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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
50/160

50話 彼の人は…

「ところで、シャナはここが何か知っていますか?」


 至近距離でにっこり微笑まれ、私は蛇に睨まれた蛙の気分だ…。

 美形に微笑まれているのだから喜ぶべきところなのに…喜べないっっ。


 ノルディークはどの感情も微笑みで表現してしまうのでわかりにくいのだけれど、現在笑顔が黒~いので怒っているのだ。

 

 長年連れ添うとわかるようになるモノなのよ、むふふ。


 て、夫婦気分で現実逃避しても意味はなかった…。


「こ…ここはですね…。美形の住家です」


 少しびくびくしながらも答えると、ノルディークはやれやれと言う表情で私を見下ろした。

 それと同時に、体がエレベーターに乗った時の様にふわりと浮かび上がり、どうやら底(?)に辿り着いたようである。


 私はそのままノルディークに抱き上げられて移動しているのでよくわからないが、彼の足元が沈んでいないのでたぶん底のはず(?)だ。


 周りを見回しても上下左右まっ黒な水の中でやはり何も見えない。

 ふぅ~っと息を吸ったり吐いたりしても不思議と息ができ、体もあの時の様に濡れた感じはしない。


 あの時は溺れかけたのになぁ…?

 ひょっとして違う場所に出たのかな。


 不思議に思っていると、ノルディークが私の様子を見て告げた。


「まだ下があるのですよ。ケルベロスの護る冥界の門のさらに下。死せる者の封牢がね」


「シセルモノノ封筒?」


 ブランドの封筒みたいなものですかね? シャヌルの封筒みたいな…。

 うわ・・・こんなとこにしまわれてるなら希少価値高そうね。


 思わず顔をしかめる。


「…封印された牢屋です。死者が閉じ込められているのですよ」


 私が微妙な表情を浮かべたことで何やらおかしなことを考えていると感づかれたらしく、すぐに訂正が入り、わかったよね?という表情をされた。


 嫌ですね~、私大人ですよ。大人ですからブランドなんて余計なことをちょびっと考えたけれど、こんな水の中にブランド物の封筒があった所でそっちのが意味不明だわーってなるでしょう? ちゃんとわかってますってば。


「死人の牢屋ってことですね」


「そうです」


 ふんふん、死人の牢屋。


 死人の牢屋!?


 うんうん項ていた私は、ぎょっとしてノルディークを見つめ、ぱくぱくと口を動かし指を下に向けた。


「読唇術もできない意味の分からない言葉では解読できませんよシャナ」


 首を傾げられたので私はぐわしっと彼の服を掴んだ。


「そこは愛人の力で読み取ってください! じゃなくてっ、死人なのですかっっ、私の愛人2号はゾンビかはたまたユーレイか? ですかっっ」


「おそらく? しかも大罪を犯した罪人ということになりますが」


 ゾンビで脛に傷を持つとな!

 いや…ゾンビなら脛に傷ぐらいあってもおかしくない…。

 幽霊なら…脛自体無い…よね。


 どうやら頭の中は混乱しているらしく、明らかにおかしなことを考える。

 

 いや…でも、そういえば、誰かを止めてほしいって言ってたから、ひょっとしたらその人が美形かもしれないし、まだ望みは捨てられないと思うわ!


 すぐに復活し、拳を握ってうんっと頷いた瞬間、ずぶんっと一気にノルディークと私はさらに下へと沈み込んだ。


「がぼぼっ…(またっっ?)」


 今度はあの夢の中と違って最初の時の様に濡れた感触がある。

 そして溺れる自信もある。


 しかし、ノルディークがすっと手を払うような仕草をすると、すぐにざっと水が引き、息ができるようになった。


「げぼぐげふっごげごほっ(ちぬかと思ったのですっ)」


「…えぇと、人間の言葉でないと解読できませんよシャナ」


 さっきよりもひどいおっしゃりよう!

 ノルディークの両頬を(つま)むと、私はむにーんと横に引っ張ってやった。

 

「女性には優しくしないと駄目なのですよノルさんっ」


「ひょせい(女性)…」


 失敬な!


 縦縦横横(まる)描いてちょんっと頬をひっぱって放すという刑に処した後、私は頬をさするノルディークのほんのり赤くなった頬を見て溜飲を下げた。


 それよりも、ここはどこですかね?


 相変わらず真っ暗闇の中、きょろきょろと見回すと、薄ぼんやりとノルディークの背後、彼の肩越しにに人の姿が浮かび上がり、その人物と目が合った。


「ノルさん、人がいましたよ」


 透けてもいなければ、どこか腐っているわけでも、傷だらけなわけでもない。

 五体満足で、ものすごく私好みの美形がそこに!


 とんとんと肩を叩いて振り返らせれば、ノルディークは私を抱いたまま振り向くので、私は再び暗闇の方向を向く羽目にっっ。


 あぁっ、美形を拝みたいのにっっ


「…シャナ、あなたという人は」


 ん? 


 なぜかノルディークは一瞬息を呑んだ後、ほんの少し掠れた声で呟いた。


「どうしてこんな大物を引くのです…」


 なんだかよくわからず、じたばたと動いてちょっと()りそうな体勢で振り返ると、ぼんやり見える鉄格子の中、見事な赤い髪に透き通った青碧の瞳の25・6の青年が、驚いた表情でこちらを見つめ、そして呟いた。



「…どうしてここにいるんだ、白」



 

 ・・・・・・・・・・ひょっとして、お仲間ですかね?

 




 





 

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