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臆病者の恋  作者: 苑生
2/17

25歳独身の苦悩

日に日に悪化していく自宅の惨状は、充分理解している。


高校を卒業し有名私立大学を好成績で卒業した藤田は、一流の商社へ就職した。

順調過ぎる仕事は多忙を極め、残業が無い日の方が珍しい。休日も持ち帰った仕事に追われる日々を過ごしている。辛うじて洗濯だけはどうにかしているが、食事は店屋物か外食、散らかり放題のゴミは溜まっていく一方だ。

正直このままではテレビで見たゴミ屋敷になりかねないし、衛生面にも不安を感じている。

荒れ果てた部屋を眺めていると、自然とため息が漏れた。

藤田はこの由々しき事態を招いているのが、仕事だけではない事もしっかり心得ている。

さほど広くない1LDKに越してきた当初、独り暮らしがどれだけ大変か分かっているつもりだった。その上で何とかやっていけると思い、心配する家族を説き伏せて家を出たのだ。しかしふたを開けてみると、自分の生活力の無さを目の当たりにして愕然とした。

これでは、何時両親に連れ戻されてもおかしく無い。

分かってはいても、努力する暇さえ無く八方塞がりなのだ。

どうにかしなくては。

そう思いながらまた一日が終わっていくのであった。



何時もの如く忙殺されそうな仕事から解放され、帰宅したのは午前一時を回っていた。

また食事もせずシャワーを浴びて寝るのかと思うと、やるせない気持ちになり疲れがどっと増す様だ。

リビングのテーブルに郵便物をぞんざいに投げ出すと、一枚の広告が目に入った。

『巽サービス』と大きく書かれたそれには、すぐ下に便利屋・代行業と添えられている。ふと気になって、その胡散臭そうな雰囲気のする広告を手に取った。

ペットの散歩から庭の草刈り、はては結婚式の友人代行に墓参り代行―これが仕事になるのだと感心する様な内容が列挙されている。安っぽい印刷の広告をしげしげと眺めていると、気になる言葉が目についた。

家事代行―その四文字に心が揺れつつも、見知らぬ人間に留守宅を預けるのかと言う葛藤もある。

しかしこのままでは生活が立ち行かないのも事実だ。


(行くだけ行ってみる、か…)


明日の仕事は早めに切り上げて行動を起こそうと決め、広告を通勤鞄にしまう。

そうと決まれば明日に備えて休まなくては、と思って思考を止めた。

まだシャワーを済ませていない事に今更気づいて、深いため息が漏れる。



疲れて重たい体を横たえたのは、午前三時を目前にした頃だった。





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