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鬼、連戦する

じり、と音を立てて俺は林の中から道へと出る。

やたらとまぶしく、下品な色のついた明かりが俺を照らす。


「なんだおっさんかよ!つまんねえ、ひき潰してやろうぜ!」


鬼らしき頭に角を生やした奴が吼える。腕につけているのは甲冑か?

鋼の色をしている。


「いや待てよ。後ろの方から女の匂いがするぜぇ!お楽しみだったのかよ!」


犬頭の毛むくじゃらが下品な笑い声を発する。衣装は派手派手しい馬鹿なものだが。


「丁度いいぜ。肉に女があればご機嫌なパーティーができるってもんだ」


こっちはトカゲ頭に鱗のある奴。なにやら浮く板切れに乗っている。


「そういう訳だ。さっさと血反吐吐いて屍晒せや!」


俺はただため息をついて静かに言った。


「近頃はケダモノも人の言葉を喋るらしいな。面倒だ、まとめてかかって来い」


俺はそのへんの木を引き抜いて適当に構える。


「舐めやがって!吐いた唾飲まんとけよ!」


チンピラの一人が俺に指を向けた。鉄砲の形だ。

なにやら豆粒でもぶつけられたような感じがしたが、それだけだ。

まあ人間相手ならばちょっとした投石くらいにはなるだろうが。


「やかましい」


俺は手にした木を振り回して投げは放つ。それだけで乗り物に乗っていた奴らは動きがとれず押しつぶされた。


「てめえ!」


今度は鋼の手甲をした奴の腕が縦に裂けて中からなにやら刃物らしきものが出てきた。

機械仕掛けらしく刃が回転している。


「音だけはやかましいがな、刃物とはそう使うものではない」


俺は向かってくる奴の刃物の横腹に手を当てて軽く妖力で爆発を起こす。

それだけで奴の腕は壊れた。


「くそっくそってめえら魔法だ!魔法を使え!」


愚連隊のやつらは浮く板やら滑る靴やらで距離をとって呪文を唱え始める。


「我は雷公の旡、雷母の威声を受け、五行六甲の兵を成し、百邪を斬断し、万精を駆逐せん!」

「遍満する金剛部諸尊に礼したてまつる。暴悪なる大忿怒尊よ。砕破したまえ。忿怒したまえ。害障を破摧したまえ!」


なんともまあ、しょっぱい雷に炎よ。くだらん連中だ。俺は奴らが呪文を唱えている間に十分な数の岩を取る事ができた。

適当に避け、岩を投げつける。


「うおお、いてえ!いてえ!」

「畜生逃げるぞ!」


逃がすか。どうせ愚連隊のような連中だ。いなくなっても誰も困りはしまい。


「逃がすか。そうだな……腹も減ったし貴様らは俺の飯になってもらう。

貴様ら俺を食うつもりだったのだろう?だったら食われても文句は言えまい」


俺は指先に炎を集め、そして天に向け巨大な火炎の球を作る。

さて……飯時だ。


「やめてくれ!悪かった!悪かったから!」

「ああ、悪いな。貴様ら親から聞かなかったか?悪い子は鬼が攫って食うぞとな。

だがまあ貴様らは焼いて食いでもせねば毒がとれまいよ」


俺の頭上には俺の作り出した巨大な火炎。


「双方そこまでよ!」


すると、目の前の空間が歪み、中から一人の娘が出てきた。

手足には黒黄の縞模様をした甲冑のようなものをつけている。

黒い「シャツ」とやらに赤いネクタイ、格子柄のやたら短い「すかあと」を履いていた。


「我、土蜘蛛八十女つちぐもやそめの連座に加わる者。

この血を以って我が祖の業を使わしめたまえ!

厳つ霊の神威を以って谷底に鎮まり給う闇御津羽神クラミツハよ!水をここに、炎を消さしめよと畏み畏み申す!」

「ふむ、娘。お前は土蜘蛛か。なるほど今の世はこれほど節操なく妖が大手を振って歩いているのだな」


しかしこの娘、なかなか良いたたずまいをしている。

自然体だが隙がない。何か武術をたしなんでいるのだろう。

今の妖は腑抜けてしまったのかと思っていたが、どうやらそうでもなさそうだ。


「で、仲間か?どうもそうは見えんがな」

「ええ、こんな奴らと一緒にしないで。先に名乗っておくわね。私は網磯野アミシノイツマ。

神祇省生活安全課の職員……っていってもわからないだろうから、大雑把に役人と思ってくれればいいわ」

「で?その役人がどうする?」


土蜘蛛の娘はため息を吐いて愚連隊共に威圧を放った。


「あななたち、さっさと消えなさい。大目に見てあげるから」

「ひ、ひいい!」


愚連隊の連中が逃げていく。なるほど役人ならば人殺しを黙って見ている訳がない、か。


「ふむ、だが役人よ。これで事が済むとは思っておるまい鬼の得物を取ったのだぞ」


そこにリコが林の奥から出てくる。


「鬼童丸さん、もういいだよー!レイブンの人に逆らったら討伐されてしまうべ!

私が呼んだだ!もういいだべよー!」


「れいぶん」だの神祇省だのよくわからないが、要は俺のような妖を討つ役人なのだろう。

しかし妖怪が役人をする世の中か!なるほど面白い。実に浦島太郎になってしまったのだなあ。


「ええ、解っているわ。私は別に討伐をしに来たわけじゃないし。でも、この人はやる気みたいだけど。

まあいいわ。一曲踊ってみる?」

「是非もなし!」


土蜘蛛の娘は膨大な妖気を解放した。空気が震えるほどだ。

なるほど、ただの大言壮語ではあるまい。

闘気が肌に焼け付くようだが、気負った様子がない。なかなかの武芸者のようだが、さてどんなものか試させてもらうぞ!


tips:力試しをしましょう

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