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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
39/160

39話 好奇心旺盛な彼女

「やっぱり本モノが欲しいですね」


 あぐあぐとお肉を口にしながら呟けば、何々?とばかりに友人達がこちらを見やるので何でもないと答えつつ、隣で意気消沈しているディアスをチロリと見上げた。


 現在私達はあの大騒ぎの幻視魔法を何とか収拾し、歓迎式典のお食事タイムとなっております。

 出される食事はビュッフェ式。しかもなかなかおいしくて箸が…箸はないので、フォークが止まりません。


 そんな中、まさかの気絶者を出してしまった幻視魔法考案者ディアスは、私の隣に立ち、表情的にはむすっとしてますが、かなり意気消沈しているみたい。

 ディアス真面目だからね~。


「本物って? 竜のこと?」


 ノルディークが私を見下ろし、いつものようににこやかに尋ねてくるので私は頷く。


 ノルディークは幻視魔法の件は気にしてないみたい。まぁ、彼は意外と悪戯好きなところがあるから逆に楽しんでいる感じかな…。

 もしくはディアス一人に責任を押しつけた…とか?


 ちらっとノルディークを見上げると、彼はにっこりほほ笑む。

 その笑みが黒い気がするのは私だけか?


「そういえばシャナはいつ竜に会ったの? ここ何百年も人里に現れた話は聞かないけれど」


「会ってはおりませんよ。ゲームで見て知ってるだけです。ゴブリンと~、オーガと~、スライムと~」


 大抵敵キャラとして出てくるものをつらつらあげていると、ディアスが額にべしりと手を当ててきた。

 ちと痛いんですが…。


 口を閉ざし、額をさすりながら抗議の目で見上げれば、ディアスの呆れたような表情に首を傾げる。


「なんですか?」


「…それだけの魔物に会っているのは魔王ぐらいだぞ。お前は魔王か?」


「魔王! それ美味しいですねっ。この世界にいるんですか? 美形ですか? 強いですか?」


 話題にがぶりと喰い付けば、ものすごく胡乱な目で見られてしまった。


 魔王は美形で強くてツンデレなんですよ~だ(シャナの思い込みです)。

 魔王萌えというのを知らんとは嘆かわしいっ。


「どうだろうね…魔大陸は塔ができてからずっと沈黙しているし…今もいるのかな?」


 ノルディークが首を傾げるので、私は久しぶりに塔の記憶を掘り起こした。

 魔王見たさにじゃないよ? うん、決して。

 

 ふと浮かぶのは、筋肉ムキムキマッチョの…ボディービルダーで脂ギッシュなハゲおやじだった。


「却下です!」


 突然叫んだので「何が?」と周りから尋ねられたが、私はぶんぶんと首を横に振るだけにした。

 

 無し! 魔王は無し!


 ついでに掘り起こされた知識によれば、魔大陸というのは塔の外側にある唯一の大陸で、塔の干渉を突っぱねているのだそうだ。だからなのか、魔族と呼ばれる魔力の高保持者が山ほど生まれるが、それと同時に魔物も生まれるのだと言う。


 ということは…塔がなくなるとこの世界全体に魔力が溢れる? …でも、魔物も溢れるのか…。

 塔もいろいろ抑えてるんだなぁ・・。



 

「興味深いお話ですね。こんな子供がドラゴンを出現させたことにも驚きましたけれど、魔族を知っているような口ぶり、あなた方は何者ですの?」


 不意にかけられた声にノルディークとディアスがほんの少し眉根を寄せる。 


 それを見つつ、かぷりとさらにお肉を頬張って振り返った私は、そこにつんと顎を逸らして腕を組み、背筋をしっかりとのばした赤毛の美女を見て目を輝かせた。


 勝気美女出現ー!


 長い赤毛はウェーブし、毛先はクルクルと巻かれたまさにツンデレ美女!


「あなたがこういった話に興味があるとは思ってもみませんでしたよアデラ姫」


「姫!?」


 私は即反応し、ぎらりっと彼女を射抜くように見つめた。


 リアル王子はすでに出会い済み、しかし、リアル王女はまだ会っていなかったし、何よりこの国には王女がいない! 残念に思っていたところに他国のリアル王女がキター!


「あなたには聞いていませんわセレンディア。あなたはいつだって話をはぐらかすのですから」


 ツンっとした中にあなたの真実を見せてほしいというデレありですね!(勝手に解釈中)そのツンとした横顔はワタクシ拗ねているの…という合図に違いない!


「あなたを理解したいのよ~! なんて…むひゅひゅひゅひゅ~!」


 あぁ! 面白すぎて顔がにやける。


 でへでへの表情でお肉をあむあむ噛んでいると、ディアスとアデラ姫が顔をしかめて少し後退(あとずさ)った。

 それに気が付かない私を、ノルディークが面白そうに抱き上げ、顔に付いたソースをぺろりとそのまま舐めとってくれた。


「シャナ、何か誤解をしているでしょう? 私はあなたの(しもべ)、最初の愛人ですのに」


 いやぁぁぁぁ~! も・え・るぅぅぅぅぅ~!


 突然の展開に私の顔が赤く染まり、ぼふんっと音を立てて爆発した…ような気がした。

 そんな私達の姿を見て、アデラ姫は免疫がないのか、やはり顔を真っ赤にして早口に告げる。


「そ、そのような幼子に手を出すなんて、やはりあなたは変態です! 不愉快ですわっ。失礼!」


 あ…行ってしまったよ。ツンデレ王女…。

 行かないでと思わず手を伸ばしたところに、ふぅとノルディークが息を吐いた。


「彼女は少し好奇心旺盛ですね」


 ノルディークの言葉に、ディアスも真剣な表情で周りを睨みながら頷く。

 

 二人ともわかってないなぁ。あれはノルディークへのアピールなのよ(シャナの萌え視点による曲解です)。


「余計な好奇心だ。気を付けるべきだろう」


「えぇ。シャナも気を付けてくださいね」


 ふんわりとほほ笑まれたので、二人の恋愛模様を妄想してニマニマしていた私は、慌ててふんわりと微笑み返した。

 

 えぇと、それで何に気をつけろって言ってたっけ?

 

「気を付けるって…筋肉ムキムキマッチョ?」


 咄嗟に浮かんだかつての魔王を思い出してあげれば、一瞬の沈黙が流れる。 


「・・・・・」


「話はちゃんと聞いておけ…」


 ノルディークには無言で返され、ディアスには窘められたのだけども…何を気をつけろと??


 私は首を何度も傾げ、やがて、二人は諦めたように同時にため息を吐くのだった。


 

 …何に気をつけろと―!?


自分が塔の主だとすっかり忘れている危機感0のシャナなのでした…。

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