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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
青春!?編
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65話 新旧ラブ・・・?

 旅行行きのお話が決まり、自然とウキウキするけれど、その前にまだ一仕事残っている。

 

「デビュタントは皆同じドレスで楽だったのに、こっちは大変です」


 そう、今夜は身内以外の貴族も混じっての本格デビューだ。

 これをこなしてこそ本当の社交界デビューともいえる。


「流行に詳しいヘインがいて良かったわねぇ」


 リアナシアおばあ様の言葉に皆が頷く。

 実は、今夜のパーティー用のドレスは全てヘイムダールが見立てたものなのだ。

 

 元々貧乏だった我が家としては、今夜のドレスも母様とメイドさんのリメイクによるドレスにしようと言ったのだが、珍しく却下されてしまったのだ。

 かといって、ドレスを仕立ててもらうなんてことは初めてで、流行もわからずどうしていいかとまごまごする私達を救ったのがヘイムダールだった。


 彼の塔はあちこちへと空を移動する移動型の塔であり、ヘイムダール自身が人間好きなため、自然と彼の目は肥えて流行にも敏感になったようである。


 そんな彼の見立てで作られたドレスは確かに見事なものだった。


 母様が着ているのは、背中が大きく開いたオーガンジーの、フリルが幾重にも重なる可愛らしさの中に大人っぽさを見せるマーメイドライン、色は白に薄いオレンジを溶かしたような淡色のドレスだ。


「美しいね、イネス」


 復活した父様がその姿を見て母様の肩にキスを落とし、大人のビターな雰囲気を漂わせるのをドキドキと見つめてしまった。

 

 内心では


 外国人っ 外国人っ 映画 映画っ


と自分の両親の絵になる姿に興奮していたのだけど。


 姉様はと言えば、これまた美しい淡い水色のシルクチュールを重ねたAラインドレスだ。

 これで頭に花冠でも載せたらまさに妖精!

 

 エスコートはシェールである。

 うちに元王子様が二人もいるし、残りの二人も美形なのだけど…と塔の4人組を勧めたのだけれど、姉様はそれで良しとしたようだ。


 ちょっと残念。


 で、最後に私だ!

 

 私が着るのはなぜかピンクである。しかも薄いピンクではなく、少し濃い目のピンクに、黒のレースリボンがふんだんに使われたプリンセスラインの可愛い中にほんのりと大人っぽいが混じったドレスだった。


 佐奈が着たらきっと友人と共に


「似合わないー!」  


と自ら大笑いしそうだが、さすがは美少女シャナ。お・似・合・い。

 これなら世のお兄様達を悩殺できるわ。


「むふふん」


 腰に手を当て、くるりと鏡の前で回転してほほ笑む。

 本日最初の獲物は実は…


「シャナ? 準備はできたのか?」


「兄様ー!」


 そう、最初の獲物は兄様だ。

 くるりと振り返り、支度部屋に顔を出した兄様にドレス姿でダイブした。

 きっと普段着なら兄様も避けている所だけれど、ドレスを汚すわけにはいかないので兄様も私をキャッチする。


「ぐっ…」


 ただし、全力ダイブなのでダメージは大きいかと。

 案の定兄様は顔を歪め、2・3歩後ろに下がって廊下の壁に背中を打ち付けた。


「可愛い? 可愛い?」


 首を傾げて尋ねると、騎士の制服に身を包んだ王子もかくや、と言った風情の美形な兄様はふぅとため息を吐いた。


「中身が凶悪だ」


「失敬なっ」


 さすがに長い付き合いなだけあって悩殺されてくれませんでしたな、この獲物は。


 本日の私のエスコートは実は兄様なのだ。

 これは父様が頑として譲らず、理由を聞けば、まだ誰とも婚約していないのだからと言う。


 父様は私が姉様のようにたくさんの男達に囲まれても良いということなのかな?

 兄様がエスコート役と言うことは、婚約者ついてませんから売れどきですよーってことになるはずなのだけど…?


 ハーレム要員増やせるので別にいいのだけど、なんだか複雑な気分だ。 


「シャナ、ほら見せて」


 兄様にごろごろ甘えていたら、背後からノルディークの声がして私はパッと振り返る。


「ノルさん! どうですか? 悩殺? 悩殺されます?」


 背後にはノルディークだけでなくシェールもいて、彼は騎士服ではなく貴族らしい仕立てのいい服を着ている。色は姉様に合わせた青系統だ。


「うん、可愛いね。いろんな虫が付きそうだ」


 くすくす笑うノルディークは相変わらずで、チュッとチュッと両頬に挨拶のキスをする。

 さすがにドレスぐらいでノルディークはメロメロにはならないか…。

 最近周りの男性攻略が難しめになってきた。子供なら無条件で襲えるのに…。


 うむむと唸りつつ、チラリとシェールを見やると、彼はばっと目を逸らした。

 おんやぁ~?


「シェール、ひょっとして見惚れたのかなぁ~?」


「阿呆かっ、その貧弱な胸が哀れになっただけだっ!」


 んまっっ、照れ隠しにしてもなんたる暴言かっ。


「そ~いうこと言うから飾り物婚約者なのですよっ! もちょっと大人な対応はできないのですかっ」


 シェールはちらっと私を見下ろし、ふぅんと呟くと、私の両肩に手を置いて動けなくしてきた。

 これは何の攻撃かっっ!


 ぎっと睨み上げると、にやりと微笑まれ、奴の顔が首筋へと近づき…


 ちゅううううっ


「ぎゃー!」


 吸われた! 首吸われたよ!


「シャナ!」


 叫び声と共にシェールと私が強く引き離された。

 一瞬ノルディークかと思ったけれど、引き離したのは…


「アルディス~」


 アルディスは自分とよく似た同じ王家出身のシェールを睨み、私を腕の中にしまいこむと、苛立たしげに目を逸らしたシェールから目を離し、私の首筋に重ねるようにちゅぅっと吸い付いた。


 これはまさかの新旧パルティア王家のラブバトル~!!


 ぎらんっと目を輝かせた私は、ドキドキウキウキしたが、そのすぐ後にある事に気が付いて思わず呟いた。


「…か…間接ちっす…?」


 その瞬間、アルディスとシェールがガクッと項垂れ、兄様とノルディークがぶふっと吹き出した。


 私はと言うと、「私のために争わないでーっ」と言うべきか、「怪しい関係…」と萌えるべきかで悩み、珍しく何も言えずにしばらく悩み続けたのだった。

シャナ「やはり新旧ラブっ!」


アル・シェール「「意味が分からん!」」


シャナ「こんな女に構いやがって!お前のつけた痕は俺が全て奪うっ!…とか?

    他の奴をかまう俺をお前に見せつけてやる。大いに嫉妬しろ…とか?」


アル・シェール「「止めろ気色悪い!」」


シャナ「世の乙女はそう言った要素に萌えるのですよ!!

    ほら、そこにも!」


廊下の影からこちらを覗くメイドさん達がグッジョブとばかりに親指を立てたかと思うと、シェールとアルディスにも追えない速さで走り去った。


この後しばらくの間、お屋敷では妄想腐女による二人の怪しげな話が流行ったとか…。

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