前日祭
バスの中は大にぎわいで絶えず笑い声が聞こえていた
人気の歌手のことやアイドルのこと
マンガの話やゲームの話
そして今から始まる1週間のキャンプの話
絶対に話し声が絶えることはなかった
「なんか初めてだから緊張するし、バス揺れるから寝れないよね」
隣にいた同じ団の男子が言う
「わかる。なんかこのまま寝たら寝違えそう」
たわいもない話をしていても時間は過ぎるもので気付けば夕方のはずが夜の12時を回ろうとしていた
隊長が声をかける
「明日は8時に会場につく予定だ。はよ寝なかったら持たんぞ!寝ないやつは隊長からのこちょこちょの刑だ!」
皆、最後の言葉で笑ってしまった
玲も笑った
そしてふと視界にある人が入った
(煉だ)
玲が目に映したのはずっと好きだった、煉
屈託なく笑う様子に安堵して前を向く
好きだとは言えないけれど後1ヶ月しかない短い時間を大切にしようと思った
そう、玲は来月転校するのだ
県外へ出るため、もうこのメンバーでジャンボリーは行けない。
複数の団が集まって出来たこの1個隊は奇跡としか言いようがない
最後の団の活動の思いで作りをジャンボリーでしようと玲は考えていた
気が付いたらトイレ休憩のためにバスが止まっていたらしい
3時だった
バスの中の電気は消されスースーと寝息と「トイレ行こう」という囁き声しか聞こえない
上級班長の蒼真と凜に誘われて玲もトイレへ向かった
「少し寒いね」
「やっぱり夜だから冷えるのかも。それに私達半袖じゃない」
凜がほら、と言うように袖を見せる
「でも会場はスゴい暑いからな。今にこの寒さが恋しくなるぞ」
蒼真が笑いながら言った
確かに暑そうだ
玲たちは南に向かって走っているのだから
少しは暑くなるだろう
トイレから出てきてバスに戻るとバスは出発した。
最後だったらしい
玲は戻るとき少しだけ煉を見た
肘掛けに頭を置いて寝にくそうにしている
それだけ見て自分の席に戻った
近くに居れるだけで幸せだから
そう思って眠りについた