26話 入園したのは農場です!
結局、ディアスの提案により、塔の住人達との初顔合わせはもう少し私が成長してからにしようということになった。
塔の住人は人生が長すぎるほど長いから、数年後に集まるのでも気にしないそうだ。おおざっぱだね。
そして、今回の招集の原因となった戦争介入については、戦争の元々の原因が赤の塔の主の暴走だったため、必要な処置であったと説明することになった。
これについては張り切って主張した。
「よ・い・で・ちゅ・か~! 元々の原因が塔で、へいちの多くがちょうき(正気)でないのに、塔が介入しないのはおかちいんでしゅ! 自分のけちゅは…もががっ」
ノルディークに口を押さえられて止められ、じたばた暴れる私を無視してノルディークが続けた。
「自分達のしでかしたことはきちんと自分達で片付けないと、ということだよ」
ま、私の言葉がお上品に片づけられたわ。
とにかく、自分のケツは自分で拭けと言う高尚な(!?)言葉でディアスを言いくるめ、納得してもらったのだ。
そして遂にやってまいりました!
「も~い~くちゅねると~一年しぇ~」
ん? 一年生の歌ってどんなだったっけ?
まぁ、まだ一年生じゃないけどね。
幼等科…つまり幼稚園児だけどね。
「シャナ、4しゃい!」
びしぃっと四本指を立て、青の館の玄関でびしぃっと決めポーズを作った私は、現在宮廷魔道士、騎士を多く輩出するクリセニア学園幼等科のエンブレムの入ったセーラーカラーのシャツと紺のスモッグ、膝丈のプリーツスカートを腰で折って膝上丈にした制服姿である。
チラリズムなかぼちゃパンツが可愛いでしょ。
「シャナ? 本当にこれでいいの?」
問われて振り返れば、似たようなデザインだけども、白シャツに紺のブレザー、本当はひざ下丈のプリーツスカートをもちろん折り曲げて膝上丈にし、ニーソックスから見える生足が輝かしいクリセニア学園初等部入学の姉様がもじもじしながら現れた。
「ぐふぅっ…」
は、鼻血が出る…
惜しむらくはまだ姉様10歳の子供だということか。しかし、10歳でこんな清楚可憐な愛らしさならば、12歳越えたあたりから危険度が増すのは間違いない。
「にーちゃま! ノルしゃん! ねーちゃまを頼みましゅよ!」
護衛は多いに越したことはないのだ。
くるりと振り返ると、同じクリセニア学園のブレザー姿の兄様とノルディークが立っている。
二人共、家族の贔屓目を引いても余りある美形だ。眼福。
思わず手を合わせて拝んでしまったらば、思い切り変な顔をされた。
「えぇと、シャナとレオノーラのそのスカート丈は…」
兄様がその辺りを口にしようとするので、私はすぐに飛び上がり、兄様の革靴の上をこの軽い体重全てで踏みつけた。
「ぬあ!」
「まぁ、兄しゃま、いかがいたしましゅたの? ホホホホ」
思い切り涙目で睨まれた。
やぁねぇ、女子のスカート丈改造は現代っ子の当たり前の風習よ。止めちゃダメなのよ。
冬場にこれやってるとどんどん足に脂肪が付いて太くなるっていう恐ろしい罠が控えてるけどね。
ちなみにこれはおばちゃんになった佐奈の知識よ。
「シャナ…」
ノルディークは呆れ顔で私を見やる。
「学園のファッションリーダーは姉しゃまでしゅ」
胸を張って答えると、その私の体がふわっと浮き上がり、私は驚いて目を丸くする。
すとんと大人の男の腕に座らされ、私を抱き上げた人物を見れば、わずかに仏頂面のディアスが立っていた。
彼も学園の関係者だとわかるよう、クリセニアのエンブレム入りの教師用ローブを着ている。
某映画の教師陣のようだ…
「おはようごじゃいましゅディアシュしゃん」
「おはよう。それより急がないと遅刻だろう? 何をのんびりしている」
おぉ! 初日から遅刻なんて考えられない!
私達は慌てて馬車に乗ると、そのまま揺られて学園へと向かったのだった。
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まぁね、予想はしてましたよ。
何って、ここは兄様も姉様もノルディークも、果てはディアスまでもがいないお子様だらけの幼等科。つまり、見渡す限りのおちびさん地獄!
美少年・美少女はどこ~!!
いっそ一部のおちびさん同様に泣いてしまおうかと思ったけれど、よく考えたらここは畑なのよ。
つ・ま・り いい男と可憐少女を生み出す農場なのよ。
てことで…
「全力で遊び倒して体力からつけるのでしゅ!」
筋肉を作る為のプロテインはないし、3歳4歳にそれは酷なので、体力作りから始めることにした。
幼等科のお仕事は一日お遊戯だからね。
そういうわけで初めは鬼ごっこから始めたのだけど…
子供って夢中になると体力底なしなのね…
「「「ちゅぎはしぇんしぇーが鬼ー」」」
子供達が無邪気にへとへとになっている幼等科のお兄ちゃん先生を指さす。
「こ…今期の子供はなんでこんな元気なんだ…そしてこのエンドレスな遊びは何…?」
う~ん。さすがは貴族が多いクリセニア学園。教員も貴族から抜擢されるものが多く、おまけに幼等科とあって文官風な教師であるお兄ちゃん先生はすでにばてていた。
ごめんね、鬼ごっこなんて、誰かが終わりにしようと言わなければ終われないものを教えたのは私です。
ですが、将来の筋肉と、少女達のガッツを鍛えるためにここは心を鬼にして、教師も巻き込みますよ、私は!
覚悟してね。むふっ




