表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

テンプレであっても簡単にこなせるわけがない

なんとか投稿…

「———ぉ……おお…おお……!!」

 何かを嚙みしめる様な———そんな声が前方から聞こえてきた。

 内心で一応の決着をつけた俺はそこでようやく、周囲を見渡す。

 そこは豪華な装飾が至る所に拵えてあった。上では大きなシャンデリアが煌々と周囲を照らし、下には真っ赤な絨毯が敷かれている。後ろを振り返れば、それはこの場所の入口であろう大きな門へと長く伸びていた。

 なにより、極めつけは目の前の椅子に座るヒゲを生やした男性だ。そして、その両脇には彼を守るようにして二人———鎧姿の人間がいる。騎士…だろうか。

 そんな、彼らを挟んで両脇には高級そうな衣服に身を包んだ人たちが俺を、注視している。その視線はなかなかに異様な迫力を伴っており、正直———居心地が悪い。

 おそらく彼らはこの国の中心———貴族かなにかなのだろう。


「待っていた……。そなたが———勇者だな」

 現状をある程度把握したと同時に、目の前の椅子———おそらく玉座だろう。そこに座っている男性が俺に尋ねる。

 その声は震えており、その眼からはどこか祈る様な感情が見え隠れしている。

 まあ、おそらく、それは俺が勇者だという確信がほしいのだろう。

 不安なのだ。

 俺が勇者か否か。

 黒ローブの話を信じるなら、今、この世界は【魔王】という存在によって危機に瀕している。

 たとえ、100パーセント俺が勇者であっても、本人の口から改めて聞きたい。安心したい。そういうことなのだろう。

 その気持ちはわかる。俺も同じ人間だしな。


 そこでだ、俺は勇者…で、いいんだよな?

 我が事ながら、全く自信がない。

 誰が俺みたいな一般ピープルが勇者やると思うよ。


 よくある物語の英雄とか主人公とかってさ。

 こういう場で自信満々に話しをするじゃない?

 この際だから言わせてもらいたい。


 ふざけんな。


 無理だからね。少なくとも俺は!冷静に話そうと!心がけようと!いくら思おうがどう足掻いても余裕ぶって話せる気が全くしないよ?

 ……アイツまじでなんなん?俺断ったよね?もうさ、あの説明聞いた段階で既にもう、成仏するなり輪廻に入るなりして来世に俺のこと託そうと思ってたんだよ?あ、ここが来世なのかな?ハハッ…!まじで覚えてろよクソッタレ。


「ええ———そう……です」

 ボロが出ないよう、言葉少なに答える。

 よし決めた。寡黙キャラでいこう。うん。そうしよう。

 ……土壇場だったが結構いい案なんじゃないか?素直にそう思った。


 ザワッ


 俺のその答えに周囲はざわつきだす。

 しばしの間それが続いたかと思うと、王様が手を挙げる。するとそれはピタッと治まった。


 すごいな、これが王様か。

 全身からカリスマが溢れていらっしゃる。

 緊張で手汗が滲み、その眼光に負けじと目を逸らさない———嘘です。逸らせないだけです。


「……この度は我が国の召喚に応じてくれて誠に感謝する。そして…いきなりこのような場所へ召喚して申し訳なくも思う」

 そういって王様が頭を下げるとまた周囲がざわつきだした。


 これがあれか、よくみるカリスマ的な王様か。

 文章で読むのと実際に見るのとでは明らかに迫力が違う。

 改めて考えるとトップが頭を下げる———それも俺なんかに対して。


 控えめに言ってやめてほしい。


 そして、ここで普通なら「頭を上げてください!」とか慌てて言うんだろう?

 現に、大臣とか宰相っぽい人が「頭をお上げくださいッ!!」とか必死になってる。

 でもな。一般的な価値観と豆腐メンタル———おまけに小心者な俺は恐縮しすぎて、逆に言葉に詰まってる。

 つまり、どういうことかというと———


「…………」


 絶賛無言タイム突入ですよ、本当にありがとうがざいましたァ!!


 え、え、どうすんの。


 これ明らかに俺が何か言わなきゃいけない流れだよね?

 無理無理無理。やっべーじゃん!ほら、明らかにいつまでも黙りこくってる俺に不審な目が集まってる。

 どうすんのこの空気。

 正直、この場から逃げ出したい。

 もうおうち帰りたい…ってああそうか俺もう死んだんだっけ?じゃあ、なんでここに———ハハッアイツマジで許さん。

 って駄目だ。黙ってると直ぐに思考がマイナスになっていく。

 なんとかしないと。


 あ、あ、王様もなんかいつまでも顔を上げられなくて戸惑い始めてるし。

 あ、待って騎士様。そんな剣呑な眼光で俺を見ないで!腰の剣に手を添えないで!!ただでさえ緊張でちびりそうなのに、それ、抜刀ならぬ抜剣されちゃったら漏らす自信あるよ?だから、ね?掃除大変だし、ね?そんな意味を込めて騎士を見つめていると。



 バンッ!!



 と大きな音が響き渡り、周囲の注意がその発生源へと逸れた。


 おそらく、それは後ろの門から誰かが入ってきた音なのだろう。

 なぜ、そんな言い方なのかって?


 騎士が怖くてそれどころじゃないからだよ。


 今の音で余計にビビッてちびりそうになったし。

 ほんとに不意打ち、ダメ、ゼッタイ。


「貴様!今は大事な謁見中であるぞ!コトと次第によっては———」

 俺を睨んでいた騎士がその者に対象を映し、怒鳴り声をあげる。

 視線が俺から外れて密かに安堵していると、その言葉を遮るようにしてソイツは叫ぶ。

 どうでもいいけど、あの人の言葉を遮るとか恐ろしいな。

 いま、睨んでいる騎士の人(かのじょ)すごい形相だぞ。

 熊殺せるんじゃない?視線で。


 しかし、そんなのんきなこと言ってる場合じゃなかった。


「大変です!!魔族が進行してきました!!」


 絶句した。


 そして思った。


 …………展開速すぎだろフザケンナ。













誤字脱字の指摘、ご意見ご感想おまちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ