入部拒否
「いやぁ〜まさか入部することになるなんてな」
「お前が竹内さんにテンパりすぎるから
まともな思考が出来てないんや。」
相変わらず林の突っ込みはキレている。
「やけど…また野球できるんやな」
藤原が喜びをまじり気味に話す。
3人は中学で野球部を引退してからも
定期的に集まり練習していた。
最初は暇つぶし感覚だったが次第に林と藤原は
野球をやりたい思いが芽生え始めてきた。
「俺は妹のお迎えとかあるし、ほんまに
入部する気なかってんけどな」
「お前の場合は公園で練習してるところを
竹内さんに見られたから良いとこ見せようと
思って入部しよか考えたんやろ」
2週間ほど前に高校に入ってもいつも通り
3人で練習していたら偶然下校中の
竹内里奈に目撃され、そこから大河は
野球で良いとこを見せて竹内さんを
振り向かせようと思ったようだ。
「まあ動機はなんでもええもんよ。
よっしゃ、監督に話に行くぞ!」
3人はグラウンドに入る。
ネット裏で腕を組みノックの練習中の
姿を見ている30代ぐらいの男性が
おそらく監督だろう。
「すいません、僕たち1年生で入部希望なんです
けども見学しても大丈夫でしょうか?」
監督が不思議そうにこっちを見て、こう言った
「いや、見学する分には構わんけども
うちの高校の野球部は推薦での入部しか
認めてないぞ」
3人は固まった。
せっかく決意したのに一気にテンションも
下がったと同時に林が思い出したかのように
こんなことを言った。
「あっ、、そういえばこの高校は一般生徒は
軟式野球部しか入部できへんって
中3の時先生が言うてた気がする」
この馬鹿野郎。もっと早く思い出せよ。
大河と藤原はそう思った。
「悪いけどうちは本気で甲子園目指してるんや。
軟式野球部は入部できるんやし、君らは
そっちで野球したらいい。」
3人はそう言われグラウンドをあとにした。
その足で軟式野球部のところへ行ける気力も無く
その日はそのまま帰宅した。