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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
47/160

47話 彼が乗ったのは…

闇の中の謎の人物視点です


「これ以上我が主の心が壊されていく様は見たくありません」


 何の話かと俺は立ち止まった。

 ふりかえれば、長年共にいた使い魔が涙を流していた。


 俺が壊される?

 

 あぁ、そういえばつい最近近くで戦争が起きたのだった。

 常々戦争は嫌いだ、戦争などする人間も嫌いだと言い続けたせいか、使い魔である彼女にそのことが歪んで伝わっているのかもしれない。


 戦争が起きれば、またか、飽きもせず・・とは思う。だが、それで人間をどうこうしようとは思わないし、心が散り散りになったりもしない。

 しかし、彼女の中では戦争が起きれば俺の心が乱れ、人を滅ぼさない限り、やがて狂いだすのではという考えに至ったようだ。

 

 ・・・・彼女は俺がとある任に就任する頃、先代が狂ったのを見たせいか、主が『狂う』事に恐怖を感じている。それが年々ストレスとなり、蓄積され、次第に表に出てきていたのだろう。

 それでも、ひょっとしたらいつかは…と俺は思っていたんだ。


 しかし・・・


「ここにいれば誰もあなたを傷つけない」


 言うなり、彼女は人間が入れば気が狂うような空間に俺を押し込めた。


「人間は、全部壊してくるわ。そうしたら、もうあなたは苦しまないでしょう?」


 元に戻るかもしれないなんて幻想を抱いた俺が馬鹿だった!

 俺はそのまま闇の牢に封じられ、完全に狂った彼女は人間を憎み、壊す気でいる!


 俺は闇で狂っている暇なんてなかった。

 幸い今までの生活も閉じ込められているような生活だったのだから今の状況は世界が暗くなっただけでさほど変わりがないと思うことにした。

 

 長いのか短いのかわからない時間を使い、俺は必死に外に出る方法を探し、眠くなったら眠るという生活を繰り返した。

 時に牢の傍を通り抜ける魔物を捕まえて話もした、だが、一向に進展なく、時は過ぎた…



___________



 ある日、ほんの少し魔力を感じた。

 この空間では珍しいことだ。

 

 闇に閉ざされたこの空間で魔力を放っていられるのは番人である者達と、本当かどうかは知らないが、存在するというこの闇を総べる王くらいなものだと思っていた。

 だが、突然あたりにふわふわと漂う魔力は、この闇には似つかわしくない暖かさを持っている。



「誰かここを開けてくれ!」


 ためしに叫んでみたが、返事はない。

 希望を抱くだけ無駄か…?


 ふと、目の前の壁に白い何かが浮かび上がる。


「誰かいるのか!?」


 闇にのまれてはふいに姿を現すそれは、人間の手に見える。

 思わず駆け寄ったが、その手はそのまま闇にのまれて消えてしまった。


 俺はがくりと項垂れ、その場に座り込んだ。



 

 それからどれくらい時が経ったか、あまり経っていないようにも、かなり経ったようにも思える。

 

「頼む、あいつを止めてくれ…」


 ぽつりと一人呟く。


 悪い奴じゃない。ただ、俺を心配するあまり、心が恐怖にのまれてしまったんだ。だから、彼女が何かしてしまう前に止めてほしい。

 誰でもいいから…。


 切に願ったその声は、いつものように闇に溶け込むはずだった。


『あいつって誰ですか?』


 驚くことに返事があった。


「俺の声が聞こえるのか!」


 俺はばっと顔を上げ、しかし、幻聴に襲われているだけやもと必死に気持ちを抑え、冷静になれと言い聞かせながら辺りを見回し、そこに腕を見つけた。


 このチャンスを逃すまいと強くその腕を掴むと、やはり腕は闇にのまれかけ、俺は感触だけを頼りに力を込める。すると、手に鋭い痛みが走った。


『腕を折る気ですか!』


 かなり力を入れ過ぎていたらしい。

 手は放さなかったが、緩めて声の主と話をする。


 何者かはしらないが、好奇心旺盛で少し子供のような印象を受ける声の主は、俺を助ける条件を出してきた。

 この感じだと、悪戯好きの魔性かもしれない。

 だが、チャンスはチャンスだ。

 

 人間と違って魔性は契約してしまえば約束を違えることはない。ならば、相手が望むのが愛人だろうとなんだろうと受けてやる!


 その代わり、必ず協力してもらう!


 だが、意気込んだその時、相手が俺の手を掴み、何度も握ってきた。

 …小さい…子供の手?


『大船に乗ったつもりでいるといいですよ!』


 そう言われた瞬間、相手の手の感触は消え…


『むふふふふふふふ・・・・』


 相手の不気味な笑いが余韻のように響いた


 その時


 俺は…



 泥船に乗ったんじゃないかという気分に陥ったのだった・・・・。


 

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