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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
VS 魔族編
96/160

95話 青の館では…

「魔族が攻めてくるというのはほんとですかなっ!?」

「塔の御仁は何をしておられたのかっ」

「この時の為に塔があったのではなかったのか!?」

「こうなったのは塔のせいではないかっ!」


 なれば…と男達はいつもならしない一致団結を披露する。


「「あなた方は協力すべきだ」」


 よくもまぁここまで高圧的な態度で言えるものだとヘイムダールは呆れかえった。


 ノルディークとアルディスがシャナを連れていなくなった翌日、一度追い返したはずの各国の大使、もしくは王、その血に近いものが再び押し寄せた。

 

 ついでにこのパルティアからはシェールの父であるフリードリヒがやってきて、シェールを見つけるなり怒鳴りつけた。


「なぜおまえが彼等と共にここにいるっ!?」


 フリードリヒは元王太子、塔の存在も知っているため、説明も短く済む。

 シェールはあまり深いところまでは話さず、塔に関係する者になったと報告すると、ひどく難しい顔をしたフリードリヒに諭されて彼は一度家に戻ることになった。

 

 そんなわけで、予定としては情報源として砂漠に詳しいハーンを残し、シェールをシャナの元に護衛として送るつもりだったが、シェールがいなくなったために、仕方なくハーンをシャナの元に送って、ノルディークとアルディスを呼び寄せたのだった。




「シェールが来ると思っていたんだがな」


 アルディスはそう告げてため息を吐き、ノルディークは10才前後の子ども姿で現れ、にこりと微笑んだ。


「保険はかけたので大丈夫とは思いますが。朝の挨拶も邪魔されたことですし、手早く済ませて戻りたいですね」


 にこりと微笑んでいるが、かなり不機嫌なオーラが感じられ、ディアスもアルディスもヘイムダールも口を閉ざした。


「シャナは大丈夫なのかしら?」


 ノルディークの不機嫌にさらされ、冷や汗をかくその場へ、時に緩衝材となり、時に恐怖をまき散らす老夫人リアナシアが現れ、男3人はほっと息を吐き出す。


「何も問題はありませんよ。ご安心を」


 彼女が現れるとノルディークの不機嫌さは消え去り、視線をかわす二人の表情は塔の主のそれに代わる。

 そうなれば他の3人も自分の感情は消し去り、塔の主としての判断を下すことになる。


 塔の主達の顔つきが変わったのを見届けて、一人の男が宣言した。


「では、世界会議といこうか」


 開始を告げたのはパルティアと同列の国力を持つノーグの国王だ。その隣には先日会った赤毛に紺色の瞳の美女…と見間違うような男性ダレンが控える。

 

 ここにハーンがいたら、ノーグの国王に他人が聞けばぎょっとするような皮肉を言って場を混乱させていただろう。

 いなくてよかったのかもしれない。

 

 全員が席に着くと、リアナシアの傍にはアルバートが控える。

 自分の屋敷に各国の代表とも言える者達が集まり、本心では屋敷にいる娘や妻のイネスを守りたいが、彼は塔の主の守護者だ。それを放棄することはできない。

 ゆえに、現在妻や娘を守っているのは息子のエルネストだ。


 そちらは頼むぞ…と父は心の中で息子にエールを送った。


___________



 恨みます父様。


 階下ではまさに世界会議とも取れるような錚々(そうそう)たるメンバーでの話し合いが始まった頃、二階では暗殺者…の方がまだましと言えるような、女の戦いが勃発していた。


「まぁ、アデラ様はこちらの方が好みなのですか? 少し露出が多いような…」


 ばさりとドレスが宙を舞う。

 

 男達が難しい話をしている間は女達で楽しみましょうか、と提案したメイドが持ち込んだものは、こんなにあったのか!? と悲鳴をあげたくなるような創作ドレスの数々。

 その中には男サイズのものもあり、部屋で待機する執事たちがわずかに顔を青ざめさせている。

 中には


「俺は壁、壁だ。気づかれてはいけない。空気のように振る舞え」


とぶつぶつつぶやく者もいる。

 

 あれらを着ろと言われるかもしれないので存在を消そうと必死なのだろう。その気持ちはエルネストにもよくわかる。

 何しろ先程から母の視線が頬に刺さるのだから。


 メイド達は日々ドレス制作に力を入れているが、数が多くて屋敷の女性陣だけでは着尽くせない為、この時がチャンスとばかりに引っ張り出してきたようだ。

 まぁ、おかげで女性陣の気晴らしにはなっているが。


「そう言うレオノーラは選ぶものが大人しすぎてよ。それからカティア、あなたは…男装したいのかしら?」


 部屋にいるのは娘達の様子を微笑みながら見守る母と、メイドや執事、それからエルネストに、会議に出席する兄についてきた赤いクルクル巻き毛のアデラと、おかっぱ頭のカティア、それから先程やってきて強引に参加させられたシャナの友人のウェービーヘアのシャンティ、筋肉質なアルフレッド、そばかすオリンだ。


 当然男達は何とも言えない顔で女性達の様子を見守るしかないのだが。


「先生に魔力酔いを覚ます特訓をしてもらいに来たのになー」


 何とも間の悪い時に友人達は来たようである。


 ああでもないこうでもないと騒ぐ女性陣の中、ぱちんっと母イネスが手を叩く。


「それならそれぞれが選んだものを別の人が着るということでどうかしら」

 

 思わず男達がびくっと震える。


「あら、心配しなくても大丈夫よ。男性陣にドレスはまだ(・・)早いわ」


 ほっと息を吐く男達。だが、よく聞かなかったのか!? 母はまだ(・・)と言ったのだぞ!?


「それは面白そうですわっ」


 アデラが同意し、シャナ考案のあみだくじでそれぞれ組み合わせを作る。

 

「じゃあ女性陣はあちらで着替えてね。男性は…メイドさん、よろしくね」


 にこりと微笑む母に従い、メイドが「はいっ」と元気に返事する。

 何をさせられる!? とびくついていると、メイド達がそれぞれきぐるみを持って現れた。


 ドレスはまだ早いらしいが、こちらならいいらしい。

 

 ちなみに…拒否権はなかった。






「まあああっ、なんてかわいいのっ!」


 部屋には兎に羊に怪獣にライオンに、シャナが普段着るようなさまざまな着ぐるみ(顔は出ている)を着た男達と、他の者が選んだドレスに身を包む少女達が姿を現し、何とも言えない空間ができた。


「ノーラ様っ…セクシィーですっ。ぐはっ!」


 レオノーラはアデラの選んだ胸元の大きく開いた黒いドレス姿だ。ちなみにそのドレスのスカート丈は短く、スリットまで入っているため、スカートを必死に伸ばそうとする姿にメイド達が鼻血を拭いた。


「何か足りないわ…そうね。これを付けて御覧なさいな。髪色は違うけれど似合うはずよ」


 アデラは清楚なドレスに身を包んでいるせいか、少し高飛車な感じが抑えられているように見える。

 そんな彼女は驚くことに耳の辺りでクルクル巻いていた髪を取り外した!


((あれ、はずれるのか!!?))


 誰もがぎょっとしたが、どうやら髪型のイヤリングだったらしい…何とも紛らわしい。


「私には…似合わない」


 次に現れたのは水色チェックのエプロンドレスのカティアと、びしりと決めたパンツ姿の男装の麗人シャンティだ。


「パンツ姿っていいわね。動きやすいわ」


 シャンティは楽しそうに飛び跳ね、カティアはもじもじと俯く。シャンティはともかく、カティアの姿には男達が思わずぐっと拳を握った。


と、ふとシャンティが動きを止める。


「どうした?」


 友人のアルフレッドが尋ねると、シャンティは窓の外を見つめて呟く。


「精霊が言うには、ここから離れたところで、例の必殺技を使った気配がしたって」


「シャナ?」


 そばかすのオリンが尋ねると、シャンティは「たぶん」と頷く。

 どうやら何かあったらしい。


 緊張を走らせると、ちょうどそこへ誰かがかけてくる気配がし、全員が身構えた。


 ばん!


 ノックもなく扉が開き、現れたのは第二王子ルインだ。

 彼は息せき切って現れ、そしてあんぐりと口を開けた。


「…何のお祭りですか?」


 彼は、部屋に入るなり伝えることが全て頭の中からかき消され、真っ白になった頭でそう尋ねた。


 その後、なんとか用件を思い出したルインにより、町で一人魔族による魔力干渉の気配がある者を捕えたと報告がされた。

 その報告は、同じ頃階下でシェールによってなされ、屋敷の中があわただしくなった…。


が、あちこちを走る着ぐるみ隊に皆の緊張が一瞬崩されたのは言うまでもない…。

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