪れる。

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