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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
学園編
32/160

32話 終息

 世界が真っ白だ…


 遠くでうふふあははと懐かしの高木家のおじいちゃんとおばあちゃんが笑って手を振っている…


 て…


「ちぬとこだー!」


 ばっちり目が覚めました。

 

 一瞬意識がなかったのは、どうやら思い切り魔力を押さえつけられたところを反発し、それが爆発したために起きた貧血のようなものだったようだ。


 なぜか花畑が見えたけど…。

 

 状況を確認すれば、私の周りにはいつの間にかノルディーク、ディアス、さわやか青年と、私を強く抱きしめるパパンがおりました。

 

「パパン~」


 至福のあまりぎゅうっと抱き着いてむふふふふ~と笑えば、ひゅるりと体に戻る何かの反応に周りの三人がほっとしてその場にどさりと座り込んだ。


「? どうしまちた?」


 なんだか三人ともぐったりしている。

 

 何があったのだったかと辺りを確認すれば、私達を中心に小規模だがクレーターができており、その周りの家や道路があちこち削られ、クレーターに沿った綺麗な円の空間を作り出していた。


「三人がかり…」


 金髪碧眼のさわやか青年が呆然とした様子で呟き、ディアスが乱れた前髪を撫でつけながら大きくため息を吐き出してノルディークを見つめている。

 ノルディークはと言えば、自分の手を開いたり閉じたりしながらやはり呆然とした様子だ。


 何が起きたのかよくわからないままにパパンに強く強く抱きしめられ、ちょっと息苦しくなってタップした。


「パパンッ、ち、ちぬっ、息がっ」

 

「あぁ、ごめんよシャナ。…私はまた失くすかと…思って…」


 なんだかパパンが泣きそうな顔なのでその頭をよしよししてあげることにした。

 男の悲しみは女の包容力で優しく包み込むように癒してやるモノよ。


 できれば相手は恋人がいいけどね。

 パパンはカッコイイからまぁ、今はパパンで許してあげる~。将来禿げちゃだめよパパン。


「えぇと、何があったんでしゅたかね…?」

 

 落ち着いたところで再び周りを見回し、ふとそこに不自然に転がる傷だらけの男達を見てはっきりと思い出した。


「ねーちゃまを殴ったやつらでしゅー!」


 すでに傷だらけだし、顔はお岩さんでぼこぼこだけど、この手でさらにぼこぼこにせねば気が済まぬ!

 

 パパンの腕の中で大暴れし、なんとかすり抜けて男達の元まで走ったが、その途中でべちょりと転んだ。

 

「シャナ!」


 パパンが慌てて駆け寄ってくる。しかし、情けは不要ってなもんだ。

 ここは女元36歳。意地でも女に手を上げたやつらに制裁を~!


「ふんぬ~!」


 頑張ったが、足がガクガクして立つことができないので、そのままずるずると這ってみた。

 見た目がかなり怖い状態でも気にしない!


「す、すごいね。あの子何者?」


 金髪碧眼のさわやか青年が、疲れ切った様子でありながらも感心したように、ついでにドン引きもしながらノルディーク達に聞いている。その視線は私にくぎ付けだ。


「見てるならてちゅだってクダしゃい~!」


 ディアスは大きくため息をつき、ノルディークはくすくす笑う。

 パパンはあわあわしながらも私を抱き上げ、暴れる私を必死で押さえつけた。


「シャナ、レオノーラはノルディークの結界でケガはしていないから少し落ち着きなさいっ」


「ゆ~る~しゃ~ぬ~」


 怒りのぶり返しで再び私の周りに魔力が集まりだすと、ノルディークが慌てて駆け寄り、パパンから私を受け取ってその魔力を押さえ付えた。


「シャナ、落ち着いて」


「い~やっ!」


「じゃあ、大人になってあげるから、落ち着いてくれないかな?」


 それは…

 かなり…

 ぐらつく提案だ。


 ちらっともうすでにぼこぼこな男達を見た後、にこりと微笑むノルディークに向き直り、しばし逡巡の後、私は…


 色気大爆発をとった。


「しゃあ!、カモン! お色気大爆はちゅっ!」


 ノルディークはくすくすく笑い、ふわりとその姿を大人に変えて私の頬と額にキスをしてくれる。

 その美形ぶりとキスのサービスにメロメロです!


 ちなみにその時、私達から少し離れた場所ではディアスとさわやか男があんぐりと口を開けてノルディークを見やり、パパンはほろほろと泣きながら地面にのの字を書いていた。


「じゃあシャナ、少し休もうか」


 ノルディークはにこりと微笑んでそういうと、「ん?」と首を傾げる私の額に手をかざし、私はそのまま眠りの底へと落されたのだった。



___________



 シャナを眠らせた後、ノルディークは再び子供の姿に戻り、ガクッと地面に膝をついた。


「セレン! 大丈夫か?」


 さわやか男、こと緑の塔の主ヘイムダールが駆け寄り、顔を覗き込む。

 その横にディアスが立ち、立ち直れないシャナの父アルバートの代わりに小さなシャナを抱き上げた。


「小娘が魔力を放出したせいか」


 ディアスの問いにノルディークは青い顔で頷く。

 

 ノルディークの体はシャナの魔法で生かされている。

 その魔力のかなりの量が外に放出し、シャナが歩けないほどに体力を失ったため、当然シャナに支えられているノルディークにも影響が出たのだろう。


 しかし…


「まさか全力でシャナの魔力を押さえてなお動けるとは思っていなかった」


 ぽつりとつぶやくと、ヘイムダールがノルディークに肩を貸し、歩き出す。

 ディアスはそんなノルディークの横を歩き、クレーターを見やりながら呟く。


「青も呼んで早急に今後を考えねばならんな」


 3人もの塔の主の力をもってしてようやく抑えることができた化け物級の能力者であるシャナは、あどけない表情でむにゃむにゃと口を動かし、そして


「裸まちゅり…」


 何やら平和(?)そうな寝言を呟くのだった。



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