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四日目・2

ここ数日のブックマークの伸び具合に( ゜д゜)な作者です


 誰が石を投げたのだろうかと飛んできた方向を見てみるが、岩場があるだけで動くものはない。次に体に当たっても落ないでそのまま俺の鱗に引っ付いてるソレを見てみると。


(石かと思ったけど……貝?)


 ぶつかってきた黒い石は、よく見ると貝だった。さらによく見ると地球で言う岩牡蠣によく似てた。


 まぁ湖に岩牡蠣がいるのか? とか思ったが魔物が跋扈する世界で淡水棲の牡蠣がいたってなんら不思議じゃない。そもそも形が似てるだけで別種だろうし、岩に擬態する貝なんてどんな世界にも居て当たり前の生態だろうからな。


 持って帰ったら食べられるかな? 思い返せば前世において生牡蠣は食えなかったなぁ当たっちゃって、フライにしても偶に腹壊したし。


 それはさておき、誰だ投げつけたのは? 沢山あるならもっとくれ。人に化けれるようになればフライにして食べる、いやドラゴンの胃腸は丈夫なんだし生食しても大丈夫か。


 岩場に隠れてるんだろうか? 凍った湖面を手足や尻尾を駆使し腹ばいになってスイスイと滑りながら近づくと、また飛んできたので手で払い落とす。


 考え込んでいると再び飛んできたので叩き落す、かなりの勢いなので顔面に当たったりすると結構衝撃が来るので、気を付けよう。


(はて、透明な魔物でもいるのか? それとも保護色で背景に溶け込んでる感じか?)


 ふと足元を見てみると叩き落としたはずの岩牡蠣(仮)が落ちてるはずだが、白い湖面の上なら目立つはずが見当たらない。


 手を見てみると爪の部分に飛んできた貝が引っ付いていたので、範囲を絞った氷のブレスを吹きかけ、ダンジョンに送っておく。


(やっぱり誰もいないような? 岩に擬態してる魔物か? それにしては貝を投げてくるなんて……)


 岩場に近づくと貝を飛ばされてくる頻度が増え、出来るだけ叩き落としてはいるが何個かは避けられずに胴体に命中してしまい、俺の体には黒い岩牡蠣っぽいものが何個も付着してる。


 どうも岩に空いてる穴から飛ばされてくるようなので、フルスイングで転移のメイスを叩きつけると岩だと思ってたものが転移した。


(魔物だったのか、やっぱり岩に化けた魔物か)


 よく見ると湖畔には似たような岩場がそこらじゅうにあった。そのうち一つを観察してみると、穴から貝を何十個も噴出してるのだけどヘロヘロですぐ近くに落ちていた。


 本来もまとめて噴き出すはずが、穴が凍りついててまともに飛ばせないのか、俺に当たったのは無事な噴出孔が一つだけだったからか。


 とりあえず完全に凍らせて持ち上げて、陸上に放り出すと岩の魔物かと思ったら、なんと単体で3メートルはある貝、巨大岩牡蠣だった。


(なに? この魔物自分の稚貝を敵にぶつけんの? どういう生態なんだコレ?)


 自分に引っ付いてる稚貝を見る、ぶつかったのは結構な衝撃だから、普通の獣なんかじゃ一撃で死ぬかも知れない……ひょっとしてこれ攻撃手段じゃなくて繁殖か?


 自分の体に氷のブレスを吹きかけ稚貝を落とす、ん? なんか引っ付かれてた部分の鱗が微妙に溶けてるぞ。


 これはアレか、仕留めた生き物を稚貝の養分にして成長するとか、そういう類か? グロいなオイ。


 ちょっと想像してみる、呑気の空を飛んでて、この巨大牡蠣の稚貝をぶつけられ死亡する鳥がいたとする。ドラゴンの俺ですら結構な衝撃受けるものだから、多分鳥だと体内にめり込む、そして鱗が溶けてることから推測すると……やめよう、グロい光景しか思い浮かばない。


 気持ちを切り替え、陸に揚げた巨大牡蠣を見る、うんサイズを別にすれば地球の岩牡蠣そのものだ。試しに尻尾で持ち上げ凍った地面に叩きつけると、氷のブレスの影響か呆気なく粉々になった。


 砕けた殻の中身は……やっぱり牡蠣だった、とりあえず食べよう、粉々の殻を退かして中身だけ取り出し齧り付く。


 ―――もしゃもしゃ、ゴリッ(あ、中に魔石があったか)もしゃもしゃ、ごくん。


(うっま! 生牡蠣(仮)最高! こりゃ何個でも食えるわ、そういえばレモンを垂らすと良いって聞いたな試してみるか)


 食料庫からレモンを数個取り出し、握りつぶして果汁を巨大牡蠣にふりかけてから齧り付く。


 ―――もぐもぐ(うん結構合うな)もぐもぐ、ごくん。


 この世界来て肉ばっかり食ってたけど貝も美味いな! 恐らく湖面の岩場に見えるのは殆ど巨大岩牡蠣だろう、見える範囲の全部採ろう。


 貝だから逃げもしないし、沢山いるから獲り放題だなこりゃ、スケートも楽しいけど後にしよう、食欲を満たせる牡蠣の乱獲を始めよう!




   ~~~~~




 巨大牡蠣は湖面を漂いながら、素早く動く鳥や魚をどういう理屈か感知して稚貝をぶつけてくるようで、陸上にいるとぶつけてこない。流石に稚貝が生きていけない場所目掛けて発射するほどアホではないようだ。


 よって安全圏の岸から氷のブレスを最大出力で放ち、真っ白な水面にポツポツと見える黒い牡蠣をダンジョンに送り続ける、俺のブレスを浴びれば流石に即死するようだ。


 既に俺から見える範囲内の巨大牡蠣は全て転送した、場所を変えるため飛ぼうとして、そういえば経験値のために生かして送った方が良いのを思い出す。


(貝だけじゃなくて魚も欲しいな、この世界に来てから肉ばっかりだしな)


 牡蠣の乱獲は続けるけど一緒に魚も捕ることにする、具体的には湖の真ん中に例の魔物寄せスライムの体液を垂らす、んで集まったところで覚えたての魔法で雷を落とす。


 一発で死ぬ弱いのはそのまま送って、生き延びるくらい頑丈なのはメイスで転移させる、転移させたところでダンジョンの部屋に水場はないので、放置してるだけで経験値が手に入る、完璧だな。


 気分はモグラ叩きだ、湖から10メートル上空をホバリングしてると、巨大なピラニアっぽい肉食魚が噛み付こうと飛びかかってきたが、転移のメイスで叩き落とす。


 水中に黒い影が見えたかと思うと、水中に引き摺り込もうとする水棲の大蛇が尻尾に巻き付いてきたが爪で引き裂く。


 毒々しい色をした10メートルくらいあるカエルが、俺ですら反応できない速度で舌を伸ばしてきて食われそうになったが、間一髪、竜語魔法・氷で自分の体を氷でガードし飲み込まれるのを防ぐ。


 そしてカエルの口の中で氷のブレスが吐き出し、生きたまま凍らせ、ダンジョンに転送する。


 何というか予想外に強い魔物が多くて、水中に引きずり込まれたら危ないな、空中にいても最初に考えたほど安全じゃない。


(湖面全部を警戒するのは思ったより厳しいな、せめて出てくる場所が限定されれば……そうだ!)


 とりあえずさらに上空へ飛び、湖に向かって最大出力で氷のブレスを発射。


 凍りついた湖面に、全力でメイスを叩きつけ穴を開け、少し離れた場所に魔物寄せを垂らす。


 すると穴の中から水棲の魔物たちが飛び出してきた、しかし当然氷の上ではまともに動くどころか呼吸すら出来ないのだ、俎上の鯉とはまさにこの事! 鯉っぽい魔物がピチピチ跳ねてるしな。


「アンギャァァァ(フーッハッハッハ! 食欲に負け自ら死地に赴くとは愚かにも程があろう! まぁ良い我の糧となる為にその身を投げ出したと思うがいいぞ!)」


 濡れ手に粟というか、入れ喰い状態というか、氷上で跳ねてるだけの魔物を次々とダンジョンに送っていると、今度はザリガニというかエビっぽい魔物が這い出てきた。


(おっ今度は海老か、フライにして……)


 ―――ズドンッ


 ハサミを向けてきたかと思うといきなりナニカが飛んできた! 距離があったから間一髪躱せたけど、掠った部分から血が出てる。


 海老擬きのハサミから発射されたのは水の弾丸だった、しかも俺の鱗を容易く貫通する威力があるのか!


 水の弾丸で遠距離から攻撃してくるかなり凶悪な海老擬きは、俺が落とす雷をものともせず水弾を撃ってくる、負けじと更に数発叩き込んでやっと仕留めることが出来た。


 危ねぇ! あの海老擬き―――仮称弾丸海老とする―――の水弾で翼を撃たれたら飛べなくなってたかも、躱しにくい胴体ではなく執拗に翼を狙ってたあたり、逃げられないようにしてたのかも知れん。


 ―――バキンッ


 一匹倒して安心していたら、凍りついた湖面に亀裂が走る、俺を囲むように氷が砕かれ、亀裂から先ほどの弾丸海老が複数這い出てきたので慌てて上空へ逃げる。


 這い出てきた弾丸海老共のハサミが俺に一斉に向けられ、慌てて急旋回すると、さっきまで俺のいた場所を数発の水弾が通過する、やばい一匹でも危ないのに複数寄ってきたか。


「シャギャァァァ!(ふん! 我のおこぼれ狙いの死肉漁りか、水遊びに付き合ってやる程暇ではない)」


 とりあえず偉そうな捨て台詞を吐いて逃げる、こんな危ない奴に囲まれてたまるか! 竜語魔法で濃霧と風を発生させ、とにかく上昇、なんとか撃たれても大丈夫な距離を稼ぐ。


(あ、危なかったぁぁ!、あの弾丸海老の水弾ってダメージデカそうだし、スゲェ精度で撃ってくるんだよな)


 あと雷数発に耐えたことから、相当タフな上、エビだけに殻も頑丈そうだ。単体で動いてるならともかく群れてるのが更にタチが悪い。


(なんか射撃武器を逸らすような感じの防具でも作って貰って明日来よう、今日のところは安全に巨大岩牡蠣を集めるとするか)


 どうもあの貝は湖の外周部分に集まってるようなので、今日は湖を一周したら帰るとしよう。この大森林で最大の湖だし狩りをしながらなら、終わる頃には日も暮れるだろう。




   ~~~~~




 広大な湖の周囲を飛び、目に付いた魔物を転移のメイスでダンジョンに送り続けていると、そろそろ日没間際の時間になってきた。


(今から帰れば丁度いいかな? 戦乙女達の歓迎会をする予定だし、早めに帰るか)


 出来ればあの娘達の歓迎会は昨日のうちのやりたかったけど、遅かったし、ゾンビ退治から帰ってすぐだったから、体洗ってすぐ寝ちゃったんだよね。


 居住区に新たに造った大浴場は女性陣に好評だった。本来ダンジョンで設置できるお風呂は、お湯が張れるだけでちょっと殺風景なものだったけど、しかしダンジョンには神話の名匠がいるのだ。


 設置して、ゾンビ退治して帰ったら、何ということでしょう! もう目を見張るビフォーアフターでした。


 ドラゴンの俺がゆったり入れる巨大浴場なんて、豪華なんだけど不思議とリラックス出来るような居心地の良さだし、女性用大浴場はどれだけ素晴らしかったかをマリエルさんが力説してたくらいだ。ちなみにレナさん以外背中に翼が生えてるのだけど、ちゃんと羽を洗えるように工夫がされた造りだったと絶賛していた。


 そんな中、お風呂ではしゃぐ幼い戦乙女達にちゃんと入浴の作法―――ミリス王国式入浴作法は日本の入浴マナーと大差なかった―――を伝えてくれたレナさんはちょっとお疲れのようだった。


 ミリス王国には公衆浴場が多く、貴賎を問わず交流の場になってるそうでミリス貴族の彼女は随分と厳しく指導したようだ。お風呂の入り方で育ちと教養が分かる、とはあの国の偉い人の言葉らしい。


 冥府から取り寄せてもらった観光ガイドブック『日本名湯百選』や『世界のセレブ御用達ホテル紹介』は参考になったようでなによりだ。


 なお男湯はダイダロスさんの趣味全開で、如何にも寂れた秘湯とでも言いたげな渋い造りをしてるそうだ。まぁ楽しんでもらえればなによりである。


 我がダンジョンの福利厚生はともかく、今日の猟果を使ったご馳走なのだから俺が帰らないと、歓迎される側の彼女たちは一切箸をつけないだろう、あの娘達忠誠心高いからね。


 自我が芽生えてすぐの娘達をお腹空かせたまま待たせるのも悪いからね。


 弾丸海老対策は明日にしよう、今日はうちの娘達のために急いで帰るとするか。



読んでくれた皆様ありがとうございます

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