ドタバタの威風堂々(エルガー)
演奏会当日は、6時起床。普段の出勤日よりも早いくらいの張り切り。
とくに、その日はちょっと遠出の地区演奏会といわれるイベントだった。
とある観光地の観光施設内にある音楽ルームでの演奏会。ピアノの音を聞きつけたお客様がフラッと立ち寄って聞いていってくれるような環境で弾ける。
アマチュアとはいえ表現者であるドルチェたちのテンションが、上がらないわけがないのだ。
地元から一緒に行く約束してた友人と合流したのはイイが・・・、彼女、なんと
「楽譜を家に忘れてきた!」
と言い出す。
しかし、ちゃっかり衣装の“ドレスは”持ってきていた。いったい何しに行くつもりだったのか・・・その後しばらく話のネタになっていたことは言うまでもない。
仕方ないのでドルチェは先に行き、途中で他の方面からの皆と合流したりで、ワイワイと最寄の駅に到着。そこからタクシーに乗るコトに・・・タクシーなんて年に数回しか乗らないドルチェには楽しい贅沢。
そこでまた珍しい経験もした。一緒に居た人数は5人。ぜったい制限人数オーバーだと思い分乗しようと思ったら、運転手さん何を思ったか「全員乗れる」とのこと。後ろのシートに大人組み(?!なんとなく年齢的にも体系的にも・・・)の3人が荷物と一緒に乗り込み、小柄な2人が前へ・・・って・・・かなりギューギュー。
「こんなんアリなんだぁ~!!」
と大騒ぎしながら、5分ほどで到着した。
会場入り(?!)すると、すでに来てる人も何人か居て負けた気分。
まずはリハーサル。
このリハーサルの時間、意外にドルチェには苦手な時間だ。後に待ってる人がいると思うと気になり、落ち着いて弾けない。ピアノに慣れるためだけにちょこっと触る程度でいいことにしてしまう。
リハを早々に終わらせてフラフラしていると(皆に挨拶して回ったり、更衣室で皆と雑談したり、プログラムを作ったり・・・)会長に受付を頼まれてしまった。開始の準備がてらプログラム整理してみたり。
その受付でも、ビックリ体験をすることになる。
演奏会の見学料は、もちろん無料。
その日は、観光地で人の出入りが激しいこともあり、受付も優雅に椅子に座っていられないくらい慌ただしかった。通り掛かりで足を止めてくださった方を招き入れるという営業的なことも必然的に出入り口を護る受付の役目になるからだ。いろんなお客様に立ち寄っていただき、なかなか賑やかな演奏会になった。
そんなお客様の中の一人のおじ様、出て行くときに胸のぽけっとからお札を一枚取り出し
「タダで見させてもらうなんてもったいない!」
と 言い置いて 出て行ってしまった。
一瞬、唖然。
慌てて
「私たちはプロではなく、営利目的の活動ではないので、お金は頂けません。」
と説得したのだが結局返させてくれなかったので、ありがたく会費に入れさせていただいた。
さて、ドルチェ自身の演奏はというと、、、
何故かアップテンポでスタートしてしまった。確実に、受付での動揺を引きずっていた。マーチの部分の16分音符が速すぎて追いつけなそうだったり、左手(Bass)の和音の連打で体力消耗してしまったり、と、先生でもいたら「そんなムチャな弾き方してどうするの」と怒られそうな演奏になっていた。
が、自分に振り回されながらも、今回は演奏中も楽しんでいる自分もいた。たぶん、選曲が良かったのだ。
観光地、お客さんが集まる演奏会、そう聞いていたので、誰でも知ってる曲をやりたかった。それで選んだのが、どこの学校でも卒業式などで流れる曲で有名で、某アニメのエンディングテーマにも使われていた曲だった。
おかげで、最後は華やかに突っ走ったまま終われた。
ここまで気持ちよく拍手を受けられたのは、初めてだったかもしれない。