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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
ハーレム編
88/160

87話 裏では続いてました

「魔族が絡んでるってことなら、塔の人間に手を出して殺す必要はないな?」


 突然ハーンが凄むようにダレンに尋ね、ダレンは言葉に詰まった。

 ものすごい美女が苦々しげな表情でダレンを睨むその絵面がまた…おいしいですね。

 

「あなたの為を思ってしゅたことよ…」


「しょんなことを頼んだ覚えはない」


 目線で繰り広げられる大人の会話っ。

 アテレコでお送りしました。


「幼児言葉のせいで微妙だね」

 

 くっ・・・ノルディークにダメ出しされた。


「それにしても~、大人で思い出しましたが、なかなか戻りましぇんねぇ私。ナーシャおばあしゃまはもう戻っているのに」


 チラリとおばあ様を見やると、にこりと微笑まれる。

 なんとなくその笑みに『何も言っては駄目よ』というオーラを感じて私は目を逸らした。


 分かってますよ。これでも中身は大人の女ですからね、そういう空気は読めますよ。

 リアナシアおばあ様が早く元の姿に戻ったのは、それだけ多くの年数を戻したからだ…とは口が裂けても言いませんよ。


 ちなみに塔の男性陣は皆それに気が付いているのか、私がちらりと見やれば、あいまいな笑顔を浮かべた後、目を逸らすのだった。


 それはともかく、当のアテレコを入れられたダレンはハーンを強く睨み、しばらく沈黙した後、ため息を一つ吐いた。


「わかりました。どうせ暗殺の出所はばれてるのでいまさら隠したりしません。とりあえずは(・・・・・・)手を出さずにおきましょう。ただし、あなた方が魔族を掃討するまでの間です」


 これは・・・暗殺目論んでましたよ、でも他の問題を任せるので保留にしときます。それが片付いたらもう一回暗殺しますよ・・・という意味でよろしいのかな?


「よろしいと思いますよ」


「うぉうっ、私声に出してましゅた?」


 ノルディークに突っ込まれたので顔を上げると、私を膝に抱いていたノルディークはにっこりほほ笑むと、私の眉間を指先でぐりぐりと押した。


「顔に出てたよ」


 まさかの読唇術ならぬ読顔術!

 新たな世界が開けそうです。


「じゃあ一時休戦でしゅね」


「そうだね」


「では、さっそく魔族に対する対策を詰めようか」


 にっこり微笑みあう私達をグイッと押しやり、ディアスが椅子に座る。

 私はノルディークに抱かれたまま場所を譲る。

 ディアスはここにきて塔の代表として魔族に対抗する術をダレン達に教え、国が動くように仕向けるらしい。

 

 これは国にかかわるのでは? と思ったのだが、私達が直接国に魔族がいるからこれこれこうしてくださいというのは無理だが、こういう対策がありますよというアドバイスならいいのだそうだ。

 いっそその辺はこちらの指示に従え~っと言えば楽なのに、それだと各国の王の権威が失墜する可能性があるのだと言う。

 難しいものね。




「じゃあ、こちらも一時休戦にもっていかなくてはなりましぇんねぇ…」


 背後を見やれば、泣きながら手当たり次第物を投げる母様と、それを避ける父様の戦いがいまだ繰り広げられていた。


 あのシリアスな空気の中、後ろでは


「あの時のあの女の人はどうなのっ? とても美人だったわ!」


「あれは随分前に結婚したキーナだろうっ」


「…でもいい雰囲気だったのだものっっ」


という戦いがずっと繰り広げられていたのだ。

 母様、結構ストレス溜まってたのね…。


 なんだかんだ言いつつ父様は格好いいのだ。ゆえに母様のいないところではかなりモテる。

 私も何度かちらっと女性に迫られる父様を見たことがあるが、きっと母様も見たことがあるのだろう。普段は気にしていなくても、きっと心の奥底で不安が渦巻き、今こうして表に出てきたのかもしれない。


「男の人にもモテるし…美人もたくさん侍らせて…きっと塔ではハーレムを作ってたんだわ~!」


 あ…母様の想像が飛躍した。


「あらあら」


 リアナシアおばあ様も目を丸くし、父様に至ってはとんだ濡れ衣で、どう説明すべきかと考えあぐねて口だけがぱくぱくと動く。


 すると、それを見た母様はクッションを両手に持ち


 バリっ…


「ばり?」


 クッションが破れた音ではない。

 では何か…


 母様を見れば、その両手に持ったクッションに明らかに青白い電撃のようなものが迸り、だんだん大きくなっていくではないか!


「は?」


「え?」


「まさか…?」


 父様、リアナシアおばあ様、ヘイムダールがぎょっと目を剥く。


「これはでしゅね~。わたくし経験者だからよぉくわかりましゅよ~。じゅばり! 魔力の暴走でしゅ」


 ノルディークの腕の上に座る私はむんっと胸を張った。

 しかし…


「あり? それってまずいのでは…?」


 チラリとノルディークを見上げれば、コクリと肯かれた。


「まずいね」


「暢気にしてる場合で・・」



 暢気にしてる場合ですかと叫ぼうとした私の顔の横を電撃クッションが横切り、それは部屋のドアにぶつか…


 バン!


「兄様! 生首が飛んで」



「「「あ…」」」



 ものすごいタイミングで開けられたドア、飛んでいくクッション。

 まるでスローモーションのようにクッションは開けられたドアの向こうに現れた赤毛美人なアデラの顔面にぶつかり…



 バリバリバリバリ~!



 雷が迸った…!!


 見事な赤気がパンチパーマに変わり、彼女がばったりと倒れると、その後ろから現れたおかっぱ美女のカティアが、無表情で報告した。


「宿中に生首が出現しておりますが兄様、塔の主達の仕業でしょうか、それとも魔物でしょうか」


 ・・・・・・・・・


 ・・・・


 アデラのこと心配してあげようよ…と全員の思いが一致した瞬間だった。 

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