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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
ハーレム編
86/160

85話 実は根に持ってます

「おぉ…」


「これはまた…」


「すごいな…」


 拘束の魔法を解くと即髪飾りをむしり取り、ドレスを破り捨てようとするダレンをいまだ拘束魔法で押さえつけたまま、メイドと私達によるダレンのドレスアップは終了した。

 

「完璧ですわっ」


 メイクアップを担当したメイドは額の汗をかきながら息を吐き、目をキラキラと輝かせている。

 だが、その達成感も頷ける。


 ダレンの美しい赤い髪を綺麗に梳いて艶を出し、ポニーテールのように結い上げた後、毛先のクルクルをさらにクルクルに巻き、ドレスと同じオレンジのチェックのリボンをつける。

 ドレスは黄色がベースでオレンジチェックの生地が重ねられたもので、かなり凝っている。どこかのアイドルのドレス版のような仕上がりだ。

 

 このドレス、元々は金髪碧眼の美青年であるエルネスト兄様用のドレスだったらしく、ひょっとして髪色と合わないかもと初めは危惧したものの、着せてみるとそうでもなくて皆胸を撫で下ろした。


 後は元々綺麗な顔を整え、現代メイクアップ術もいろいろ取り入れ、さらにはネイルも綺麗にしてやりました。

 そうしてできたのは…


「お姫しゃまでしゅ!」


 しかもゴージャスになるかと思えば、意外と可愛い系になったお姫様だ。

 目をキラキラさせてじっと見つめてると、母様が私をじっと見つめて呟いた。


「そういえば…シャナがこんな風に子供らしいことで喜ぶことってなかったわね…」


 子供らしいって…。

 まぁ、確かに子供時代はいろいろと子供らしくはしゃいだ記憶はないけれど…。

 現在の見た目のせいか、お姫様で喜んだら随分と周りにほんわかされてしまい、こちらが照れた。

 

「げっふん! とりあえず、ナーシャおばあ様がダレンを拘束しているうちに牢番呼びましゅよ! 出たら色仕掛けお願いしましゅ!」


 顔が赤くなったのを誤魔化しつつ告げる。


「誰が色仕掛けなどするか!」


 ダレンはこれだけやって疲労困憊なはずなのだが、そこは腐っても王子、人に着飾られるのは慣れているのか、まだまだ抵抗しそうである。


「私が色仕掛けしましょうか?」


 そう提案したのはいまだ魔力酔いの只中にある姉様だ。

 言葉遣いは少しずつ元に戻って来つつあるが、思考が変わらず微妙だ。いつもの姉様なら自ら進んで色仕掛けをしようかなどと聞かない。


「ねーしゃまは」


「ノーラは駄目だ」


 すかさずディアスの腕の中に浚われ、私の額にびしりと青筋が浮かぶ。

 奴め・・・姉様がイケイケ押せ押せなのをいいことにべたべたと好き放題に触りおって・・・。

 スリッパを片方脱ぐと、私は姉様を腕の中にしまいこみ、ちゅっと頬にキスをしてキャッキャッうふふとやっているディアスの顔面に投げつけてやった。


 べしっ!


 奴は色ボケ中なので、当然顔面に直撃し、顔を押さえる羽目に。

 惜しむらくはこのスリッパがゴキ殺しでないことか…。

 

「大変です。顔が壊れてないかしらっ。せっかく私好みの(・・・・)綺麗なお顔なのにっ」


 姉様の心配は顔か…。

 心の声駄々漏れな姉様の言葉にディアスは少なからずショックを受けた様だ。

 

「好みは顔…。性格とか…そういうのは…?」


 何やら贅沢なことを言っている。


「とりあえずケルちゃん、ベロちゃん、スーちゃん! 牢番を呼び出してくだしゃい!」


 あの二人がいちゃつきだす前に!

 

 ケルベロスはちらっと拘束されて動けない美女、不機嫌なカエン、にこやかにほほ笑むノルディークに苦笑いするヘイムダール、落ち込んで姉様につんつんと頬を突かれるディアスに、呆然と立ち尽くす父様と兄様、それにシェールにアルディスを見た後、メイド達が部屋を出たのを確認し、とんっと床に右前足を置いた。


『繊細な奴が見たら逃げ出しそうな光景であるが…』


『大丈夫よ。ここには拘束するのが上手な人がたくさんいるのだし。私も拘束されたいわ~』


『首輪は…いやだ』


 ケルちゃん、スーちゃん、珍しくベロちゃんが呟いた後、ケルベロスの置いた右前脚より前方の床が闇の沼と化した。




「あらあら、これはすごいわねぇ」


 ナーシャおばあ様が興味津々に池を覗き込むと、池からぶわっと白い生首が!


「ひょおぉぉぉぉ~!」


 私は慌てて沼から離れて距離をとり、廊下へと続く扉の近くにいたハーンによじ上る。


「変なところを掴むな…」


 よじ上る際、ぐにっと掴んでしまいましたよ。

 行きがけの駄賃とかいうやつですかね。


「とっても立派でしゅね…ぐふふっ」


「まぁな」


 何を掴んだとは言いませんが、ハーンはにやりと笑みを浮かべて私を持ち上げ、腕に乗せて抱っこした。

 その間にも生首はいくつも飛び出てくるが、とりあえず襲ってくる様子はない…。


 怖々と池を見つめていると、池の中央から水紋が広がり、池に魔法陣…とは少し違う何やら紋章のような赤黒い光が浮かび上がる。

 何事かと思いさらにじぃぃっと目を凝らせば、行かなくてもいいのにハーンが池に近づいた。


 ふよふよと浮かぶ首を見ないようにハーンにしがみ付き、その肩の辺りに顔を埋め、ちらっちらっと時折前方を確認すれば、なんと、池の中央に鎧を着た人間の首と肩が浮かび上がり・・・・


 これはいかんのです!


「とぉう!」


 我慢できずにハーンの腕から跳ぶと、浮かんできたモノの肩に飛び乗り、体重でそれの出現を押し返してみた。


 ついでに、これでどうよとばかりに胸を張ってみる。


「シャナ…それ…あまり効力はないと思う…」


 呆れるヘイムダールの言うとおり、残念ながら足元の鎧は私を肩に立たせたままゆっくりと出てくる。


「…だって皆しゃま、これ…首無いんでしゅよ!?」


 空には生首、足元には鎧を着た首無し騎士、明らかにホラーハウスではないか!


「生き物じゃないでしゅよ! お化け屋敷の住人でしゅよっ」


 とりあえず出てくるなとばかりにゲシゲシ踏みつけていると、池から腕が持ちあがり、そのまま私の足を掴んで、首無し騎士は一気に池から飛び出てきた。




「何の用だ牢破りとその仲間達よ…」



 ぷらーんと逆さに吊るされた私は、どうやら首無し騎士に捕えられて吊るされているらしい。

 

「シャナ、お尻丸見えだね」


 背後から暢気(のんき)なノルディークの声が聞こえる。


「そう思うなら助けるでしゅよ。レディーの危機でしゅっ」


 いつ大人になっても良い様に伸縮性のあるかぼちゃパンツをはいてますがね、本日の服は大きめなのですよっ。このままではすっぽんぽんの危機!


「聞いておるのか? 牢破りの子供よ」


 ぐいっとさらに高さをあげられ、私の目の前には首無し騎士の小脇に抱えられた人間の頭が…


 頭… 頭…?


「ちょわっ!」


 思わずその頭の額部分に頭突きをかますと、騎士の頭らしきものが彼の後方へと転がり、同時に私は解放されてぼちゃっと池に落ちた。


 おぉっ…溺れる


 頭から落ちたので方向感覚がわからずにいると、スカートの裾を掴まれ、そのままひっぱりあげられた。

 ちなみに引っ張り上げたのは…


「ベロちゃんっ! なんていい子でしゅかっ!」


 会話はほとんどないベロちゃんだった。

 ナデナデし、そのまま子犬をお膝に乗せて抱っこする。すると、ケルベロスごとアルディスに持ち上げられ、私はアルディスに肩車してもらい、頭に上半身をドスッと乗せ、さらに私の頭にケルベロスが乗った。


「重…」


 トーテムポールを築きながら、私達は転がった頭と、それを拾う鎧を見やる。

 

「これはあれでしゅね…。ファンタジーでは有名な…えぇと、ジュレひゃん!」


「…それは美味しそうで弱そうだな…」


 シェールが突っ込む。


 ジュレ・ハンと言ったのだが、子供の舌ではハン(・・)が発音しにくかったのよ!


「それを言うならブラ・ハムだろ?」


 次に告げたハーンの答えに、私はブラジャーとハムを連想する。


「繋がりがないでしゅね」


「ブラ・パンならどうですか?」


「おぉっ、ナイスでしゅよノルしゃん! それならブラジャーとぱんちゅでしゅっ。で、ブラ・パンしゃん、聞きたいことがでしゅね」


 名前がわかったところで…と首を拾った鎧を見やれば、小脇に抱えられた首はわなわなと震え、次の瞬間、くわっと口を開いた。


「我はデュラハンである!」


「そうね、名前は何でもいいわ」


 間髪入れずに一刀両断したのは母様だ。

 デュラハンがうちひしがれる中、母様はにっこりとほほ笑むと、うちひしがれる首の額部分をベッチンベッチン叩いて凄んだ。


「で、誰が年増ですって?」


 


「は?」


 



 どうやら、母様はいまだケルちゃんの呟いた言葉を根に持っていたらしい。

 どこかのレディースのごとく凄んだ後、いつものようににこりと精霊のような微笑みを浮かべてデュラハンをほっとさせ…そして…


「歳で判断するなんてお馬鹿さんね。反省しましょうか?」


「いや、待て…何のこと…」


 思ってたより顔は綺麗だった牢番デュラハンの頭は、母様により、物の数秒で…




 ラッピングされました。





「どこに送ろうかしら~」


 いや…母様、そんな生きた生首送って喜ぶ人いないと思うから…。

 そして、いまだリアナシアおばあ様に拘束されて着飾られたダレンの存在意義は…?




「女は怖いな」


 ハーンの呟きに、男達は皆うんと強く頷くのだった…。


 


 

管理人1「例の客からこんな贈り物が!!」


従業員1「大きいっすねー。しかもラッピングされて…。おわびっすか?」


大きな包みを開けた二人は、ヒッと息を飲む。

そこに現れたのは…


首のない騎士だった・・・・


宿屋の管理人室から男達の悲鳴が響いた…。


客1「やはりここおかしい!」


客2「呪われてるぞ!」


老舗のお宿は恐怖の館と化していく…

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