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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
始まり編
15/160

15話 禁止令

 美少年ノルディークとママンの挨拶も無事終わり、なんだか少しカリカリしているシェールがノルディークの使い魔であるほぼ黒に見える紺色の髪と赤い目の使い魔クラウと睨みあった翌日・・・


「ゆきゃー!」


 私と言えば、朝から絶叫!

 雪が降ったわけでは決して無い。


 シャナ・リンスター3歳。品行方正、才色兼備、非の打ちどころもない美少女(自分を称えてみたかった)。ここにきてまさかの・・・・


 ばさぁっと布団から起き上がり、布団にジワリとしみる水の染みに顔が真っ赤になった。


 まさかのおねしょ~!


「しょ…証拠隠滅でしゅっ」


 布団と自分の服を丸ごと魔法でお洗濯。

 

 洗浄、すすぎで一度水を消し、次は乾燥…と考えたところで、おかしな現象が起きた。

 目の前に、水が膜を張ったのだ。


 いや、よくよく見れば目の前じゃない。自分が水球にベッドシーツと共に沈んでいた。


「ごぼごぼごぼっ(ちぬ~!)」


 パニックになりながらも原因は何っ!?と検索をかければ、出てきたのは


 魔力の暴走


「ごぼっ(ちょんにゃ~!)」


 魔力が暴走するなんて話は聞いておりませんよっ。兄様の勉強本にも載ってなかったし!(載っていたけど読んでいないだけ)

 がぼがぼ必死にもがくものの、泳いだことのない体はうまく水をかくことができず、しかもシーツが巻き付いた。

 それでも水球の外に出ようと必死にもがいたが、3歳の体力ではあと一歩という所までしか行けずに…。


 バッドエンド・・・・


_________


「こんの馬鹿チビが!」


 呼吸も止まり、ぼんやりと水球の中で漂い、ゆっくりと心臓の音が止まっていくのを耳に、何も考えずにいると、ざばっ!と音がして私の体がひんやりとした外気に触れた。


 ぼんやり見える怒ったような顔は…シェールかなぁ。

 死に際は愛する人が良かった…


「息をしろ!」


 息かぁ…息ってどうやってしたかな…

 息…息!


 ぐっと良くわからない場所に力が入り、がはっと水を吐き出した。


「げほっ、げほっ、ぐほぅっ…ぜひゅぅぅぅぅ~っ」


 思い出したよ息…。何とか自力で。


 ぜーはー言いながら絡んだシーツをはがされ、シェールに背中を撫でられていると、バタバタと足音が響き、部屋に飛び込んできたのはノルディークと使い魔クラウだ。


 恐らく二人は私が暴走させた魔力を感じ取ったのだろう。部屋に入るなり辺りを見回し、びちょぬれで床に転がる私と、その横で背中をさするシェールを見て、何やら思案した後、クラウがパチリと指を鳴らし、全ての水を消し去った。





「なぜ水の魔法が暴走を?」


 シェールが首を傾げ、私はその経緯、つまりは原因となったおねしょを思い出して口を閉ざした。


 こんな恥ずかしいこと、死に掛けたけど言えません! お口を貝にいたします!

 

 両手で口を塞いでシェールとノルディークを見つめていると、ノルディークはどうやら別の方向へと推理を始めた。彼曰く、私は悪夢を見て魔力を発動させたのではないかと。

 そんなノルディークに希望を見出した私がコクコク頷けば、それを見たシェールがしばらく天井を仰ぎ見てから、ぽつりと一言。


「おもらし?」


「ちぎゃうぅぅぅぅぅぅぅ~!」


 羞恥とパニックとで私が大泣きすると、騒ぎを聞きつけたのか、部屋に兄様と姉様、それにママンが駆け込んできた。

 

 兄様とママンがエプロンをしているところを見ると、朝食の準備中だったらしい。


「何の騒ぎっ?」


「にーじゃまぁぁぁっ、じぇーるがいじめりゅ~っ」


 一度泣き出すと止められなくなるのは転生前と同じなんだなぁとなぜか心は冷静だが、大泣きが止まったわけではなく、そんな私を見て誤解を受けてはたまらないとシェールが顔をしかめて経緯を話した。

 

 原因はおもらしだろうと言われましたよっ! 事実だけどね! しかも確認とられて自ら頷いちゃったけどね!


 そして、ノルディークが魔力の暴走について告げた。


「魔力の暴走なんて…」


 ママンの顔は真っ青だ。


 魔力の暴走は幼い子供に起きた場合、死に直結する危険なものなのだ。

 かくいう私もシェールに救われなければ危険だった。


「ジェール…ありあと」


 ぐずぐずと啜りながらお礼を言えば、シェールは耳を赤くしてそっぽを向いた。


「たまたま部屋の前を通りかかって挨拶しようとしただけだ」


 照れる少年がちょっと可愛いとか思ったのは秘密だ。


「魔法を使えるけれど、経験が低い分全力で魔力を使う傾向にあるってことかもしれません」


 ノルディークは暴走した理由を推理して告げた。

 つまり、私が魔法を使うと、いつも全力で挑むことになり、中途半端に威力の弱い魔法は暴走させてしまうということらしい。


 水の魔法の暴走はそういうことですか・・・。


「経験を積めばよいでしゅねっ」


 ではいざ、と魔法を使おうとしたその手をノルディークが止めるように掴む。


「知識と経験は共になくては駄目だよシャナ。君はそういった機関で学ぶ必要がある」


 それは、つまり?


「俺達と同じ学園に入れってことか…?」


 ・・・・・・


 入学フラグがキター!


 きらーっと目を輝かせると、兄様がぎろりと私を睨んだ。

 ハイ、すみません。勝手に魔法使ってごめんなさい。調子に乗ってごめんなさい。


「シャナ、我が家で魔法使用禁止」


 兄様にずばりと言い渡され、私はがくぅっとその場に崩れ落ちた。


「しょんなぁ~」


 せっかくチートになったのにぃ~・・・・



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