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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
ハーレム編
85/160

84話 皆で

「さぁ、サクサク行きましょうね~」


 くふくふ笑いながら母様がにっこりほほ笑む。

 その一方で、レオノーラ姉様がディアスに襲いかかり、今にも()かんとしている。

 

 あまりの事態にさすがの私もぽかんとしてしまい、忘れかけたけれど、私達は現在アルディスの無実の証明をするはずだったのだ。

 

 母様にキロリと睨まれ、私と私を抱っこする父様がびくっと背筋を正した。


「シャナは鼻血を拭いて」


 おぉ、結構大量出血してました…。

 気が付けば手にはべっとり、服にもわずかに飛び散り、「なんじゃこりゃああ」の世界だ。


 とりあえず父様にわしわしと血を拭かれ、ある程度綺麗になると、私はようやく父様から解放されてケルベロスを抱っこした。


 子犬と言えどちと子供には大きいですね…


 ケルベロスの脇を持ち、うんしょと持ち上げ、そのまま胸に腕を回す。ケルちゃん達の足はぷらんぷらんのままだが、子ども姿ではこれが限界だ。

 

『我は自分で歩けるが…』


「気分でしゅ」


 もふりたい気分なのです。

 ケルベロスのそれぞれの後頭部に額をぐりぐりしながら、よいさほいさと物が置いていない場所まで歩く。

 きっとここにもあのケルちゃんの沼が現れるはずなので、家具が呑み込まれないように避けなくてはならないのだ。

 なんて、人が色々と珍しく気を使っているというのに…


「ディアス兄様…」


 姉様は色っぽい声でディアスに迫り、ディアスは後ろに尻餅をつく形で姉様ごと倒れる。


「ノーラ、少し落ち着けっ」


 いや…お前が落ち着けよ…と思わず荒い言葉の突込みと、スリッパ攻撃をお見舞いしたくなる。

 それもそのはずで…


「何いちゃついてるでしゅかー! 少しは協力するでしゅ!」


 上着の裾から手を侵入させ、ペタペタと生肌に触れているらしい姉様に、ワタワタと焦るディアス。

 これをいちゃついていると言わず何という!


「襲われてるとは思わないんだね…」


 ヘイムダールがぽつりと呟いたが、それにはぎろりと睨み返した。

 襲われている人はあんな脂下(やにさ)がった顏はしませんっ。

 

「なんて羨ましい!」


「シャナ、本音が漏れてるよ」


 ノルディークの指摘に私ははっとした。てっきり反論の方を口にしたつもりだったけれど、後の本音が漏れていたようだ。

 くそぅディアスめ…正気になった姉様に嫌われるがいいわ!

 

 それはともかく、周りがおかしいと意外と私は冷静(?)になれるようで、一人ちゃくちゃくと牢番召喚の準備を進める。

 ディアスの叫び声やら悲鳴はこの際無視だ。

 

「ケルちゃん、牢番しゃんは美女好きということでよろしいでしゅか?」


『うむ、その通りだ』


『そうそう、とにかく美女に弱いからねぇ、ノーラちゃん辺りが適齢なのだけど…。困ったわぁ…他の男の物じゃだめなのよ~』


「他の男のモノ…」


 私がその言葉に愕然と呟くと、離れたところで姉様が頬を真っ赤に染め、その両頬に手を添えてきゃっと声を上げる。


「他の男のモノだなんて…くふふっ」


 姉様…その組み敷いてる黒い男を叩きのめしちゃいかんですかね…。

 

 可愛さ余って憎さ百倍という言葉を実感しましたよ。

 憎さはもちろんディアスに向けられておりますが。


「あらあら、同じような美女ならもう一人いますでしょう?」


 母様の言葉で、姉様の言動にショックを受けていた父様がギラリと目を光らせる。


「お前は駄目だ!」

 

 相変わらず母様一筋な父様が絶対にダメと首を横に振って引き留める。

 母様はと言えばしばし父様を弄ぶように沈黙した後、にこりと微笑んで指を指し示した。


「私じゃなくて、そっちよ」


 母様の指し示す方向へ目をやれば、そこには今の今まで静観を保ってきた男が二人…。


 私ははっとして期待に目を輝かせた。

 確かに彼は美女でした! 私が確認(・・)せねばならないほどの!


「あぁ」

「なるほど」


 男達も納得したように肯き、さささっとノルディークが部屋の外、おそらくは廊下に控えているであろうメイドさんに何やら伝える姿を確認する。

 扉を閉め、にっこりと目が合った私にほほ笑んできたので、この件に協力する気満々とみていいだろう。


 となれば・・・


 ぎらんっともう一度輝かせた。今度は獲物を捕らえた獣の目だ。


 私はケルベロスを降ろすと、姉様、母様、そしてなぜかリアナシアおばあ様の4人でじりじりと逃げようとするダレンに迫る。

 そこへハーンが壁をどんっと叩いて皆を驚かせ、ダレンの注意を引いたところへ私はスライディングタックルをかました!


「捕えましゅた!」

 

 私がダレンの足を捕えると、すかさず姉様と母様が両の腕に飛びつき、リアナシアおばあ様が拘束魔法でダレンを絡め取る。見事な連携だ。


「おみごと」


 ハーンが口笛を吹きつつ手を叩き、私は親指を立ててグッジョブとハーンをねぎらった。

 彼が注意を引かねば逃げられていたかもしれないものね。


「では、楽しいお着替えの時間ね」

 

 母様がふんわりとほほ笑む。

 

「ふおぉぉ~女神の微笑みでしゅ」


 あまりの眩さに私はくらくらしながらも気絶は根性で耐えた。

 こんなおいしい所を逃す手はない!


 ちょうど部屋には先ほどノルディークが頼んだ着替えが届いたらしく、ノルディークが大きめのドレスを広げて近づく。


「宴会芸用にメイド達が男にも着れるドレスを作って持ってきてたのだけど…これなら着れるね」


 いつの間にそんなメイドさんの隠し情報を把握したのか気になるけど、グッジョブですノルディーク。

 大きめに作られたドレスを見て私達女性陣は目線を合わせ、頷くと、肉食獣の目でダレンを見やった。

 

「では」


「いざ」


「お姫様タイムね」


 私、姉様、母様の順でにんまりと笑みを浮かべると、ばっとそれぞれがそれぞれの箇所を剥くために飛びついた。


「やめっ、やめないか!」


「大丈夫でしゅわ。痛くしたりしましぇんもの。気を楽になさってくだしゃいな…むふっ」


 姉様がするりとダレンの上着を剥ぎ取り、母様が下のシャツに手をかける。


「そうそう、素敵な女性に変えてさしあげますからね…あら、結構いい胸板だわ~…むふふっ」


 もちろん私はズボンに手をかけた。


「ちょっ! どこさわっ…握るな!」


「いやでしゅね~。暴れて逃げるのは無理なのでしゅから、早く終える為にも協力するべきでしゅよ。あ、ちょっと手が滑りましゅが、そこはご愛嬌で…むふふふふふ」


 ぽぽぽぽぽ~ん! と全員が驚くべき速さでダレンの服を脱がせ、私達は彼の裸(パンツだけは残してあげました)をしばし堪能した後、ドレスを着せていく。


「まぁまぁ、いいわね。お化粧もしないといけないわ。セレン、メイドさんを呼んでおいてちょうだい。あ、そうそう、私も真似しなくちゃね…むふふふふ」


 その後、化粧メイドも加わり、皆ノリノリでダレンを仕立てた。




 ダレンを仕立てる間中、部屋からは女達の


「「むふっ…むふふふふふ」ぐふっ」


という不気味な笑い声が響き、部屋の男達を無言にさせただけに止まらず、宿泊客達を脅えさせたという・・・。



 

 

むふふふふふふふふ… ぐふっ


響く女達の不気味な笑い声…


宿泊客1「この宿やばいんじゃないか!? 

     女湯には小さな魔物も出たって言うし!」


宿泊客2「何でも昨日は温泉に竜が出たとか!」


宿泊客3「それでこの笑い!?」


全員  「「「呪われた温泉宿…!?」」」


温泉宿存続の危機!?

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