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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
33/160

33話 顔合わせ

 王都破壊事件から3日が過ぎた…




「あ~、まぁ~、その~なんだ~。被害者は誘拐犯だけであったことだし」


 ディアスに猫の子のようにつままれてぷらんぷら~んと揺れながら、応接室のような部屋にて、私は初めて王様なるものと謁見していた。

 

 姉様の婚約者(仮)のシェールのお父さん、フリードリヒの弟に当たる彼はまだ30代の働き盛りの青年だ。でもすでに二人の子持ち。

 

 ぷらんぷらん揺られながら視線をすすすすす~っとずらせば、綺麗な王妃様の横に、何とも品のよさそうな赤い髪に蒼い瞳の兄様ぐらいの年の男の子と、赤茶の髪に蒼い瞳の私ぐらいの年のやんちゃそうな男の子が大人しく座らされていた。


 王妃様美人。王様はそこそこ…ちょっと渋みが足りなくて好みからはずれるけど…

 将来が期待できるやもしれない。


 ぎら~んと目を輝かせて狙っておく。

 クリセニア学園は貴族が多い。上の子は王太子なので外部での勉強はしないだろうが、いずれ下の子が入学するだろう。お近づきになっておくに越したことはない。


「こういうことはきっちりしておかねばなるまい。塔の管理者としてこの国を騒がせたことに謝罪する」


 ディアスと共に、私、ノルディーク、なぜか今回巻き込まれた緑の塔の主だというヘイムダール、そしてパパンが王様に謝罪した。

 

 国の干渉を拒む独立した権力組織でもあり、絵本の英雄。夢か幻のようでありながら、一国ぐらい簡単に消し飛ばすことができる厄介な人々、その主3人に頭を下げられ、王様はたじたじである。 


「で、その誘拐犯の処遇だが」


 たじたじな王様を無視してパパンが本題に入った。


 実は、今回の謁見は謝罪も理由の一つであるが、本当の狙いは、許せぬあの悪漢、誘拐犯の一味をこちら側に引き渡せと言う交渉をしに来たのだ。

 その旨を伝えると、王様は唸った後、顔を上げた。


「いや、さすがにそれは人として同情…いやいや、とにかく、犯罪者の裁きは法律に(のっと)って行う。犯罪者ではあるが、我が国の国民だ、そうですかと塔側に渡すようなことはできん」


 そこはさすがに王様、一部同情が入ったようだが、塔と国の干渉できる線引きはきちっとするようである。


「…やっぱりあの場でおちりぺんぺんすべきだったでしゅ」


「そうだな、せめて裸で吊るしておくべきだっな」


 あの後すぐにクレーターに騎士団が押し寄せ、誘拐犯は回収されてしまったので、ノルディークに甘える私にショックを受けていたパパンは、姉様の復讐をし損ねたのだ。

 私もノルディークに言いくるめられてしまったのでパパンと共に不完全燃焼。

 親子そろって奴らを渡せと言いに来た、というのが本音であった。


「そこの恐ろしい親子は少し大人しくしているように」


 ぶぅっとむくれる私達に王様はくぎを刺し、とりあえずの謁見は終わった。

 

 ということで、私はディアスの手からぴょーいと飛び降りて王子様たちに近づく。


「シャナ・リンスターといいまちゅ。王妃ちゃま、王子しゃま、よろちくお願いいたちまつ」

 

 王妃様はまぁと驚いたように声を上げ、にっこりとほほ笑む。その笑みはママンのお友達なだけあって妖精さん仲間のようだ。

 

「さ、あなたたちもご挨拶なさい」


 王妃様は王子達を促し、王太子が片手は胸に、もう一方の手は腰の後ろへ回し、すっとお辞儀する。

 貴族の礼だ。小さいながらも王子だけあって様になる。


「クラウス・イル・クリセニアと申します、小さな淑女(レディ)。以後お見知りおきを」


 きゃあああっ! 小さな淑女だって! 聞きました奥様っ? 淑女よ、淑女っっ

 

 手を取られ、その甲に軽く口づけられて思わずニヒャッと顔が崩れかけたが、必死で立て直した。おかげでクラウスの弟との挨拶中は頬がぴくぴくするし、口元がニマニマしかけて顔の筋肉と戦う羽目になった。


「ルイン~。4ちゅ、よろしゅおねげーちまちゅ」


 そうね…4歳だものね。まだまだ言葉には苦労するわよね…若干幼すぎる気もするけど…。

 弟ルインの挨拶には言葉の壁を思い出し、思わずほろりとしてしまった。


 だが、うむ、やはり王族はいいね! 育ちがいいから幼等科の悪ガキどもとは品が違う! ぜひそのまま育ってほしいものだ。

 そして、いい男に育ったらハーレム要員として加えるのよ~。


「むふふふふ~」


「「「・・・・・」」」


 私の漏れ出た笑いに塔の主達が微妙な表情をしていたことにその時の私は気が付かなかったのだった。



______________



「ただいま帰りましゅたー」


 王様との謁見も終え、家の玄関をババーンと開けると、そこには執事とメイドのお仕着せを着た幼い子供達がいた。


「「お帰りなさいませ、旦那様、お嬢様」」


 きちっと腰を折り、挨拶をした彼等は、一緒に誘拐されていた子供達である。


 彼等は家も、働くところも、帰る場所もない子供達。であるならば、この子達だけでも我が家で引き取り、かねてから欲していたメイドさん、執事さんとして育てよう…という話になったのは、姉様が珍しくパパンにおねだりしたためだ。

 

 姉様のおねだり見たかったっっ!

 

 そんな私はと言えば、2日ほど眠っていたのでそのやり取りを見損ねたのだ。


 で、塔のことについてはこちらが気を付けること、それからばれた時は彼等の口止めも徹底することにして、姉様のおねだりにパパンが全面降伏する形で受け入れることとなった。


 本日はママンと彼女ら子供達合作の古着のリメイクよる制服を着ての初仕事である。


 若さが眩しいわ。とっても初々しい…。


「今日はいい日でしゅね~。 ちろでは王子ちゃまと仲良くなって、こちらでは制服萌えでしゅ。むねがキュンキュンしましゅよ」


「病気か?」


 失敬な!


 ディアスに真顏で問われたので、わざと彼の足を踏みつけてやりましたともよ。

 

 そんな子供メイドさんに扉を開かれ、私達は談話室に入ったところで全員がピタリと足を止めた。


「おや、やっと帰ってきたね」


 一人掛けの椅子に、おばあちゃんが座っている。それも、高木家のずんぐりむっくりでちっちゃな田舎のお婆ちゃんではなく、長い白髪の髪をゆるく編んだすらっとした品のいいおフランス的な(ただのイメージです)おばあ様だ。


「はじめまちてー。シャナ・リンスターでしゅ」


 挨拶は重要。

 すたたたたっと近づいて挨拶すれば、おばあ様は軟らかい茶色の瞳を楽しそうに細め、私の頭をゆっくりと撫でた。


「初めましてシャナ。私は青のリアナシア。ナーシャと呼んでおくれ」


 お・・・おぉっ、遂に主不在の赤を除く最後の塔の主が出てきたよ。


 くるりと振り返ると、ディアス、ノルディーク、ヘイムダール、パパンの4人は、部屋に入った時の格好のまま固まっていた。




 ・・・・・だるまさんが転んだ実行中?





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