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国境で、以前の様にメタナ国のレリマに葵を引き継ぐ。

「レリマ殿、今度は1年と長期になるのだからくれぐれも頼みます」

「クリス殿、心得ている、あ、ご紹介しよう、我が国の王太子レグルス様だ」

トゥス国の馬車が国境に近づいてきたら、馬車から降りてレリマが待っていた。

そこに、葵を馬車に残したまま、クリスが先に降りて、レリマに念を押しに行ったのだ。

「初めまして、メタナ国王太子レグルスです」

「お初にお目に掛ります、トゥス国護衛騎士のクリスでございます」

レリマに紹介された王太子レグルスがクリスに挨拶したので、クリスも丁寧な礼をした。

「早速巫女殿を連れて来る」


そうして、自国の馬車に引き返すと、扉を開け、葵をエスコートした。

そのまま、手を取り、レリマ達の所まで来る。

「初めまして、巫女殿、レリマ国王太子レグルスです」

「お初にお目にかかります、巫女の葵にございます」

葵が深く礼をして挨拶する。

「巫女殿には先の巡礼では父や民が大変失礼しました、本当に申し訳ない、今度はその様な事が無い様に私が迎えに参りました、主要な地域には共に参ろうと思っている」

レグルスは葵が安心するように、穏やかな笑みを向けた。

「ありがとうございます、大変心強いです」

葵もほっとした笑顔を向ける。

「それはとても心強いですね、感謝致します」

クリスも葵の後ろで力強く話す。

「ええ、巫女殿の口添えで貴国からもらった寒さに強い穀物のお陰で我が国は飢饉には至らなかった、そう、主張して父上を黙らせた」

片側の口角を上げた笑みは含みがある様に見えるレグルスだった。

「そうですか、何より民が飢えなかったのは良かったです」

葵は率直な感想を述べた。

「領民の食を満たせるか否かは影響が大きいですからね」

「ああ、飢えは不満と繋がっている」

クリスもレリマも考える事は同じだ。

「では、参りましょう、巫女殿」

レグルスが葵に手を差し伸べる。

「クリス様、いってまいります、後の事、よろしくお願い致します」

「葵殿、お気をつけていってらっしゃい」

葵がクリスに礼をするとクリスも笑顔で見送ってくれる。

その流れで葵がレグルスの手をとった。

「確かに巫女殿はメタナ国のレグルスがお預かり致した」

レグルスがクリスに向かって言う。

「レグルス様、よろしくお願い致します」

クリスが深く頭を下げて礼をする。

そのままメタナ国の馬車に乗って王宮に向かって行った。

馬車が見えなくなるまで、クリスは見送り、自国の王宮に戻って行った。




「葵殿、王宮ではこちらの部屋を使って下さい」

王宮に着くなり、レグルスにエスコートされて辿り着いたのは、王太子の私的な場所の客間だった。

これで既に前回とは待遇が違う。

侍女として紹介されたのは前回にもお世話になった王妃付きの侍女の方もいたが、新しい方もいる。

そして、人数が多い。

護衛もレリマの部隊だけではなく、レグルスの護衛候補の中からも選抜してくれていた。

既に護衛になったものをレグルスが巡礼に参加しない時に付けるのは、王太子妃候補に対して言い訳がし難いので止めたらしい。

それはそうだと、皆が苦笑していた。

「様々なご配慮ありがとうございます、とても快適です」

ここまで良くなっているとは思っていなかったので、葵は本当に嬉しかった。

しかも今回は国王の謁見は無いらしい。

それは楽だと思ったのは内緒だ。



1週間、皆と打ち合わせや予定調整などしている隙に、王妃からお茶に招待され、メタナ国のお菓子やお茶を味わったり、ちょっぴりだけどメタナ国での女性の扱いが良くなってきた話など、王妃も楽しそうに話していた。

そして、最初の地域はレグルスも同行する事になっているので、一緒に出発する。

見送りは勿論、王妃一人だ。

「巫女様、いってらっしゃい、無理はしないでね、レグルス、しっかりね」

嬉しそうに見送っている王妃は少しはしゃいでいるようにすら見えた。

「いってまいります、王妃様もお健やかに」

「いってまいります、母上も無理はなさらないで下さい」

二人揃って挨拶をすると、レグルスが参りましょうかと声を掛けて、出発となった。




流石に王太子が同行しているとなれば、医師の元に行っても、民が集まった場所でも、反響は違った。

医師など、思っているのか思っていないのか、わからないまでも感謝の意を示してくる。

民も、『質問』をする事はあっても、『暴言』を投げつけてくる者はいない。

「随分違いますね」

王太子がいるので、宿泊もしっかりし所だ。

宿に戻って、その日の反省会と翌日の確認と言う名目で夕飯の後に数名で集まったところで葵が一言漏らした。

「そう、ですね、王太子殿下がおられる効果が覿面(てきめん)ですね」

レリマは苦笑いしか出来なかった。

「申し訳ない、前回はそれ程酷かったのか」

レグルスは葵の言い方に前回を想像すると背中を冷たいものが落ちて行った。

「いえ、元々、信じていたものを覆されているのではないかと、疑心暗鬼のところに全く新しい考えを聞くのですから、反発はあるものです、それが攻撃的になるか論議的になるかの違いかと思います」

「だが、葵殿は巫女殿として教えを説いているのだ、聖女様は崇めて巫女様は崇めないとはおかしいだろう?葵殿も光の癒しは行っているのだから」

「それでも、聖女様は信仰についてとやかく言いませんし、他の神様の話もなさいませんし、民にとっては全く別者に見えるのでしょう」

「治療してもらっておいて、勝手な・・・」

眉間の皺が話している間にどんどん深くなっていくレグルスと、からからとどんどん笑い始める葵が対照的だった。

「この王太子殿下効果がいらっしゃらない時でも発揮される事を私としては祈ります」

静かに横でレリマが二人に話す。




レグルスは始めの地域から次の地域に向かう途中で王宮にもどり、後日合流する手筈となっている。

2番目の地域はまだ良かった。

恐らく隣接していたので、王太子殿下が同行されていた、と言うのが漏れ伝わっていたのだろう。

だが、3番目の地域は、レリマの心配通り、前回同様、反発が酷かった。


面倒になったのが、葵の話に納得した様に見せかけて、葵に近づき殴り掛かろうとする者が現れた事であった。

レリマがすぐ側で護衛をしていたので、葵は被害に合わず、レリマが払い除けて転がったところを他の護衛が取り押さえて、詰所に引き渡した。

ところが、女性が襲って来た時にはまさか女性がとレリマも思ってしまい、レリマの一歩が遅れた。

咄嗟に葵も身を引いたのだが、頬の上辺りに爪が当たったらしく小さな傷になってしまった。

小さいが少し深かったようだ。

その女性はその場で取り押さえられ、後日、処刑された。

巫女様に傷をつける者は即ち、国家に対する反逆罪であると、王太子が命令を出したらしい。


葵はそこまでしなくてもと思う事もあったが、では、他者を攻撃する者を放免とするかと、問われれば、それは自分と考えの違う人に攻撃をしても良いとみなされ、それが戦に繋がったのではないかと思い、刑を執行するのは致し方ない事と思う様になった。

量刑はまた別の話だが。



他者を認めようと説いているのだから。

出来るだけ、目に見える様に警護を強化するのではなく、一定の距離を保つようにしながら民との対話を重ねた。

王太子が来るような地域は理解が広まりやすいと気が付いた。

それは、やはり、地域の特性があったのだ。


比較的他の地域と交流があるような地域だったり、食べる事に困る様な地域ではなかったのだ。

食は重要な事とあらためて葵は痛感した。

「レリマ様、反発が大きい地域は貧しい地域が多いのではないでしょうか?」

葵は揺られる馬車の中でレリマに問い掛けた。

「葵殿もそう思われるか、私もそれは感じていた、北の穀物が育ち難い地域だけではなく、点在しているのも気になっていたのだ」

「そうですね、北の方の地域でも、領民の皆さんが明るい地域がありましたね、それ程豊かには感じなかったのですが、皆さんに比較的緩やかに受け入れてもらったので、返って不思議に思っていました」

「そうですよね、あそこは昔からの公爵領なのですが、当代当主は代替わりしてまだ若いですが、先代が早くに亡くなって、先々代が復帰していた時期がありました、先々代は気の良い爺様でした」

レリマは眉間に寄せていた皺が消え、今度は思い起こすように首を捻りながら答えていた。

「そうですか、代々治めているとどうやって皆で協力して北の領地での生活を乗り越えて行くかご存じなのでしょう、領民の皆さんの性質も同調してくるのでしょうか?」

今度は葵が首を傾げて答えた。

「そうかもしれません、代々治めていれば、収穫もそれによる収入も予想がつくので、どうすれば税率を上げずに済むか、先に検討するような領主なら領民も従いやすいでしょう」

「そうですね、だから皆さん明るく迎えてくれたのでしょうか、そもそも信仰とは別に特技が違う皆さんで助け合いをしていたから、お話をすんなり聞いて頂けたのかもしれませんね」

葵も妙に納得していた。



それからも、地域によっては隙を突かれて襲われかける事も何度かあったが、手足に多少痣が出来る程度だった。

それでも、襲ってきた者は全て捕獲され、処刑されていった。

前回のおよそ倍の期間だったが、痣など前回に比べれば少なかった。

やはり厳罰に処せられたという事実が大きかったのだろう。

警護の在り方も良く練られてきたので隙も無くなった。



薬もトゥス国の王妃が持たせてくれた物があったのでそれを使った。

少しずつだが、意識が変わってきてくれているように感じる事も増えた。

「レリマ様、今回は何とか無事に済みましたね」

漸く移動の馬車に乗れば安心する葵だ。

「はい、葵殿が癒しを施して頂いている価値が漸く伝わりましたかね」

レリマも護衛でありながら、馬車に乗っていて、周囲は部下が護衛しているので、束の間安心する。


「どうでしょうか?癒しも大事ですが、ギー神様以外にも神様がいるという事に興味を持ってもらえるようになった気がします」

「そうですね、海の神様と山の神様は仲悪いだろうと聞いてきた子供には驚きました」

レリマも思い出したのか、瞳を大きくして瞬きを繰り返す。

「ええ、海の神様と山の神様は遠いから会った事ないから仲悪い、と、壮大な自然を神様と思ったのに、行動は人の尺で図るのですものね」

葵は苦笑していた。

「遠いと会えないという考えは子供ならなのでしょうが、神様は何でも出来るという事から始まっているのに、出来ないと言ってしまう、その矛盾に気が付いていない」

レリマはやや眉頭が寄り始めた。

「言葉を変えて問い直しても中々矛盾に気が付きませんでしたね」

「あんな子供でも既に先入観があるのでしょう」

「そうですね、出来るだけ子供には自由な発想を持ってもらいたいですね」

「この巡礼を機会として欲しいですな」

葵もレリマもお互い頷いた。


如何でしたでしょうか?


ちょっと、良くなってきました葵への反応。

ちょっとですけど。


良ければ、お☆もよろしくお願いします。


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