少女、鈴木基“ガチな”厨二病患者の変
今日は、いろいろ大変だったな・・・・・・
授業の後結局、数人の男子に声をかけられた。全て賛辞の声ではあったがありがた迷惑である。男子バスケ部の生徒からは部活勧誘をされた。勿論、断ったが。
妬むわけでもなく、素直に褒め、実力を認めたのはかなり人の好さが出ていた。勧誘もねちっこくなく、断ったらすぐに引いてくれた。情報係兼友人は彼にしようか。
いや、佐々木君も捨てがたい。彼は、なんか従順そうだ。
まだ、どちらにも了承はとっていないが、彼らならどちらにしてもOKしてくれそうだ。晴の観察と第六感が彼らが性格の良い人だと物語っている。
因みに、変人鈴木は論外である。
何しろ、変人であるから話が通じないし、容姿がいいから無駄にモテる上に愛想はあるが基本的に一人で行動している。そんな奴と仲良く話していたら面倒くさいことになるのは目に見えているのだ。
クラスの掃除を終えた晴はいつもの如く、寄り道せずに生徒玄関に向かった。
今日は、手紙入っているのか?
頑なに接触をしてこなかった手紙の送り主が接触してきたのだから、もう手紙は必要ないはず。
きっと入っていないだろう、と予想をつけていたところで、生徒玄関に着いた。
「待ってたわよ!!一色晴!!!」
「・・・・・・・・・・・」
どうやら予想は外れていないらしい。だって送り主が直接会ってきたなら手紙の意味はない。
変人鈴木は、またしても仁王立ちをして待っていた。左手は腰に、右手はピストルの形に折り曲げこちらに向けている。
うわぁ。そういうポーズって二次元のツンデレツインテールキャラの特権かと思ってたわ。
晴のドン引きは顔に出ていたのだろう。
「な、何よ!!その顔は!!!」
案の定怒ってきた。
「いや、なんでもないよ・・・・えっと、それじゃあ、さようなら」
面倒ごとには、触らぬが吉。変人の変態的行為は、スルーをするのが大吉。
何もなかったように、変人の隣を通り抜けようとするが。
「はあっ!!??まだ、逃げようっての!!??一色晴!!!」
鈴木は大声で抗議してきた。
おいおい。鈴木さんよ。他の生徒さんが目を剥いて、君を凝視しているぞ。
「いや、逃げるっていうか、正直関わりたくないっていうか・・・・」
「っざけんな!!私だってあんたみたいな奴と関わりたくないわ!!!」
「はい。結論は出ましたね。さようなら」
いや、はや災難だった。帰ってコーラ飲もう。
「すとーーーーっぷ!!!何勝手に帰ろうとしてんの!?あんた、馬鹿なの?脳みそ梅干しなの?私だってあんたと話したくもないのに任務だから我慢してんの!!四の五の言わずさっさと着いて来なさいよ!!」
遂には叫んできた。てか、途中暴言吐いてるし。
おーいー、変人気付いてるか?時間がたって生徒が集まりだしてるんだぞ。
沢山の人が君をガン見してるよ。
今日は、部活見学がない日であるため、一学年全ての人が掃除終わりの同じタイミングで玄関に向かう。晴はそれを見越して、荷物をまとめてあったため早く生徒玄関に着いていたのだが、少女鈴木以下略が足止めを行った。
そして、話し合っている?(一方的に絡まれている)内に荷物をまとめた一学年の生徒がどんどんと押し寄せてきたのだ。
しかも、任務って。なに?最近の厨二病患者って団体で仲間集めでもしてんの?こわっ。
仕事のことを任務っていうあたりこの変人もたいがい厨二病患者なんだな。
「・・・・・・・・・・」
「な、何よ!?言っとくけどこれでまた逃げたら力づくで連れていくわ!!!!!」
もう、完全に騒騒ぎになってるよ。見世物じゃん。
あ、違うからそこの人、こっちを見て、こそこそ話しないで。騒いでんのこの変人だけだから。俺、関係ないから!!!
あ、こら!!!くそ変人め!!
なにやりきったみたいな顔してやがる!!
お前は馬鹿か?脳みそは梅干しの種サイズか?
・・・・外見がこんなにも変だからせめて性格は普通で大人しい、と思われるよう慎み深く行動したっていうのに、変人のせいで台無しじゃねぇか!!
明日、絶対噂になってるパターンだよ。
うわ。死にてぇ。
「いや、・・・・うん。もう、着いて行くからさ騒がないで」
これ以上この騒ぎ(変人からの一方的な絡み)を見られるよりは、厨二病患者に着いて行く方がマシ。晴は、素早く自分の置かれる状況を判断し自分になるべくダメージが少ない方を選択した。晴にとっては、変人に付き合うことと、多くの観衆に騒動?を見られるということなら、心の天秤は前者の方に吊り上がった。
「ふん。最初からそう言えばいいのよ!!さっさと着いて来なさい!!!」
勝ち誇った顔をした変人は、やっと周囲の眼に気付いたようだったが少しばつの悪そうな顔をするだけだった。
大人しく着いて行く晴と変人との間に勿論会話なんてものはなく。
何処に向かうのか?なんて疑問も口に出せるはずもなかった。
ましては、行って何すんの?なんて聞けるはずもない。
前を歩く少女はてっきり、家庭科室に行くのかと思っていたが、着いたのは社会科準備室。誰にも使われていない部屋である。
ああ、今日どっかのクラスで料理実習があったとか、言ってたよな。前の席の奴が。(決して盗み聞きなどではなく、勝手に耳に入ってきた情報である)
「失礼します」
「失礼します」
廊下でも会話一つ聞こえない、と思っていたら中にいたのは一人だけで。
「・・・・・・・・・・・」
しかも、どう考えても社会人の男性。30代くらいだろうか。
晴は、動揺していた。だってまさか、厨二病患者その二であろうはずの人がまさかの大人。
しかも、良識のありそうな男性だ。スーツを着ているという事は、この学校の教師?
厨二病は、思春期の子供だけが患うものじゃないのか?
というか、あの年齢でまだ厨二病患者とかやばすぎる。怖い。
晴は、今までの少しなら話を聞いてもいいか、という妥協を一気にゴミ箱に投げ入れ早々にこの敵陣から逃れることを決意した。
早速、それを実行するためこちらを見据える二人に自分の旨を伝える。
「お二人には申し訳ありませんが自分はお二人の仲間になるつもりはありません」
まだ、何の話もされていないが手紙から察するにこういう事なのだろう。
初めから、硬かった表情がこの発言を聞き、より険しくなっていることに気付きながらも晴は何も言わなかった。じっと立場が上なのだろう男性の様子を見ながら、次にどう行動すべきか考える。
「・・・・・・・君には、力がある。今は、正しい事のみに使っているようだが今後もそうなるとも限らない。察するに君は今日の体育の時間、少し力を出してしまっただろう?」
「あれは、力でありません」
晴の運動神経は力から来るものではなく、異世界で修行するうちに身に着けた全く異なるものである。
「そうか・・・・。まあ、これは今話し合う事ではないから後の回しておこう。だが、君のあれが“祓”でないとしても君は危険人物だ。それは君も分かっているだろう?私たちは君みたいな才能ある人を放っていく訳にはいかない。例え君が望んでいなくとも」
腕を組んだまま話す男は、微笑を浮かべており、最後の一言を放った瞬間殺気を送ってきた。
これは、少女、鈴木以上である。
「自分に才能なんてありませんよ?お二人は勘違いをなさっているようです」
だが、例え脅されようと晴には厨二病の素質はない。たぶんこの男の言う才能とやらは、どれだけ、自分が特別な人間になり切れるか、という厨二病スキルに違いない。
確かに、外見だけではそう見えるだろうが、晴の中身は平凡?な高校生なのだ。厨二病患者になりきるのはやはり恥ずかしい。
しかも、“祓”って何?なに、当たり前のように厨二病患者のワード使ってんの?俺、一般人だから厨二病患者業界で流行っているのかもわからない“祓”なんて単語わかんないんですが。
「しらを切れるとでも思っているのか?君のことは、すぐ私たちの所属する国家安全呪術機構に伝わってきたよ。君が一か月前何をしていたかは知らないが、君のその右眼と左腕を見られたのは痛かったね。私たちは、君に危害を加えるつもりはないんだ。寧ろ保護したいとさえ思っていっる。君さえ良ければ将来うちの機関で働いてくれればいい」
「ちょっ!!住良木先生!!そんなこと言っていいんですか!?」
「ああ、上から許可は下りている」
「・・・・・・・・・・」
何を言っているのか分からないが察するに、この二人は、厨二病という病気の為壮大な設定を用意し、俺を事故後から付け狙っていた、ということか。
そして、この男は先生であるという事。・・・・この学校どんな教師雇ってんだよ!!!見る目ねえな!!
「えっと、本当に力なんて持っていません。もう、帰っていいですか?」
「・・・・・本当に白を切るつもりなんだね。いいのかい?私はさっき言ったよ。君が望んでなくても連れていく、と。私たちは今すぐ君に武力行使することも辞さない」
遂に男は晴を脅してきた。男の威圧が空気を伝わり、部屋に充満し、時計の音が耳に着くほど静まり返る。もし、晴が異世界で勇者をやっていなかったら耐えられずに、屈服してしまっただろう。
「お二人はそれでいいんですか?どうなってもしれませんよ?」
本当に暴行まがいなことを行い、無理矢理勧誘してきたとしたらまずいのは、社会的地位からこの先生だ。もし、晴が屈服せずにこの場を逃げ切り警察に逃げ込んだらワンアウト。そのうえ、変な発言で、厨二病患者とばれツーアウト。そのまま精神病院でスリーアウト。
ワンアウトが取れたらなし崩しにスリーアウトで人生という試合は終わる。勿論、今までは誰にも言うつもりはなかったが、そこまでいけば話は違う。今後がめんどくさいから必ず話す。
そのうえ、晴が暴力でまけるはずがないから、ワンアウト確実。
この男の未来は終わる。
「それは、脅しかな?一色晴君」
男はにっこりと微笑む。
いや、脅してんのそっちじゃん。
「いいえ、警告です」
止めないとあなたの人生終わりますよ?
「っあんた、調子乗り過ぎよ!!一体何様なわけ?まさか、私と先生に勝てるとでも思ってるわけ?」
男の隣でさっきと比べると奇妙な位静かだった鈴木がついにきれる。もう、我慢できない、という感じだ。
「いや、・・・」
「細川さん、落ち着いて。分かりました。君がその気なら、決闘でけりをつけることにします」
そんなことはない。だが、社会的に、と説明をしようとしたが男に言葉を遮られる。
「は?」
決闘?
けっとうって決闘?血糖?血統?結東?
「明日の放課後、学校近くの山田公園に来てください。待っています」
その言葉を残し二人は颯爽と社会科準備室を去って行った。
「え、俺まだ返事してないんですけど?」