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プロローグ

初投稿です

プロローグと第一話を投稿します

 目を覚ますと、辺り一面真っ白な空間だった。


 天井も床も、地平線の彼方まで白一色で、色が付いてるのは自分の体と……


「今世もお疲れさまでした」


 目の前にいる、死人かと見紛う程顔色が悪い、スーツ姿の男だった。


「は、はぁ……どうも、あの、体調は大丈夫ですか?」


 なんとなく、自分の身に降りかかった異常よりも、目の前の見るからに体調不良そうな男が心配になってしまった。


「お気遣いありがとうございます、ですがまぁ、我々鬼卒、いや冥府の役人は皆こんな感じですから」


「冥府? 冥府の役人……って事はここはあの世?! 俺死んじゃったの?」


「え~……いきなりの事で混乱するのも分かりますが、お話ししても?」


 目の前の顔色の悪い男―――長いので役人さん―――は、こんな反応にも慣れた様子で話しかけてくる。不思議と混乱する頭にもしっかりと響いて、なんとなく落ち着いてしまう。


「……はい」


「なんとなくでも良いので、覚えてる範囲で結構です。ご自身の事をゆっくりと、話してみてください」


 自分の事を話すのは、あまり経験のない事だが、学校や会社などの面接とは違ってあまり緊張せず気楽に話せた。ゆっくりと、自分の名前から家族構成、子供の頃にあった出来事から最近の事まで話す。




   ~~~~~




 白い空間に来た時は立ったままの筈だったが、いつの間にか勧められた椅子に座り、話し終わる頃には、役人さんが用意してくれていた2リットル入りの麦茶のペットボトルは空になっていた。


「お疲れさまでした。かなり記憶が鮮明に残ってるようですね」


 役人さんは少し驚いた様子で、テーブルに備え付けてるやや古めのノートパソコンを操作している。なんか見覚えがあると思ったら以前自分が使っていたノーパソと同型だった。


「そのパソコン、何年か前に俺が持ってたヤツと同型みたいですけど、なんか思ってたあの世のイメージと違いますね」


「現世と同様に冥府だって近代化してますよ。実を言うと冥府の者でも人知れず現世に遊びに行ってたりしますので、当然便利な道具があれば買ってきますよ」


 パソコン入力しながら、意外な事実をカミングアウトする役人さん。なんて事だ現世では遊び感覚で幽霊が行き来してたのか。


「なんとなく考えてる事は分かりますが、一応我々は幽霊ではなくて肉体を持った神の一種ですからね」


 神というのは伊達ではないらしく、正確に俺の疑問に答えてくれる役人さん。なんでも幽霊とかそういうのは、この白い空間から逃げ出したり、間違って変な場所に迷い込んでしまった魂を指すそうだ。


 肉体を失った時点で大半は記憶が薄れてるので、訳も分からず現世を漂ってしまう。そういうのを連れ戻すのも役人さん達の仕事らしい。我侭な奴が多そうだ。お疲れ様です。


「えっと……貴方の場合現世でもう少し功徳…おっと現世の為になる事、つまり善行を重ねれば神になれる資格があります」


「それは役人さんみたいに冥府に定住するという事ですか?」


「冥府という言葉で誤解させてしまいましたが、所謂天国とか極楽とか言われてる場所ですよ。ソコで世界全体の運営の手伝いといったところでしょうか。住みよい場所ですので心配することはありませんよ。もっとも来世で悪い事したらまた何度か生まれ変わりしないと駄目ですけどね……」


 役人さんは冗談めかして笑いかけてくる。正直顔色の悪さと相まって、臨終間際の微笑みにしか見えない。そんな事を考えてると、役人さんのパソコンからアラームが鳴る。


「失礼、ちょっと緊急の告知ですね、少々お待ちください」


 そう言って何もない空間から電気ケトルとカップ、インスタントコーヒーとかを出してくれる。スゲェ! マジもんの魔法だ……と思ったが馴染みのありすぎるメーカーのコーヒーで、一気に威厳やら神秘とかが消え去った。




   ~~~~~




「お待たせしました、ちょっと生まれ変わり先が決まってない人向けに、必ず勧めるようにと、上の方から通達がありましてね」


「決まってない人というと俺とかですか?」


「ええ、貴方はこれから質疑応答の後に幾つかの候補から選んで貰う予定だったのですが……」


 役人さんはそう言ってプリントアウトした紙を渡してくれる。なんとなくハローワークの求人広告みたいだと思いながら、日本語で書かれた書類を読んでみた。


「魔素蔓延による不安定な世界?」


「ええ、魔素とは、ううん、なんと説明したものかな……世界が誕生すると、どうしても出てきてしまう魔物の素でしょうか」


 役人さんの分かり易く噛み砕いた説明によると、世界が出来た直後は、魔素と言う魔物を生み出してしまうエネルギーが蔓延するらしい。そのためこの魔素があると世界は不安定になり、文明は発達せず人口も増えない。


 よってその魔素を収集して生命エネルギーへと転換し、その世界に還元して生命のサイクルを安定させるのが、役人さん達の仕事らしい。


「この世界は、そうですね貴方にとって分かり易い例えで言うなら、ドラ○エ3くらいの文明から、魔物の脅威によって一歩も進んでないのです」


「すいません、もうちょっと詳しく!」


 その瞬間その聞き逃せない言葉に反応してしまう、俺の食付きぶりにちょっと引いてる役人さんだったが、丁寧に分かり易く教えてくれる。


 その世界は所謂、剣と魔法のファンタジーと言える世界であり、魔素収集の役目を持った神は大勢いたが、予想外に魔物が強大化してしまった為、撤退せざるを得なくなったらしい。


 神なのに勝てないのかと思ったが、役人さん達はちょっと便利な術を使えるだけで、戦力は殆ど持ってない。なぜなら善行を積んだだけの元一般人なのだから。


 だからと言って強い神をその世界に送り込むのは、最後の手段であって問題があった。なぜなら強い神と言うのは燃費が悪い。それだけで魔素を転換して得られる筈の、世界に還元する為の生命力―――マナと呼ばれてる―――を、ごっそり消費してしまい、循環できなくなってしまうとの事。このマナが少なくなってしまうと、痩せた土地が多くなり、人口が増えず本末転倒だとか。


 ただし、裏技的な手段で神がその世界に根を下ろし、力を振るう手段もあるそうだ。


 しかし準備に膨大なコストがかかるのと、誰も彼もが現世に降臨したいので、冥府の混乱防止の為に基本行わないと決まってる。


 そこで冥府の上層部が考えた解決策とは、人間の魂に意識を持たせたまま魔物に転生させ、巣を作り魔素を収集してもらう事。


 魔素の塊である魔物が巣を作ると周囲の魔素はそれだけで集まる。つまり周囲の魔物も集まる。


 巣に侵入した魔物を自分で間引く。現地人に倒させる、又はガンガン外に出て魔物を自分で倒す事で世界を安定化させるのが目的とのこと。


「本来は魔物が魔素を吸収しすぎて強大化しないよう、世界創造直後から収集をするのです。それでその世界の住民に倒せる程度のものにして倒させるようにしています」


 役人さんは気遣わしげに俺を見て。


「書類を見てもらえば分かると思いますが、この件は魔物に生まれ変わって貰うというもの」


「……あっ! って事は最終的に殺されるのが確定なんですか? でも、なんで態々魔物に? モンスターになるより人間のままの方がハードル低いんじゃ?」


「生まれ変わるということは、その世界の住人として、生命のサイクルに従い、新たに誕生するという形になります。つまり赤ん坊からスタートという事ですが、我々は現地の営みに極力関わらないのが原則です」


 つまり人間に生まれ変わったとしても赤ん坊じゃ何もできないし、そもそも両親に説明のしようがない。不安定な世界だから、独立できる年齢になるまでに生きられる保証もないし、心変わりだってありえる。


 現地の人に関わらないのが原則である神としては、不思議パワーでなんとかするくらいなら、最初から強い生き物に生まれ変わらせたほうが、ルールに接触しない。


 うーん、流石に頭の中にブレーキがかかる。ファンタジー世界には行ってみたいし、魔法のある世界を満喫してみたいが、誰とも会話できず殺伐と狩りだけし続けるのはちょっと……下手すれば追い立てられて狩られるんじゃ?


「そこまで非道な要請はしませんよ、サポートも付きますし、知恵のある魔物は魔法で人に変化できます、魔素の収集以外は自由にしていただいて結構ですので、ある程度こちらでなんとか出来るくらい世界が安定するか、貴方が強力な魔物を倒してくれれば、その件を以て神として迎え入れられます、元々貴方は今世で善行を積んでましたからね」


 あ、確かに書類の報酬の欄にそう書いてあるな。7その世界を管理する役職が貰える上に、現地で魔素収集を手伝ってくれた人も、次の生まれ変わりで優遇―――ある程度要望を叶えてくれる―――される、または俺からの要望があれば、人数制限はあるけど自分の部下として神の座に招けると書いてある。


「もう一つ加えて、世界そのものに蔓延した魔素は、仮に最強格の軍神を派遣したとしても数十年、あるいはもっと掛かるかもしれません。こちらのサポートは勿論ありますが、孤独は精神を蝕みます。その世界の住民になるわけですから、早いうちに結婚するのをお勧めしますよ」


「魔物なのにですか?」


「知恵のある魔物は殆ど番を持って子供を作ったりしますよ、人に変化すれば人とも可能です。もう一度言いますが、貴方はその世界の住民になるのだから、魔素の収集さえしっかりしてくれれば自由に生きてください……ええと他に質問はありますか?」


「生まれ変わるとしたらどんな姿になるんでしょう?」


 そう言うと役人さんは、すぐに候補の画像を見せてくれる。


 いくつかの種族を選べるみたいだけど、画像を見た俺は迷いなくドラゴンを選択、その後幾つかの確認をしたあと、そのまま椅子から立ち上がり、背筋を伸ばしてお辞儀をする。


「お願いします、是非俺にやらせてください、俺やってみたいです!」


 備考欄にも現地を担当した役人さん達のサポートがあると書いてあるし、意識を持ったまま異世界転生とかこんなチャンス逃したくない!


「そ、そうですか? やる気があるようで何よりです、それでは……」


 俺の熱意にやや引き気味の役人さんがパソコンのエンターキーを押した瞬間、俺は意識を失った。

読んでいただきありがとうございます。

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