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イモカノ

作者: 穂村最冬

妹可愛い

 

 早朝、カーテンの隙間から日差しが差し込む。

 俺はぼさぼさになった髪をわしゃわしゃとしながら洗面台に向かう。

 特に代わり映えのしないだれでも体験できる朝。

 顔を洗いうがいを済ませると台所からとてもいい匂いが漂ってきて、俺の空っぽの胃袋は食料を欲すようにうなり声をあげる。

 朝食は毎朝の楽しみであり、一日の元気を養ってくれる。

 台所を覗くと男に比べると少し小柄な、160くらいだろうか ミディアムくらいの黒髪をした少女の姿があった。

 

「おう、おはよう」


 そう俺が短く挨拶をするが、彼女は気づいていなかったのか、少しびくっとして少し頬を膨らませこちらを振り返る。

 

「もう!お兄ちゃん!朝から驚かせないでよね!」


 少し低めの、しかしとてもかわいらしいよく通る声をしている。

 そんな素晴らしい声と、かわいらしくあどけない大人しそうなかわいらしい顔で怒られてしまった。

 驚かしたつもりは全くなかったのだが……

 

「ごめんって、そんなつもりじゃなかったんだ」


 俺はこれ以上怒られないよう彼女の頭をなでながらしっかりと謝る。

 するととても気持ちよさそうな表情を浮かべて、俺の撫でている手に自ら頭を擦り付けてくる。

 

「えへへ~、許すぅ~」


 甘えたような声で許してもらえた。

 本当にかわいいかわいい自慢の妹である。

 毎朝、こんなかわいい妹の手料理を食べれて、こんな甘えてもらえて、しかもこんなにかわいい所を見せてもらえるなんて、ほかの人には味わうことはできないだろう。

 そこは俺にしか味わえない特別なことだろう。

 

「よし、奈緒。そろそろ朝御飯食べたいな」

「うん!召し上がれ~!」


 俺はとてもきれいに焼けている目玉焼きに食いついた。

 少し醤油をたらし噛り付くと目玉焼きの中心の膜が割れ、半熟の黄身がとろりと滴り落ちてくる。

 その味が口に残ってるうちに白く輝く白米を口に入れる。

 さすが俺の妹である。たまごの焼き具合もちょうどよし、お米なんかは完璧だ。

 お米は、俺が普通に炊いただけでは出せないような良質な甘みを感じられる。

 

「今日も本当にうまいっ!ありがとうなっ」

「え、えへへ~照れちゃうよー!」


 素直に褒めてあげると、照れたように顔を赤らめさせにこっとしてきた。

 心の底からその笑顔を見るだけで生きていてよかったと思える。

 俺こと柚橋御代ゆずはし みしろは重度のブラコンである。

 妹とは血が繋がってはいない。

 故にか一つ下の妹のことを溺愛し、かわいくてかわいくてしょうがない。

 一生結婚できなくても妹がいればいいと思ってるくらいには妹バカだ。

 だからと言って普通の女子に興味がないわけではないが……

 そんなことを脳内でなぜか語っていたら、袖をちょんちょんと引かれた。

 

「おにい、そろそろ家でなきゃ学校間に合わないよ?」

「あ、ほんとだ。いつの間に」


 時計に目を移したら八時過ぎになっていた。

 俺と奈緒は同じ学校なので二年で奈緒は一年なのでもちろん教室は違うが、昇降口までは二人で話しながら毎日登校している。

 仲のいい友人が言うには、事情を知らない人からは仲が良すぎてカップルだと思われてるらしい。

 まぁ、それは正直どうでもいいが毎朝一緒に登校できるのは本当にうれしい。

 俺は妹であり彼女である奈緒の頭に手を添えて顔を近づけ、唇を奪った。



 

 

 

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