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守護塔で引き籠ります!  作者: のな
始まり編
13/160

13話 戦争介入!?

大人の生肌~


「むふふふふふふ~」


 ピトリとノルディークの胸に頬をつけ、貧血で夢心地になりながら、私の心は素直に彼に答える。

 いや、気持ち悪い笑いが答えじゃないよ。傷を癒され、ぐったりなこの状態になってから、実は私の生い立ちについて尋ねられているのだ。


 ちなみに私が転生を果たした人間ということは伝えました。

 これは俗に言う尋問というやつなわけだけど。幸せだからいいの~。


「それじゃあ、シャナは今」


「体は3しゃい。心はアラフォーでしゅ」


「アラフォー?」


「アラウンドフォーティでしゅよ。お・と・な・でしゅ」


 むにむにと頬を歪めて擦り寄る子供はどう見ても3歳の幼い子供に見えるようで(変態過ぎて3歳だと思い込みたい)、ノルディークは奇妙な表情を浮かべた。


「…気にしすぎのようだね。僕はあんな状態でシャナに継承を行ってしまったから、ひょとしたら選択を間違ったとか、精神異常を引き起こしたのではないかと思ったんだよ」


 失礼な! とはいえ、精神異常なら佐奈の時代から起きていると思うのよ。

 酔っ払うと、よく同僚の人々の服の下が気になってじじじぃ~っと観察してたから。

 彼氏は長いこといないし、30代で餓えてたのよね。その餓えが転生しても引き継がれるとは思ってもみなかったけど。


「は~。幸せでしゅ」


 いや…人肌が恋しいのはひょっとして子供だから? 抱っこをせがむ子供よろしく、ぴたりとくっついていたいお年頃なのかも?


 真剣な表情で一瞬だけ悩み、再びうにゃっと表情を崩して至福を味わう。


「それに、いくら力の契約をしても、普通は同じだけの力を使うことはできない。なのに、多分僕は前と同じだけの力を行使できると思うんだ」


「それは良かったでしゅね~」


 それがどれほど異常であるかを確認せず、私はそういえばと疑問を口にする。


「しぇんしょーが飛び火したってにゃんでしゅか?」


 言葉も体もグズグズだけど、そこそこ頭は動いている・・・と思う。

 とりあえず、塔の裏事情を聞いておくことにした。

 記憶を読めば済むけど、記憶を読むとたぶん3歳にはよく呑み込めないような記憶が巡りそうなので、話を聞いてからしまってある記憶は整理することにする。


「世界に塔がいくつかあるのは知ってるよね?」


「赤と、青と、緑、白、黒」


 浮かぶ塔の映像の色を答えれば、ノルディークはコクリと肯いた。


「そのうち赤の守護者が狂ったんだ。長く生きていれば何百年か何千年かにおこることなのだけれど、彼は精神を蝕まれた挙句、その怒りの矛先を守護すべき人間達に向けたんだ」


 顎を彼の胸につけ、彼の方へ顔を向けた私は、その眉間によるしわを見つめ、美形がもったいないと感じながら先を促す。


「彼の望みは大量殺戮。僕は狂ってしまった彼を粛清するために塔を出て、かなりの手傷を負い、力が尽きかけていた」


 塔で出会った時の彼がよたよたしていたのはそんな理由だったらしい。

 何年、何百年と生きていたならば、確かにいつか狂うかもしれない。

 そこにハーレムが無ければ…(シャナが狂うならこの理由らしい)


「しょの人と戦争とどう関係しましゅ?」


「彼は、己の国の兵士達の心を狂わせた。今ヘイム公爵が戦っているのは、心の狂わされた兵士だということだよ」


 つまり。戦争は塔の関係者によって引き起こされたにもかかわらず、塔の関係者であるから戦争には介入できず、パパンとおっさんが危険な目に合っているかもしれないと…


「だめでしゅね~」


 私は呟くと、がぶうっとノルディークの首筋に噛みついてやりました。


「いっ!」


 ちょっと歯形が残るかもですが、まぁ、これくらいにしておいてあげましょうかね。

 

「わたちの世界にはこう言う格言があるのでしゅよ」


 そういうと、私はびしりと人差し指を突き付け、真剣な表情で伝える。


「自分のけちゅは自分で拭け、でしゅ」


 う~む…この格言を言ったのは私の悪友だったろうか…。かなり女子力が下がる格言だと当時は二人して笑ったものだ。

 女も35過ぎるとおかしくなるのよね…。ん? もともとだったかな?


 ノルディークが呆気にとられる横で、よろよろと私は起き上がってベッドの端に座り、両手をそろえて上に向け、そこに水晶玉のようなサイズの透明の玉を出現させた。


「シャナ? 一体何を」


 水晶玉の中に映るのは、広い草原地帯だ。そこには、負けているのに戦いを挑んでくる敵国の兵士と、かなり疲弊した自国の兵士が何十人も確認できる。

 私はそこに、強い風を発生させ、狂わされた敵国の兵士の暗示を解く魔力を乗せた。


「シャナ! 塔は人間に関与できない!」

 

 咎めるように告げるノルディークを一睨みし、私は水晶に向かって声を放った。ただし、ノルディークの声を借りてだ。


『我はちろの塔の主。人間よ、この戦いはちくまれたものである。いましゅぐ剣を引き、己が国に帰るがよい。しょして、我が目の黒いうちはこの地での戦いをいっしゃい禁じゅると己が王にちゅたえよ』


 戦場に響いた声に戸惑う兵士たちの姿が水晶に映し出され、敵の兵士は我に返ると次々と剣を手から離す。そんな姿を見て、私は水晶を消した。


「塔のふしまちゅは塔で終わらせる…あり?」


 格好良く終わったはずなのに、ノルディークを見れば、彼はベッドに突っ伏してふるふると震えていた。

 

 これは…


 もしや…


 笑ってる…?


「あにょ~?」


「ぷっ…く…あはははははははは! 僕の声でちろの塔って…」


 …そういえばさしすせそと、たちつてとがまだうまく発音できてないんでした…。



 どこか決まらない塔の主のスピーチを思い出し、私はガクリと項垂れたのだった。


 

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