第五話 飛翔のとき
戦闘シーンはありません!今回は会話パートが多くなっています。戦いがあるのはもうちょっと先かなー?
あと、わざとらしく言わせてください。あの子って誰でしょうね!
ってカンが言い方は分かっていますよね。もうすぐ出てくるので一体誰かはその時のお楽しみで。では本文をお楽しみください!
夜の襲撃からしばらくして幼馴染であるティアと再会を果たしお互い向かい合って椅子に座っていた。
「久しぶりティア」
「うん、久しぶりライ」
二人とも音沙汰なく数年ぶりの再会だ。嬉しくない訳がなかった。
「それにしても、ティアは相変わらずだ」
「相変わらずってどこが?結構変わったと思うけど」
そういって、ティアは自身の体つきを確認するように見る。確かに、ティアは数年前よりは出るところは出て、腰も引き締まり抜群なプロポーションを持っているようだ。
でも、ライはそのことに首を振り。
「体のことを言ったわけじゃないんだけどね。言ったのは性格のほう」
「性格のこと?んー確かに変わっていないかもねーでもそれはライも一緒でしょ」
「自分では分からないけど、多分違うよ。ティアもクレイの付き添いできたんなら評判は聞いているだろ?」
「うん」
「なら孤児院にいたときよりも印象は変わっているはずだ」
「かもね、でも根本的なところは変わってないよ。私が至らないところをさっきも助けてくれたしね」
とここで花が咲いたような笑みでライに向けてきた。
ライはそれをずるいと思う。可愛い女の子にこんな笑顔をされてしまったら何もいえなくなってしまうんだから。
思わず視線を逸らすとティアから追撃がくる。
「もう、ライって本当に変わってないね。私や『あの子』が笑うと絶対に視線を逸らしちゃうんだから。もし私が暗殺者だったらどうするの?」
「説得して暗殺者を辞めさせる」
突拍子もない返答に今度はティアが目を大きく広げ、次の瞬間先ほどよりも嬉しそうに微笑む。頬も少しだけ赤くなってはいたがライに対しては顔を隠そうとはしていなかった。
「いきなり言うなんて反則だよ」
「何のことか分からない」
「これで天然だったら将来絶対に女たらしだね」
ニコニコとしながらこちらを見てくるティアに対してわざとらしく咳をして話題を変えることにした。
「で、そろそろ本題に移らせてもらうけどここに来た用件は?ティアがあの猫だったんだろ?」
「うんそうだよ。昨日夜に一目見てまさかと驚いたけどね」
「それでわざわざ猫の姿でここに来たのは護衛とクレイ以外の誰かに伝言を頼まれたから?」
「正解!でもどうしてそう思ったの?」
「だって、護衛目的ならティアが人間の姿で来ればいい。でもそうしなかったのは誰か怪しまれないようにかなと」
「あれ?けど怪しまれないようにっていうけど相手を油断させるために猫の姿で来たのかもよ?」
「だったら、さっき襲ってきた二人が猫を見た瞬間に後ずさりなんかしないよ。猫がティアだと分かったから警戒したんだと思う。なら相手が知っているのに猫の姿をとる意味はない」
相変わらず楽しそうにライの話を聞きながらこちらの考えを聞いて何度か頷いていた。
「さっすがライ。こっちの考えていることなんて筒抜けだね!ライの言うとおり今回は私情もあってきたんだ」
「私情ね。ただ、誰からか聞くことはできる?」
「うん、伝言というかあったら伝えてといわれていたんだけど例の『あの子』だよ」
「あの子と会ったことあるのか!」
昔孤児院でティアともう一人仲がよかった金髪のあの子、孤児院がなくなる数ヶ月前にどこかにいってしまいティア同様今日まで行方が分からなかった。だからこそあの子がいなくなる前に三人で交わした約束が脳裏をよぎる。
「もし自分たち三人の誰かに危険が迫ったり助けが必要になれば他の二人が必ず助けに向かう」
ティアも同じことを考えていたのか昔三人で約束した内容の一文を呟いていた。
「ライも覚えてるよね?孤児院にいたときに私たちが交わした約束」
「もちろん」
ライは即答で答える。
「だよね、そのために私は武術をライは今日確信したけど知識を蓄えてきたことが分かったよ。それでねライ」
「ああ」
「『あの子』からの伝言を伝えるね《私に力を貸してほしい》だって」
「ああ、分かった」
即答で答えるライにティアはちょっとだけ安心したような空気をかもし出す。
「よかった」
「ん?よかったってもしかして俺が断るかと思ってたのか?」
「思っていなかったけど即答してくれて安心したって言うのかな」
「余計な心配してたんだなティアは」
「まあね。でも・・・少し妬けちゃうな」
ティアはすこしで顔を下に向けながら言った。
「妬けるってなにがだ?」
「だって、あの子のお願いで即答しちゃうなんて・・・もしもだけどさ、私がライに同じように力をかしてと言ったら即答してくれる?」
「もちろんだ。だけどそれがどうした?」
ティアは即答でしてくれると聞いて顔がにやけるのを止めることができなかった。
「うわーなんだかしまらない顔になってるぞ。他の人に見られたらどうするんだよ」
「だいじょーぶ、ライにしか見せないから」
この一言にドキッとさせられなんだか照れくさくてライも視線をはずす。
そんな第三者からみたら暖かい光景でにやけていたティアが一つお願いがあるといってきた。
「お願いってなんだよ?まさか本当になにか困ったことがあるのか?」
「ううん、そうじゃないんだけどちょっとしたお願いというか、昔みたいに頭なでてくれない?」
「ああ、そんなことか」
そういって躊躇なくティアの頭を右手で(もちろんガントレットははずしている)撫でていくとティアはこの上なく幸せそうに目を細めて笑みを浮かべていた。
(やっぱりあの猫はティアなんだなー)
襲撃される前に猫をなでていたときと同じような表情にそのような感想をライは浮かべている。
しばらくして、なで終わったあとにティアはこれからクレイのところに報告に行くということだった。捕まえた刺客のうち外から攻撃してきたのとティアが首に差した二人は殺してしまったが、もう一人お腹を刺された刺客は生きているようだ。何か情報があったら翌日からの予定もあわせて教えてくれるらしい。
「じゃあ、また明日。私たちは明日の正午にこの村を発つつもりだったんだけど・・・ライは大丈夫?」
ライに一緒に来るかを問いかけなかったのは確実に来ると確信していたからだ。問題は村の人たちに別れや荷造り等は大丈夫なのかと聞いたのだ。
「大丈夫、特にこの村に未練はないし荷造りもこのガントレットと身の回りの物を詰める物だけだから」
「そ、ライがいいならいいけどね。ならお休みまた明日ね」
「お休み」
そう二人は挨拶を交わしてその日は夜が明けていった。
次の日
ライはいつもより早く起きて昨日の夜のうちに必要な物を風呂敷にまとめて、それを持つと最後にガントレットをもって家を出た。
自分の家の外に出るとまだ朝早いのか人はほとんどいない。主婦の人たちらしい人がライが外に出てくると視線を集めていた。
そんなことを気にせずに一度ライは後ろを向いて家をみた。
この家には孤児院がなくなって色々なところを転々としていて初めて持った家なのだ。村での生活が満足だったといえば嘘となる。わざと目立たないようにお調子者としていたから自業自得かもしれない。でも、一人で過ごすより村という集合体に所属していることがどれだけ安心があっただろうか。
そんなことをしみじみと思っていたライだったが、ずっとここにいればもっと人が多くなってくる。なので、早々に扉の前から離れ村長の家へと行く。
村長の家に行くとこちらがこうなることがわかっていたのかすでに起きていてライが来ても驚くことはなかった。
「来たようじゃな」
「はい、この村を王国の人たちと一緒にでていきます」
「さっき赤い髪の女兵士が伝えてきたわい」
「そうですか」
それから二人の間には無言の空気が流れる。そして最初に言葉にしたのはライだった。
「今まで色々とお世話になりました」
本当にお世話になった。いい態度をとられてはいなかったとしても、よそ者である自分に住む場所と仕事をくれたのだからこの礼は本心だった。
「……ふむ」
こちらが頭を下げたことに以外だったのか村長は一度だけ頷くと
「少し待っておれ」
村長は机を立つと家の奥にいってしまった。一体何をと考えているうちに村長は何かの箱をもっていて、それを机の上に置く。
「これをもっていくがいい」
ずっと埃をかぶっていたのだろう。ところどころ汚れたり痛んでいたりした。
「一体これは?」
「わしは詳しく知らないがおぬしが持つガントレットに関するものだそうじゃ」
「ガントレット?」
「そうじゃ、お主はおかしいと思わなかったか?なぜ、よそ者のお主を無条件で職と寝るところを提供したのか」
村長の言うとおり善意にしてはおかしいとは感じていた。でも答えを見つけることができないと考えていて自然と忘れていた理由。
「おかしいと考えたことがありましたが」
「そうか、なら今理由を言おう。お主の父親であるガレック・ジュリアールとはちょっとした仲でな。ガレックから昔言われたことがあったのじゃ」
《もし俺に何かがあったら息子であるライがここに来るかもしれない。だからその時はどうか面倒を見てくれないか。あと、これを渡してやってくれ》
「そう言われて数年間まったく忘れていたが、突如やってきたお主を見て面影がありもしやと思ったのじゃ。だからあいつの頼みを聞いただけじゃ」
「親父がそんなことを……」
「……これはもう言い訳になるかもしれないが本当はお主には村の人々と仲良くしてほしかった。ワシも何とか努力しようとしたがある時お主がなにやらわざとお調子者を演じていることに気がついてな。それにあわせていたのもある」
ライは村で過ごした数年間を思い返してみる。そういえば、いじめといっても仕事量を多くされたり、いやみは入れたが肉体的いじめや、家に対する嫌がらせはなかった。おそらく村長が抑えてくれていたのかもしれない。
「まあ、ガレックの息子なんじゃ。普通の子ではないと感じてはいた。昨日は思い切りわからされたのじゃからな。将軍に知能戦で勝ったんじゃから」
そこで村長は初めてニカッと笑いかけてくれた。ライが村長に笑顔を見せてくれたなんてここ数年で一度もなく、ずっと気にかけてくれていたことが身にしみて伝わってきた。
「さあ、そろそろ他の者も起きてくるじゃろう。早く行くのじゃ」
「はい、ありがとうございます」
ライは再び深く頭を下げて感謝の意を伝える。
村長は再び頷いていると何かを思い出したように
「そうじゃ、そういえばそれを渡されたときに伝えておくように言われていたんじゃった」
「なんでしょう?」
「その箱の中に入っているものは本当に必要なときに開けるようにと。息子に渡す武器か防具の役に立つだろう。誰かを守るため、自分の身を守るために使ってほしいといっておった」
この箱を開けてみたい欲求にかられたが父がくれた物なのだ。このガントレットも父からもらった物で昨日もティアを守ってくれた。本当に誰かを守るときに使うべき物なんだと考え、ライは静かに頷いた。
頷いたライを見て村長は
「うむ、ではまたいつか会おう。もし王国で何かあったら帰ってくるがいい。部屋は空けておくからの」
そういってまた軽く会釈するとライは外に出た。
すると外には王国の兵士である数人と将軍のクレイ、そしてティアが待っていた。
「話は終わった?」
「ああ、終わったよ」
「そう、なら私たちは予定を繰り上げて王都に変えることになったの。ライはもう大丈夫?」
「いつでもいける」
「分かったわ。あ、それとこれ」
そういってライはティアから刺客に包まれた袋を渡された。
「これは?」
「なんかさっきここで待っていたら、ピンク髪をした子がライにこれをって女。途中でおなかがすいたら食べてほしいといってたわよ。なに?ライったら以外にもてたの?」
村長が言っていたことが本当だったんだなと感じて包みを受け取るとその女の人に感謝を心の中で言い、ライは顔を上げた。
歩を進めるとティアが道を譲りライはクレイの目の前まで歩いていく。
「準備はいいんだね?」
「はい先ほど聞いていた通りです」
「わかった、ではみな出発するぞ!」
「「「ハッ!」」」
クレイが号令をかけるとティアも含め周りの兵士たちは掛け声を上げた。
ライは軍人ではなく一般人ということで最初はどうするかということだったが、幸い孤児院では馬に乗る機会があったので馬を貸してもらい王都に向かうことになった。
村を出るとき最後にもう一度振り返ると、数人がこちらに向けて視線を向けて手を振っていた。その中にはおそらくお弁当を渡してくれたんだろう少女もいた。
それに対してライも手を振ると視線を前にして馬を進める。
ライは村に別れを告げて王とに向けて馬を進めるのだった。
お気に入りのほうもよろしくお願いします。
おそらくですが今日中にもう一つあげるかもしれません!今から書くのですががんばります!