5 14歳
目が覚めた。
悪夢だ。
14年間生きてきて二回目の衝撃的な朝だ。私、前と同じで過去に戻ってきたんだろうか。だとしたらあの夢は私の未来。あの最低最悪な人間が私の末路...嫌だ!絶対に嫌だ。
私には恋愛は向いていないみたい。真面目に生きて行こう...。
「先生、佐藤さんの給食...先生?」
どうやら朝じゃ無かったみたい。
起き上がろうとすると、頭がクラクラした。そうだ私、体育でサッカー、ゴールキーパーをしてたはず。
ここは保健室のベッドだ。
「どうしよう」
向こうに誰が居るんだろう。 私はカーテンを開けた。
うっわ、懐かしい!誰だっけ...いやいや、私何言ってるんだろ。
「駒木...?」
坊主頭で、睫毛の長い大きな目。お父さんが近所のお寺の住職さんで、親子で顔がそっくり。でも坊主頭なのは、彼が野球少年だから。
トレーを持ったまま狼狽えている。
「は?ああ、佐藤さんか。良かった。さっきはすいませんでした」
礼儀正しく頭を下げる。
「え?何が」
「さっき俺が蹴ったボールが佐藤さんの頭に直撃して脳震盪...」
「あ、そうなんだ。気にしないで」
「給食を持ってきたので」
と言って、トレーを指差す。
「一人で食べるのね...」
折角の中学校の給食なのにそんなの寂しい事この上ない。でも持って来て貰ったものを持って教室に戻るなんて悪い気がするし。
「駒木君も持って来て一緒に食べようよ」
「ぇえ?!」
しまった、つい夢の中のノリで...どうも現実と夢が頭の中で混同しちゃっているみたい。脳震盪の後遺症?
「あの、これ以上噂になるような事をすると、後々迷惑になると思うので...」
迷惑!そうよ晴子。人に迷惑をかけないって、さっき誓ったばかりじゃない!あの未来からは少しでも遠ざからなくちゃ。
「そうだよね。ごめんね駒木、迷惑になるような事を言って」
「え?」
「私大丈夫だから。そうだよ、早く戻って駒木も食べないとね」
「あ、うん...じゃあ、お大事に」
また律儀に頭を下げて、保健室の扉は閉められた。駒木と今まで喋った事ってあったっけ。なんか変なの。礼儀正しさと男らしさで迷ってる感じ。やっぱりお家の教育が厳しいのかな。
「晴ちゃー」
保健の 先生も戻って来たし、食べ終わった頃には苗ちゃんが来てくれた。良かったぁ、と抱きついて来るので先生に怒られた。
「もう大丈夫だよ。今日何してる?バレー?」
「こぅれ。一応安静にしてよ」
先生が言う。
「えー、昼休み遊べないの」
「気絶したんだから、やめといた方がいいよ」
苗ちゃんまで。もう全然平気なんだけどなぁ。この時間が成長期の子供にはとっても重要なのに。
食べ終わった給食のトレーを持って、先生にお礼を言って、廊下に出る。二人で向かうのはまず給食室。
「じゃあさ、図書館行こうよー、たまには」
「うん、そうしよ。あのさぁ苗ちゃん」
「?」
「ごめん」
「何で?」
「心配かけて」
「するよー、気絶したら。親友だもん」
「その気絶気絶言うのやめてくれない?何か、すごく格好悪くない?...」