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二日目・4

コピペミスがあったので修正(5/26 15:55)

 その日、俺の脳内掲示板において、あるスレッドが立ち上がり、なかなかの賑わいを見せていた……


   ―――【悲報】信じて召喚した英霊が美少女戦乙女に蹴られて、アホ顔ダブルピースな件【通報しました】―――


「あああ! 会いたかったよヘルヴェル! 相変わらず美しいね。さぁ受肉してすぐは動きに慣れるまで大変だろう? 僕に掴まってくれ、居住区まで抱っこで運んでグボォア!」


 おー身長180cm超えてて筋肉質な彼の体重は100kg超えてそうなのに、掌打一発で軽々と吹き飛んだ。専門家の見立てによると攻撃魔法とか強化魔法とかは使ってないそうだから、あの破壊力は純粋に技量が高いのか。


 さて、ここは召喚儀式陣の部屋。俺が森で狩りをしてる間、根性で二日酔いを押さえ込んだダイダロスさんが自身の技能(スキル)を使い、部屋と通路を拡張してくれたおかげで、体高5メートルの俺にもある程度の余裕がある広さになっていた。


 吹っ飛ばされたはずのヴィーラントさんは、ダメージなど微塵も感じさせず笑顔で立ち上がり、再び吹っ飛ばした張本人に抱きつく。


「ふふ、照れ隠しかい愛しき我が妻よ?」


 あの、抱きつかれた少女が顔を真っ赤にしてプルプル震えてるんですけど。怯えてる訳ではないだろうから、怒ってるのか照れてるのか、或いは両方か。ヴィーラントさん嬉しいのは分かるけど、とりあえず鼻血拭こうよ、絵面的に完全にアウトだよ。


「フッ照れた顔も可愛いよヘルヴェル、確かに初対面の人が多い場所で睦み合うのは、シャイな君にはガハァ!」


 今度は抱きつかれた状態で、正確に顎先を蹴り抜き、20メートルはあろう天井まで飛ばすとは流石戦乙女。ってかヴィーラントさん死んでないよね? 頑強とは言え一応人間基準の肉体のはずだけど。


 召喚して、延々とド突き漫才を続ける二人に、どう声をかけていいのか分からず、放置してたらなんか周囲のギャラリーも観戦モードに入ってる。


「おースゲェ、人間の身体を蹴り一発で天井まで飛ばせるもんなんだなぁ」


「ふむ、瞬間的な魔力の行使が見えるのであるな、彼女の右足が彼の顎先に接触と同時に、体内の重要な器官に魔術的な防護を施してるのである。ごく一瞬、ごく少量の魔力行使にして、我輩をして感心に値する巧緻にして繊細な……」


「蘊蓄が長ぇよ、しかしまぁボコボコにしてはいても、それこそ魔術で守ってても腕の部分は蹴らないあたり、あの嬢ちゃん分かってんな」


 俺たちは召喚部屋の片隅で、何もできないでいた、だって声のかけようが無いし。


 ヴィーラントさんのような見た目三十代半ばで、無精ヒゲを伸ばし放題のむさ苦しいオッサンが、見た目15~16歳の美少女に抱きついては蹴られる、または殴られる。


 何と言うかそれこそ現代日本だったら社会的地位を失いかねない光景だなぁ。異世界だからセクハラ訴訟とかはないよ、やったねヴィーラントさん。


「君の照れ隠しは相変わらずだなぁ、昔に戻ったようで嬉しヒデブッ!」


 彼女の容姿は神々しいの一言に尽きる。白を基調にした全身鎧を纏いながらも、殺伐とした印象はなく、背にした純白の翼と、腰まで伸び動くたびに光を反射しキラキラと輝く銀の髪と相まって、まるで画聖が丹念に描き上げた宗教画から抜け出してきたかのようだ。ただそこにいるだけで膝をつき手を合わせてしまそうになる程、荘厳な佇まいを見せた。


 だたし……


「だぁぁ毎度毎度恥ずかしい奴デスね! 普通にしてなさい普通に! サシュリカ様が呆れてらっしゃるデスよ!」


 これまで無言でヴィーラントさんを折檻してたヘルヴェルさんが、顔を真っ赤にしながら吠えた。少女らしく少し高めで、可愛らしい声なんだけど視認できない速度で、髭面オッサンの顔面にラッシュを叩き込んでる姿には、神々しさとか、荘厳さとかは一切無かった。あえて言うなら一切無駄のなさそうな挙動と勇猛さは戦乙女(ヴァルキリー)らしいか?


 手が出る系のツンデレか、まぁ旦那以外に被害はいかないから気にしない事にしよう。


「そうそう僕たちの居住区は現世風で過ごし易『落ち着くデス』ブハァ!」


「人の話を聞くデスよ!」


 ヴィーラントさんのセリフを遮り、戦乙女の回し蹴りが、縋り付いてた変質者の側頭部にクリーンヒットした。その流れるような体捌きは格闘技の経験なんて全くない俺にすら、その実力の程を窺わせる。


 あ、蹴られて倒れたと思ったけど笑顔で復活した。銀髪美少女戦乙女の蹴りはご褒美なんですね、分かります。


「ったくうるせぇな、折角新しくした召喚部屋で騒ぐな馬鹿野郎」


 ダイダロスさんは焼き鳥片手にビールを飲んでいた。口では文句を言ってるけど、口元がニヤついてますよ?


 まぁ惨事にならないと分かってる夫婦喧嘩なんて、いい酒の肴だろうな。


「よほど嬉しいのでしょう、あ、そろそろ追加で串を焼きますわ、すぐ用意致します」


「ん、任せた」


「奥方、我輩は英明なる思考が鈍る故、酒精の類は遠慮するのである」


 かしこまりました、とキッチンに向かう女性、召喚してから騒ぎまくってるヘルヴェルさん達と違って、ダイダロスさんの奥さんのナウクラテーさんは、見た目30歳手前くらい。楚々とした物腰の……例えるなら高級料亭の女将さん? いや、高級クラブのホステスさんか―――行った事はないけどな―――兎に角上品さと色気が漂う、大人の女性と言った感じであっという間に馴染んだ。


 うーん、派手カラスの姿焼き美味しい、生肉とか平気で食うドラゴンの俺でも、丁寧に下味をつけた鳥の姿焼きは美味いと感じる事が出来た。料理めっちゃ上手いねナウクラテーさん。


 ……さて、のんびりしてるダイダロスさん夫婦と、召喚してから延々と夫婦喧嘩と言うか、じゃれあいをしてるヴィーラントさんとヘルヴェルさんは放っておいて。


 さも当然の如く、食料庫から勝手に持ち出してきた、パンやらスープを始め。ナウクラテーさんの手料理をガツガツと頬張る口髭中年に話しかけることにする。


 今まで声かけてなかったのかって? まるで自分の家のように寛いで他の人と話してるんだもの『あんた誰?』とは聞き辛かったんだよ、何度もステータス確認しちゃったよ。


(あの貴方ってヘルメスさんですよね? 俺召喚の儀式をした覚えがないんですけど)


 召喚した覚えがないのに、俺以外に魔法の部屋は起動できないはずなのに、なぜかいるこのヘルメスさん。見た感じ整った口髭を生やした50歳くらいの、いかにも学者とか教授とかの肩書きな似合いそうな、知的そうな顔立ちで、着ている服は中世の貴族を思わせる豪奢なものだ。一見悪印象を抱くような容貌はしてないのだけど……だ・け・ど!


「なに、マリエルなる天使が持つ端末は、冥府と現世を結ぶ霊的なラインで繋がっているのである。この世界に興味を持ったが故に冥府から無断で覗き見していた我輩は端末機能を一時的に奪って、召喚陣に干渉したのである。そして、そこな奥方が召喚される瞬間、それは冥府と現世にて魂の回廊が大きく拡がる一瞬なのである我輩はその刹那を見計らい、勝手に便乗し現世に受肉した次第である。冥府に保管してあった魔石とマナを無断で借りたがまぁ瑣末な問題であろう、何故なら我輩はアベシッ!」


「さも当然のようにしてますけど犯罪ですからね!」


 ヘルメスさんの演説を打ち切るように、マリエルさんがフルスイングした特大ハリセンは、良識とか自重とかの概念が落丁した隙間に、なんかアカン系知識が詰まってると思われる脳天にジャストミートした。


 良い音だったなぁ、この人紳士っぽいのは見た目だけで物凄いダメな人だ。


 実は彼女さっきまで冥府に戻っていて事の次第を上に報告してきたのだ、普通に考えてクラッキングと、覗きと、横領である。あと冥府で決まってる細かい法令にダース単位で引っかかってる。


 ハリセンのダメージから回復したヘルメスさんは、真っ赤な顔でマリエルさんと睨みあいを始める。


「天使の小娘、宇宙の至宝たる我輩の頭脳に何たる真似を!」


「泥棒をひっぱたくくらい問題ありません! サシュリカさんに呼ばれてもいないのに、なんで平気な顔して馴染んでるんですか!」


 プンプンとか擬音が浮いてそうなマリエルさんを見て、ヘルメスさんは。いかにも失望したとでも言いたげな、態とらしい溜息を吐いて一言。


「我輩だからである!」


 仁王立ちで胸を張り―――俺から見ると腹を突き出してるように見える―――ドヤ顔で碌でもないことを言い出す口髭中年の脳天に、再度フルスイングされた特大ハリセンが叩きつけられヘルメスさんは気絶した。一連の騒ぎを見ながらダイダロスさんが呆れたように。


「大将よ、英霊なんてのは多かれ少なかれ我が強いからな、コイツほど勝手なのも珍しいが、仮にも叡智の神とも言われるヘルメス神と同一視されるレベルの魔法使いだ。この世界に興味を持ったって事は送り返してもまた来るだろうよ」


(そう言えば冥府の住民は制限があるにせよ現世に行けると言ってましたね)


「それは違います、現世に行けるといっても、通常ですと本体は冥府に置いたままで、意識だけを予め現世に用意してた肉体に移す形なんです。だからなにも用意されてない現世に向かっても、幽霊状態で様子を見るくらいしか出来ないはずなんです、少なくと『生き物』は異世界を渡れないはずなのに」


 世界と世界の間というのは神ですら破れない強固な壁があって、この壁は生き物が絶対に通り抜けられないようになってる。そういう『法則』が働いてるそうだ。


 生き物だけが通れないというのが肝心で、魂や霊体だったら通過できて、尚且つ物資のやりとりも可能らしい。


 召喚陣でマナを使い受肉してないはずなのに、肉体を持ってここに居る。出来ないはずのことを平気でやらかしてるのがヘルメスさんだ、目の前で気絶してるけど。


「コイツはヘルメス神と同一視されてるから、権能の一部を使えて異世界を渡るなんて鼻歌交じりに出来るんだよ。それでも受肉は難しかった筈だが……そうか、ダンジョンの機能に目を付けやがったんだな、このレベルの魔法使いなら裏技くらい知ってるだろうしな」


 ダイダロスさん曰く、冥府の住民達の中には受肉して現世で自由に生きられるなら、違法であってもチャンスに飛びつく人は多いそうだ。冥府も悪い環境では無いのだけど、やっぱり窮屈らしい、特に生前フリーダムに生きた人はチャンスを虎視眈眈と狙ってるとか。


「その世界を担当する神になるか、その部下ならそのへん融通は利くんだがな、指導やら視察の名目で簡単に受肉できる」


(はぁ、この世界の担当にしてくれるって実は破格の条件だったんですね)


「そうですよ、サシュリカさんのサポート役だって希望者殺到したんですから。すっごい競争率の中普段の行いのお陰で私がサポート役に抜擢されたんですよ」


 えっへん、と腰に手を当てて胸を張るマリエルさん、小柄な割に豊かな胸が眼福……じゃなくて、気絶したヘルメスさんの件、どうしようか相談したかったけど。まぁドヤ顔のマリエルさんが可愛いから後にしよう。




   ~~~~~




 結局、どうせ何か別の手段でやって来るのだから、このままダンジョンで働いて貰うことにした。送り返すにしても手段が後味悪いからやりたくないし。


 最高位の錬金術師にして魔法使いだから、戦力として期待できるのかと問われれば、イエスだ。しかし信用できるのかと聞かれれば……うん、まぁダンジョン運営の邪魔はしないと信じたい。


 冥府の法令違反の件は、マリエルさんが確認を取ったところ、彼が勝手に使った冥府の資材を彼女を経由して冥府に返却すれば、お咎め無しが上司の判断らしい。意外と融通が利くことにビックリだ。


「うう~~あの人って、魔法使い系の英霊の中じゃ最高格ですから、かなり高く付きますからね。期限は特に決まってないので無理しない範囲で返済しましょうね? ブツブツ…サシュリカさんが頑張って魔物を倒して得た魔石なのに……」


 マリエルさん的にヘルメスさんを可能ならさっさと送り返したかったのだろう。真面目な彼女にしてみれば、自由人なヘルメスさんは天敵っぽいな、後は俺の負担も憂慮してくれてるみたいだ、マリエルさん優しいなぁマジ天使。


(まぁまぁ、そのくらいポンと払える甲斐性を見せてあげますって)


 ちょっと見栄もあるが、俺だって男だからね女の子の前では格好良いところを見せたいじゃないか。ところでヘルメスさんがちょろまかした冥府の資材は如何程で?


 その事を聞くと、マリエルさんはちょっと言いにくそうに……


「A級魔石3個と魔力量にして一万五千マナです」


(ヘルヴェルさんの三倍ですか!? あの人そんなに強いの?)


 マリエルさんはそっと持ってるスクリーンを見せてくれる、彼のレベルを見てみる……




個体名:ヘルメス・トリスメギストス


種族:/英霊(レベル70)


職業:錬金術師(レベル50)/魔法使い(レベル50)/賢者(レベル50)/哲学者(レベル50)/神官(レベル50)/薬師(レベル50)


基礎技能:英霊基本セット(レベル15)


肉体技能:生産系技能多数/感覚強化技能多数


精神技能:系統を問わず魔術系技能を数え切れないほど習熟/精神系技能多数


固有技能:※三重に偉大なヘルメス/※神翠の秘奥板



※三重に偉大なヘルメス:ギリシャ神話のヘルメスやエジプトのトト神、その他様々な偉人が統合。と言うかゴチャ混ぜになった人なので、種族として【神霊】にごく短い時間にせよ成れる。人間レベル1と幼竜レベル1とではそもそも同じ土俵に立てないように、英霊と神霊では存在の格が大きく隔たっている。そもそも基礎的な能力値の桁が違うのだから。


 例えるなら人間が短い時間だけウル○ラマンに変身し好き勝手できる、そのくらい基礎能力値をガン上げする能力。


※神翠の秘奥板:魔術の奥儀を記した石板、魔力を流すと一切のタイムラグ無しに魔術の行使が可能。それこそ数日間儀式を続けなければ発動しないような大魔術でも即座に使用可能とする。しかも周囲の魔素を勝手に集めて魔力としてチャージするので、貯蔵を超えない限り本人の魔力消費も無い。




(なんですかこのチート?)


「自重しないでマナを注いだ高位の英霊はこんなものです。逸話によってはとんでもない固有技能持ってたりしますからね」


 あまりのステータスに驚いてると、いい加減ヴィーラントさんも落ち着いたらしい。ヘルヴェルさんを伴って挨拶に来た。


「サシュリカ様、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません、戦乙女のヘルヴェルと申します」


(よろしくお願いします、お二人が感動の再会をしてる間、ダイダロスさんの奥さん、ナウクラテーさんが歓迎会の準備をしてますよ)


 ナウクラテーさんも歓迎される側の人なんだけど、本人がやらせて欲しいと頼んできた。あの人家事能力半端じゃないんだよね、マリエルさんも料理上手だけど、何と言うか手際の良さが全然違う。


「あ、あれはウチの宿六が恥ずかしい事するからデス!」


 顔を真っ赤にしたヘルヴェルさんを見て、またヴィーラントさんが抱きつこうとしたので止めておいた。またド突き夫婦漫才再開されたら、話が進まないからね。


 この後気絶したヘルメスさんを起こし、皆自己紹介が終わったところで、俺が転生して2日目の夜が更けて行った……なおヘルメスさんがコソコソとなんかやろうとしていたが、ヘルヴェルさんに見つかり、酒を飲まされダウンした。最高格の英霊は酒に弱かったようだ。





   ―――聖なる山の宮殿は巨大な竜が寛げる程広大であった


   ―――彼は天と地と人々に宮殿を守る従者を招くよう命じる


   ―――人々は彼にダイダロスを遣わせた、宮殿を更に豪奢に飾った


   ―――大地は彼にヴィーラントを遣わせた、目も眩むような宝物を献上した


   ―――天は彼にヘルメスを遣わせた、この世の全てに等しい知識を彼に教えた


   ―――彼は褒美として、ダイダロスとヴィーラントに妻を与え、ヘルメスに自由を与えた


   ―――これが二日目の話


ある遺跡で発見された、古い石板より抜粋

読んでくれた皆様ありがとうございました


このヘルメスさんですがイメージとしてデモン○インのマスター○リオンの戦力持った西博士だと思ってください

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