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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
49/160

49話 釣りをします

『我はあの男の所よりは良いかと思っただけだ! 飼い犬になる気はないぞ!』


 きゃっきゃ、うふふとリンスター家の女性が子犬にリボンをかけたり、撫で繰り回したりする中、ケルちゃんだけは頭を左右に動かし、必死に抵抗する。


 その一方で、スーちゃんはさすが乙女、ノリノリである。


『そっちの紫色のリボンもいいと思うわ。あら、こちらはレース付きなのね。ベロの方が似合いそうよ』


『我は、我は、認めぬぞ~!』


 首をぶんぶん振ってリボンをかけさせまいと抵抗するので、私はじゃんっと彼の前に肉をちらつかせた。


「台所からもらってきました~! わんこには肉! ちゃあんと大人しくすればご褒美にあげますよ?」


 ちょっと賞味期限の怪しいモノらしいのだけれど、犬にあげるならそれぐらいでいいだろうと少年執事達が用意してくれたものだ。ちなみにちゃんと火は通してあります。


『我は食事などせぬ』


 ぷいっとそっぽを向き、あくまでも抵抗するようなので、私はくるりと背後を振り返った。

 

「父様! わんこが反抗的なのです!」


 やはりわんこというのは家長には従うもの。

 ばっと振り返って訴え出ると、父様は「よし」と頷いて部屋から出ていった。


 ・・・・・待つこと数分。


「父様、それで何をなさるの?」


 姉様がきょとんとした表情で小首を傾げる。


 ぬはぁぁぁぁ~っ 姉様萌え傾げっっ


 私は姉様が首を傾げる姿に悶えて床を転げ回り、奇声を発しないよう耐えた!

 しかし、我慢はいかんかった…萌え尽きてぱたりとその場に倒れた。


『我が主(仮)は病気なのか?』


 ケルちゃんが首を傾げ、スーちゃんがやれやれと首を横に振る。


『マニアじゃないかしら?』


 これはマニアとちゃいますよ。萌えですよ萌え。

 いつかスーちゃんには萌を伝授せねばっ。


 とりあえず興奮しすぎて鼻血が出ないよう、息を整え体を起こした。


「やはり飼い犬は繋いでおくものだろう?」


 姉様の可愛らしさに視界から外れていたけれど、よくよく見れば、父様が太めの縄を肩にぐるぐると巻いた状態で担いでいた。


 なんだか綱引きの綱みたい。

 

 ・・・・ん? 綱引きとな??


 私はある光景が脳裏に浮かび、試してみる価値があるやも?と思い、その綱を借りようと父様に向かって口を開く。


「と…」


「「こんな可愛いわん子に縄をかけるなんてっ」」


 私が声をかけるより先に、ステレオのように母様と姉様が全く同じセリフを叫び、うるりっとその瞳をにじませた。

 

「ぐほぅっ」


 ・・・父様が二人に責められる中、私は一人部屋の片隅に倒れ、どくどくと鼻血を流す羽目になった。

 お、恐るべし、妖精親子の涙目…。



_____________

 

 翌日


「と、いうことでー! 綱引きをしたいと思います!」


 昨日の父様が持ってきたケルベロス用縄を借り、大きくなったケルベロスに運んでもらって昼の時間に魔法訓練の場所である校庭に友人達を集めると、じゃじゃんっと縄を示した。


「綱引きって?」


 今日のウェーブヘアはメデューサのごとく爆発しているシャンティの頭の中から、ちらちらと顔を出すのはシャンティの契約した使い魔だ。

 確か…高位精霊である光の精霊…の子供らしい。 

 

 光の精霊とはいえ、子供であればまだ高位とは言えない状態らしいので、子供でもなんとか契約できたのだろうということだったが、それでも呼びかけにこたえること自体稀なのだとか。

 

 ちなみに、一番仲の良いシャンティは光の精霊。そばかすオリンは闇の精霊。小太りアルフレッドは重力の精霊…の子供と契約できたらしい。

 彼等はいずれも高位精霊となることが確約された者達で珍しいのだそうだ。

 

 精霊は魂の光に導かれて契約するということなので、我が友人達はよっぽど面白い魂をもっているんだなぁ…とちょっと感心してしまった。


 と、話がそれてしまった。

 綱引きの説明だったよね。


「綱引きとはっ! イイ男を釣り上げる釣糸のようなものです」


 自信たっぷりに言い切ってみた。

 

 実は、昨日父様が綱を持ってきたとき閃いたのだ。

 良い男が池の底にいるのなら、綱で釣り上げればいいのでは?と。

 そこで思いついたのが綱引き。良い男を吊り上げる釣糸である。

 

 今度の狩りは釣りです! 釣って美形ゲットなのです!

 そのために、私は友人達に協力してもらうことにしたのだ。


「人間を釣るの? 良い男ならおこぼれ頂戴ね」


 どこでそんな悪女的言葉を覚えたんですかシャンティさん・・・・


 一瞬呆気にとられたけれど、なんにせよ子供達の掴みはオッケーのようだ。 

 わらわらと綱に子供達が群がり、私はケルベロスを振り返った。


「ではケルベロスちゃんっ、沼を出現させてください!」


 ケルベロスは三匹とも微妙な顔をしながら、巨大化し、てしてしと地面を片手で叩いた。

 すると、目の前にはあの巨大な黒い沼が現れた。


『我がこれを開いている間は中に入って行けぬ』


「大丈夫です。少々お待ちください。すぐ帰ってきますので」


 私は綱引きの綱の端を掴み、皆を振り返る。


「3回引いたら引っ張ってください」


 お願いをすると、友人達はうんとそれぞれ頷き、私はぐっと綱を掴んで沼の中に飛び込んだ。

 

 待っててね愛人2号、すぐにお迎えに~


「どこ行くのシャナ?」


 真っ暗闇の沼の中、お腹の辺りにぐるりと腕の感触がして、私は振り返り、ヒッと息を飲みこんで





「ふんぎゃあああああああ~!」





 大絶叫した。


 背後には、にっこりほほ笑むノルディークがいたのだった。



 秘密の計画がもうばれたー!





ディアス  「あの小娘は何を始めた―!」

ヘイムダール「校庭にケルベロス…」


二人がばっと第一責任者であるノルディークを振り返ると、彼はすでにそこにはいなかった…


ヘイムダール「逃げた…」

ディアス  「逃げたな…」


ノルディークは二人から責められるのが嫌で、シャナと共にイベントに巻き込まれる方を選んだようである・・・。


この時点ですでに目立ち過ぎていて、秘密の計画ではなくなっていることに気が付かないシャナであった。

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