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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
43/160

43話 契約しよう

「これからするのは契約の魔法だよ」


 初めての野外授業の内容の説明に、私達は全員こてっと首を傾げた。

 

「本来なら初等科ではなく中等科から上の子供達がする契約だけど、これにはいろいろいいことがあって、まぁ、皆の魔法を助けてくれる動物を呼ぶのだとでも思ってくれればいい」


 かなり端折られたが、気づかずにふんふんと皆素直に頷く。

 

 契約と言えばどこからか魔物を呼び出して名前を交換、ワタクシの(しもべ)におなり~おほほほほ、てやつよね。

 できれば美形に化ける生物が僕になるといいなぁ。


 ノルディークの使い魔で、今塔を管理しているクラウは確かウネウネのラーメンどんぶりドラゴンだった…そう思うと、やっぱりドラゴンかな。

 うん、ドラゴンにしよう。


 これから行う契約がどんなものでどんな方法をとるのかは知らないけれど、呼び出すものはドラゴンと心に決めて説明を聞く。


「じゃあ、俺が描く魔法陣に順番に一人ずつ乗って、呼びかける事」


「呼びかけるってどこに?」


「魔法陣に乗ってみればわかるよ。何も怖いことはないから、ただ呼んでみてごらん。えぇと、誰からいこうか」


 ヘイムダールは、わくわくしている私から…は、目を逸らした。


 あれは私を最後に回す気ね…。

 何が起こるかわからないとでも思っているのだろう。


 これは俄然ドラゴンを呼んで度肝を抜いてやらねば!


 気合を入れていると、一人目の子供が選ばれた。

 このクラスではおとなしい方の女の子だ。


 ヘイムダールが地面に手をかざし、光の線でできた魔法陣を一瞬で描き出すと、「おぉ」と皆から声が上がる。

 その中へ、少女の背を押して入るよう促し、少女は怖々とその中央に立った。


 皆が見守る中、魔法陣の中央でぼんやりと立つ少女。


 やがて、その少女の頭上にキラキラと銀の粉のような光が舞い、数十秒後、それは少しずつ形を作ると、少女の腕の中にすとんとイタチのような生き物が現れた。


「イタチ…? フェレットかな?」


 私がぽつりとつぶやくと、隣に座るルイン王子が興奮気味に身を乗り出す。


「マールだ。強くないけれど、森の精霊だよ」


 ほほぉ…精霊とな。

 

「ここで契約した者達は君達の生涯のパートナーにもなる。大切にしてあげる事」


「「は~い」」


 ヘイムダールが満足そうに微笑んで説明すれば、皆の目は少女の抱く精霊にくぎ付けのまま、返事を返した。




 その後は皆の目が恐怖から期待にキラキラと輝き、僕も私もと魔法陣に入ろうとするので、そこは日本式で止めることにする。


 ちらっと私が小太りアルフレッドに目線を送ると、彼は頷き、声を上げた。


「順番に並べ~!」


 この掛け声に反応するのは幼等科が一緒だった子供達だ。

 初等科から一緒になった外部の子供達は、どどどどどっと列を作った子供につられて列を作り並んだ。


「へぇ、えらいなぁ」


 ヘイムダールは感心し、私達はにんまり微笑む。


 これに関しては幼等科のお兄ちゃん先生も感心し、幼等科では次の世代にも引き継がれている。

 幼等科の先生たちによれば、子供達が大人しくなったと評判なのだ(シャナ達を除く他の子供達に限ってだが)。


 喧嘩することなく、皆が順番を守り、次々と契約をこなしていく。


「契約できない子はいるの?」


 ふと気になって尋ねてみれば、ヘイムダールは頷いた。


「声は聞こえていても、まだその時じゃないと突っぱねる精霊や魔獣、聖獣はいるね。そういう時は大抵大物が釣れているから、それなりの実力を持った時にもう一度契約するんだ。ただ、今回はそういうことがないようにその子に合う方向へ俺が導いてるけどね」


 なるほど。ということは、この中にすごい大物に声をかけられる子がいたとしても、実力不足は目に見えているので、別のものに声がかかるようにいじってしまうということか。

 

 しかぁし! 私の番になったらそうはさせない!

 絶対ドラゴンを引いてやる!(くじ引き感覚になりつつある)


 ふんふんと鼻息荒く、順番待ちすること数十分。

 ついに私を残して最後となり、私は意気揚々と魔法陣の中央に向かった。


 目指すは巨大なドラゴン!


 と…思っていたのだけど、ちょうど魔法陣の中央に足を踏み入れる瞬間、ペットとして飼うなら犬がいいなぁ…とふと考え、私は魔法陣の中央に足を踏み入れた。


 ずぶり・・・


 ん?


 気が付けば、私の足は底なし沼のような暗闇にのまれ、世界もまた闇に染まっていた。


 なんですかね・・これは??


「・・・・ナ」


 遠くでヘイムダールが呼ぶような声が聞こえるが、まあ、契約終わるまで待ってもらうことにして。

 これが契約の世界の中なのかな?


 とりあえず教えの通りに呼んでみる。


「誰かいないかねー!?」


 今の呼び方ちょっとオッサンチックだったかしらん。

 底なし沼では前にも後ろにも進めないので待ってみると、前方の闇がごそりと動いた。


『何者だ…』


 お、話せる何からしい。これは期待大だ。


 しかし、何者だ…と言われたら返す言葉はこれでしょう。


「お前が何者だ!」


 その瞬間、グオォォォオ!と大きな唸り声が聞こえ、闇がほんの少し薄まり、目の前に、黒い毛並みの頭が三つある…



 ケルベロスがいた。



 これは…


 ドラゴンじゃないけど確実に捕獲決定!


「むふっ」


 私は未来の素適ペットに思いを()せ、にんまりと笑みを浮かべたのだった。


 


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