入部
自宅から自転車で約20分にある高校
「大阪商蔭大学付属高校」に大河は通っている。
三女の若葉も現在ここに在籍中だ。
この高校に入学して1ヵ月が経ち
大河もやっと高校生活に慣れてきたころだ。
「おっす!大河!めっちゃ眠そうやな!」
教室で大河の背中を叩きながら話しかけてきた
朝から元気な彼は林友也だ。
「うるさいな林、朝から元気なんは
お前ぐらいやぞ…」
大河と林は同じ中学での野球部の仲間だ。
林も高校に入り野球を辞めていた。
「大河は毎日姉ちゃんの相手で疲れてるからな。
ラノベみたいなハーレム生活しやがって」
こう嫉妬まじりに話すのは藤原孝太郎、
彼もまた大河と林と同じ中学のチームメイトだ。
「ハーレムって言うけど家族やから…
家族に特別な感情とかないやろアホか…」
「大河くんおはよう!」
朝から元気で高い声。天使のような人物が
そこに立っているように大河は見えた。
そう、彼女は大河が気になっている女性の
竹内里奈だ。
「わっっ!竹内さん!おはようでふ!、です!」
「いやお前竹内さんの前ではテンパりすぎやぞ」
林が的確に突っ込む
「そういえば大河くん達、中学では野球部って
聞いたけど、高校ではやらへんの?」
「あー、竹内さん、俺も大河も藤原も
中学時代で燃え尽きちゃって高校では
ゆっくりしようって思ってんの。
まあプロになれる実力もないし、
ここら辺が潮時って感じかな」
林の言う通りだった。
大河は中学時代野球部でキャッチャーを
守っていたが決してレギュラーレベルの
実力ではなく、最後の大会も2番手捕手だった。
林はライトのレギュラーだったが3年生に
なってから怪我の連続で最後の大会も怪我で
間に合わなかった。
それに対して藤原はそこそこ名を馳せた投手だが
コントロールが定まらず自滅のパターンの連続で
高校では通用しないと思い入部していない。
「そうなんか〜…私野球部のマネージャー
することに決めたからみんながおったら
楽しいと思ったんやけど、残念やな〜」
大河はこの竹内里奈の一言で今までの全ての
発言、考えを一瞬で覆した。
「竹内さん!俺ら3人入部する!!!」
「はあ?お前マジかよ!」
「なんで俺らまで…」
林も藤原も巻き込まれたことに驚きはしたが
迷惑そうではない感じだ。
彼らも野球の情熱を忘れられなかったんだろう。
「ほんまに?やったぁ!楽しくなりそうやね!
みんなで一緒に頑張って甲子園目指そ!!」
「よっしゃ!!待っとれ甲子園!!」
「いやハードル高いって…」
「大河のバカが発動したよ…」
そして放課後、3人はまず見学のために
野球部の練習しているグラウンドへ向かう。