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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
38/160

38話 歓迎式典

 さて、クラスも決まり、担任も発表されたところで私達は担任の元へと一度集まることになるのだが、所在なさげなルインは私が手を取り、友人達が取り囲んで連れて行く。

 ついでに途中で下心ありそうな年上の子供達を威嚇し、ヘイムダールが立つ場所へと向かった。


「はいはい、こっち、こっち」


 ヘイムダールはにこにこ微笑みながら手を振っている。

 同じにこにこでもあれだね、ノルディークは美少年の笑みで、ヘイムダールはホストの笑みだ。

 ん? それって営業用スマイルってことか…?


 ずんずんと彼に近づく私は、ふと気になることができてルインから手を離し、そのまま無意識にヘイムダールによじ上ると、その顔をじぃぃぃぃっと見つめた。


「シャ、シャナ? 顔が近い…」


 最近では足で相手の体をがっちりホールドし、両手を自由に使うという抱き着き方をマスターした私。ぺちぺちとヘイムダールの顔に触れ、彼の顔をじいっとさらに覗き込む。

 対するヘイムダールは、胸辺りをぎゅうぎゅうに足でしめられ、さらに上から覗き込むようなシャナに仰け反りながら顔をひきつらせていた。


「いかんのです」


「な、なにが?」


 ぼそっと呟いた私の言葉にヘイムダールが冷や汗をかきながら尋ねる。


「このお肌のきめの細やかさはイカンのです! お兄ちゃん先生はヘイン君より若かったですがぼろぼろだったのですよ!」


 何百年も年下の幼等科のお兄ちゃん先生。初めのうちはぴちぴちしていたのに、次第にお肌がぼろぼろになり、卒業するころには髪もぼさぼさで十円禿げもできて(誰のせいか気づいていません)程よい渋みが出てきたというのに、こちらはぴちぴち10代から20代のお肌! まだ幼さが残っている!


「男たるもの!」


 私が掛け声をあげると、同じクラスの子供達が呼応する。


「身を粉にして働くべし!」


「貢ぐべし!」


「愛でるべし!」


「「全身全霊捧げるべし!」」


 うむうむ、さすがは私の育てた若紫達。軍隊式フィットネス(将来の筋肉のため)を教える傍らに教えた言葉はすっかり身に染みているらしい。

 

「何を教えてるんだ幼等科は…」


 ヘイムダールにべりんっとはがされ、ため息をつかれた。

 

「この極意は幼等科で教えているのではないのです。私が皆に伝授したのです。これさえ忘れなければ女性はウハウハ、男性モテモテのハッピーエンドに繋がるのですよ」


 ウハウハとモテモテのフレーズに周りの年長さんの耳がダンボになったところを私は見逃さない。

 ギラリと目を輝かせてヘイムダールに聞かせるように、しかし実際は周りの皆に聞かせるように尋ねた。


「女性の極意も聞きますか? こちらは男性ウハウハ女性モテモテ極意ですよ」


「それはまた今度。それよりも歓迎式典が始まるから少しは大人しくしてなさい」


 周りの女性達が「あぁっ」といかにも残念そうな声を上げ、私達はにやりと微笑む。

 ぐふふふふふ。基礎を育てあげるならば子供のうちに。ここに食いついた娘さん達はいつでも大歓迎。


 カム・オンお仲間!


 とまぁ布教活動はここまでにして、ぴちぴちのヘイムダールのお肌もまぁ、今は棚に置いといて…でも、いつかは疲れたようなお肌で渋みを出してあげるわっと心で気合を入れ、私達は首を傾げる。


「歓迎式典って何するのですか?」


「見てればわかるよ。今年はシャナがいるから毎年適当のディアスも張り切ってるしね~。セレンもちょっと手を出すつもりらしいよ」


 塔の主と元主が何かするならば十中八九魔法で間違いないだろうが、一体何をするのかとわくわくしながらちゃっかりヘイムダールとは手を繋ぐ。もう一つおまけに傍で唖然としていたルインの手も取り、両手に花状態で構えていると、それを見た若紫達も我先にと手を繋ぎ始め、男女交互で初等科の我がクラスは全員が手を繋いでいた。


 「仲良しね」「可愛い」などと周りの年長さん達からほのぼのした感想が漏れると、そこはにっこりスマイルを浮かべる私達。

 自分で鍛えておいてなんだけど、なかなかに恐ろしい人材が揃っていやしないか? 我がクラス…。


 貴族にしては押せ押せな雰囲気の仲間達に少し不安を感じたがその不安はすぐにかき消えた。



 

「すごい!」


 周りから声が上がり、景色が一瞬にして塗り替えられる。

 ディアスとノルディークによる歓迎式典の魔法ショーが始まったのだ。


 天井も壁も床も全てが星空に代わり、まるで宙に浮かんでいるかのような錯覚を受ける。そんな中、星が流星となって流れ、数人の生徒の前にふわりと留まった。


 かくいう私の前にもちゃっかり光が留まり、ヘイムダールを見上げれば、笑って頷くので、彼と繋いだ手を離して光を突いてみた。


 光はぱちんっとはじけると、あちこちでユニコーンになったり、妖精になったり、どうやら触った人物の見たことのある生き物に変じるようだ。


 ということは…


 私はクイクイとルインの手とヘイムダールの手を引っ張って少し後ろに下がらせた。


 私達の前で、小さな光ははじけた後、大きく膨れ上がり、他の生物をかき消すくらい辺りを照らし、眩く輝く。


「…シャナ、こんな巨大生物にあったことが?」


 まだ形はできていないが、大きさに慄いたヘイムダールに尋ねられて私は頷いた。

 

「ゲームの中で」


 何のことかと首を傾げられたが、それは形を成し、大きな翼を広げた。


 あぁ…やっぱり!


 歓迎式典が悲鳴と驚愕に包まれ、約一部が失神し、魔法を仕掛けたディアスとノルディークもしばらく魔法を解くのを忘れてそれに見入っていた。


「やっぱり幻想生物はこれが一番だと思うのですよ」


 うむうむと頷く私の前には、幻でできた光り輝く…この世界ではもうほとんど見かけることはないと言われる自然災害…





 ドラゴンがそこにいたのだった――――― 





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