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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
青春!?編
58/160

57話 死なば諸共! 恥も諸共!

「ふっ…能ある鷹は爪をにょっきり~!」


 人差し指を一本立てて、どうだとばかりに頭上に掲げた私は、遂にやり遂げました!

 なにを?


 そ・れ・は!


 姉様によるダンスレッスンであります!

 もう、手取り足取り腰取り教えてもらいましたよ。

 おかげで何度腰砕けになりかけたことか。


 で、驚くことにディアスの奏でるピアノというのかな、少し音がチェンバロのような楽器の音色に合わせ、クイック・クイック・ターンとホールの中を自由に動き回り、音が途切れるのと同時にピタリと止まってご挨拶。


「完璧ですね」


 拍手するノルディークに、私は勝利のポーズを掲げた。


 …というわけなのだ。


「・・・・でも、シャナが覚えてしまったのは男性の踊りだわ」


 姉様がぽつりと呟く。



 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 ・・・・・・・・・・・・


 

 ・・・・・・・・・




 私は自分がやってしまったことに今気が付いた!


「しまったのです! 姉様と踊りたいがために男性パートを覚えてしまったのです!」


 今更気がついて、日数を数えてみれば、男性パートを完璧に覚えるのに10日。

 社交デビューの日まであと4日! 間に合う気がしません!


「なぜ皆指摘してくれなかったのですか!」


「『姉様と踊るのはこの私』」


「『姉様の腰をとっていいのもこの私』…でしたね」


 ディアスとノルディークが10日前に私が放った言葉を返してきた。

 う…うぅぅぅぅ…反論の余地なしです。


 何しろ、ダンスレッスンが始まって、最初は赤のアルディスが姉様の手と腰をとったのだけど…

 

 密着したのだもの

 姉様の微笑みを間近で見ていたもの

 

 なにやら嫉妬で燃え上がったもの!


 だから、私は姉様をとられてはなるまいと姉様のパートナーに名乗りを上げたのだ。


 でも・・・・そもそもそこが間違っていたのねぇぇぇ!?


 これぞ、ザ・後の祭。


「4日…4日で今度は女性パートを覚えろと…」


 ガクリとその場に膝をつき、私はだらんと頭を下げた。

 

「シャナ、大丈夫よ、今度は一緒に女性パートを覚えましょう」


 優しい姉様はまるで天使のようです。

 まるで、じゃなくてきっと天使様なのだけど…。


「むふ…」


「シャナ?」


 ノルディークが私の小さな声に反応して不思議そうに声をかけてきた。


「…むふふふふふふ…転んでもただでは起きませんよ! 良いことを思いついたのです! 今すぐお電話です!」


 この世界に電話はないので、電話と言ったら超特急便だ。

 

 なんだかわから無いものの、私の視線を受けて執事達がバタバタと動き出す。

 さっと紙とペンが用意され、私はサララッとそこに文とは名ばかりの携帯メールのような文章を書き、それを覗き込んだディアスが眉根を寄せた。


「シャナ」


「なんですか、文章は友人に送るモノなのですから砕けていても問題ないですよ。今までもそうでしたし」


「そうではない」


 ディアスは私を見下ろし、ふぅとため息を吐いた。


「字が汚い」


「・・・・でっかいお世話ですよ!」


 私はヒールの踵でディアスの足先を踏んづけてやりました!


 文字なんて、読めればよいのです! 

 女性の字がキレイであるべきなどという定義はないのです!


 ちなみにこれは佐奈時代もよく言ったなぁ・・と思い出す。

 何しろ佐奈は自他ともに認める悪筆だったのだから。







 翌日


「見回り休んで集合って、一体何があったのシャナ?」


 早朝。学園の登校時間の前にいつもは町へとパトロールに出かける私達だが、本日は我が家のホールへと集まってもらった。


「すごいな、これが青の館か…」


 本日は赤茶の髪に蒼い瞳をしたこの国パルティアの第2王子、ルイン・セイル・クリセニアが混ざっている。

 彼は時折城の者の目を盗み、町のパトロール隊に参加するようになった。

 なぜか王様から「()めてくれ…」と手紙が我が家に来るのだが、この年になったらどうするかは子供の意思にお任せでしょう。

 この世界の16歳は大人ですからね。


 そんな彼は歴史にも詳しいらしく、歴史の古い我が家の中を見ては、感嘆の溜息をついている。


 本日集まったからには彼にも協力してもらいましょう。


「皆さんを呼んだのは他でもない。死なば諸共作戦を決行するためです!」


 死なば諸共=お前らも道連れじゃあ~ 作戦!


「それはどういうモノなの?」


 シャンティが首を傾げるので、私はちっさな胸を反らし、声高に発表した。


「我等が社交界デビューを、これまでにない驚きのデビューで飾ろうではありませんか!」


 その瞬間、友人達の目がギラリと光る。

 

 さすがは私の育てた若紫達。

 ここで、なぁに?と可愛らしく首を傾げる姉様とは大違いの喰い付きっぷり!


「皆様、4日…いえ、3日で自分の性別とは反対のダンスを覚えてもらいますよ!」


 全員が「は?」と首を傾げた。


「華々しき社交界! 我々はそのデビューの日に、男女逆転ダンスを披露するのです!」


 恥をかくならお前らも道連れじゃあ~という意味の死なば諸共作戦である!

 私だけヘタな女性ダンスを踊る気はありません! 全員下手くそになってもらいます!


 ただでは起きぬ私の言葉に、少年少女達は互いに顔を見合わせた後にんまりと笑みを浮かべ、そして全員が口元に指を立てた。


「もちろん」


「「「内緒で!」」」


 さすがは我が友人達。ノリがいい。


 

 全員が頷くと、わっと盛り上がり、ノルディークは苦笑、ディアスは肩を竦め、姉様はくすくすと笑いだした。


 


 では、特訓開始です!



 

能ある鷹は爪をにょっきり

⇒能ある鷹は爪を隠すの逆で、才能あるんだから見せつけてやりますともよ~!

 というシャナことわざです。 


実際にはそんなことわざはありません。

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