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メタナ国の巡礼はトゥス国の巡礼よりも苦しかった。

トゥス国の巡礼と同じ様に地域に行って、医師の元に行き癒しの力を発揮する。

そこまでは同じ様に進めているかの様に見えた。



癒しの力で怪我や病が良くなる事に病人から感謝はされるが、医師からは当然の様に思われる。

彼らは医学を学んだという自負があるが、聖女はたまたまその力を天からもらっただけだから、人のために使って当然と思うそうだ。

「力を使うと負荷が掛かりますけど」

葵は試しに言ってみたのだが、返ってきた言葉は酷かった。

「天からもらった力を使えないのなら何故もらった」

「望んでもらった訳では無く、そちらが望まれて呼び寄せられたと聞いております」

「間違って来た者に用は無い」

「私が来たのでは無く、貴方方が呼んだのです」

「呼んだ覚えは無い」

「間違えて呼んだのであれば、それは私ではなく神官の方に言って下さい」

医師と揉めても意味が無い事はわかっていたのだが、あまりの理不尽さに葵も言い返してしまった。


「医師達と巫女殿は役割が違う、医師達はこの地域に根差して日々民の病や怪我と向き合う、巫女殿は聖女様の様に癒しの術を持ってはいるが、ここにずっと居られる訳では無い、それに、今回は終結させた立役者としての役割の方が大きいのだ、そこを弁えてくれ」

両者が熱くなりすぎる前にレリマが割って入った。

「申し訳ありません、レリマ様」

葵が一歩下がってレリマに頭を下げた。

「いえいえ、巫女殿は悪くありません、我らの祈祷にお応え頂いただけですから」

レリマが穏やかに答えた。

医師達は黙ったまま立っていた。

「巫女殿の主な役割は癒しではないのだ」

レリマが医師達に向かって言うと、医師達は頷いてそれぞれの持ち場に戻って行った。




集会場の様な所で葵が神についての話をする。

トゥス国の巡礼の時に話していたものと同じ話である。

癒しの術で治してもらった者や、その地域に住んでいる者達である。



私がいた国では『八百万の神々』と言う言葉があります。

これは数多くの神が存在するという意味です。

この小石一つにも神が宿ると言われています。

神々を身近に感じて、そして敬い尊ぶのです。

個々の神がそれぞれに秀でているので比べるものではありません。

どの神様も同じ様に尊い神様ですから、同じ様に敬うのです。

それと同じ様に私達人間もそれぞれ違うのです。

だからその違いを認識して、お互いを敬うのです。

違う神様を信じている人でも、自分と違うと言うだけで排除するのでは無く、違う事を違うと認識すれば良いのです。

戦う事はありません。

貴方は貴方の信じる神様を信じて、その教えを守り、神に祈り、暮らしていけば良いのです。

貴方が心を籠めて貴方の信じる神様にお祈りをする事を貴方の神様は望んでいらっしゃると思います。

他の神様の事は貴方が思う程、貴方の信じる神様は気にしていらっしゃらないと思いますよ。

貴方の神様は貴方を見ているのですから。

寧ろ、貴方が他の神様に意識を向けている事の方が、貴方の信じる神様は寂しい思います。

だから貴方が貴方の信じる神様に一心にお祈りしてくれる方が喜ばれますよ



レリマ達護衛がいたので、一通り話せたようなものだったかもしれない。

葵が話終わって口を噤んだ瞬間。

「ギー神様以外、神がいる訳ないだろう」

「ギー神様は何でも出来るから唯一なのだ」

「聖女が神を裏切るのか」

「ギー神様を信じないから隣国は不幸になるのだ」

「小石とギー神様を一緒にするなんてギー神様への冒涜だ」

「ギー神様の事を知りもしないくせに」

「ギー神様と人を一緒にするなんて、有り得ない」

会場の民の怒号が矢の様に葵に降り注がれた。

拳を振り上げる者、甲高い声で叫ぶ者もいる。


そんな中、葵の透き通るような声が響いた。

「ギー神様はお一人で寂しくないのでしょうか?」

「ギー神様は何でもお出来になっても、手が足りない事は無いのでしょうか?」

「私はギー神様も尊敬しております」

「トゥス国にはトゥス国の良さが、メタナ国にはメタナ国の素晴らしさがあります、全てを比べる意味は無いと思います」

「北にある大きな山なら良いのでしょうか?ギー神様の偉大さは目に見えない計り知れないのではないでしょうか」

「皆様はギー神様のどんな事をご存じですか?」

「一緒ではありません、神には神の人には人の(ことわり)があります」

矢の様に飛んでくる暴言を、剣で弾き返す様に言葉を重ねる葵。

その凛とした気高さが徐々に場を鎮めていった。


「何よりも大切に思っている貴方方がギー神様に祈りを捧げる事が大事なのではないでしょうか?」

静かになった会場に今度は和かな葵の声が通る。

「お祈りはいつもしている」

最前列に居た者がぼそぼそと言う。

「きっと、ギー神様はお喜びになっています」

発言した者の目を見て言葉をかける葵。

「でも、ちっとも暮らしは楽にならない、だから、トゥス国のやつらを従えれば、ギー神様が良くしてくださる」

応えてもらったので気を強くしたのか、本心が出て来た。

「でも、ギー神様は本心から思っていない様なトゥス国の民の祈りは喜ばないのでしょう」

「本心からさせれば良いんだ」

「外見からはわかりません」

「洗脳してしまえば良い」

「それは既に本心ではありません」

葵は間髪入れずに言葉を重ねる。


「・・・なら、どうする」

途惑いが発言者の一瞬の躊躇いを生んだ。

「トゥス国よりもらい、寒さに強い農作物に代えればよろしいのではないでしょうか?」

穏やかな笑みを向けてはっきりと告げた。

「そんな・・・」

やった事も無い様な事を言われ戸惑いだけを感じる発言者の声は小さい。

「ギー神様に御供えする物が増えますよ」

あくまでも明るい笑みを向けている葵だった。

手段が無い訳では無いとわかると人々は違和感を残しながらも、何と無く『大丈夫かもしれない』と思うのか、和やかに流されていった。

少数の者は受け入れられないと騒いでいる様だが、そのくらい少数になると、レリマ達部隊が力づくで引き連れていった。

時間が掛かる者は何処にもでもいる。




やはりメタナ国の方が、精神が削られていく。

言葉も選ばなければならない。

強くても弱くても通じない。

レリマ達の部隊が護衛についていてくれたが、貧しい地域ほど反対者は多く、隙間を縫う様に投げられた石に当たる事もあった。

大きな怪我にはならないのだが、手足や肩に小さな痣が出来る事もあった。

そんな状況下で、食は細る一方だった。

毎回の様な医師達とのやり取りも原因の一つだった。


巡礼の終わりが見えてくると、あの国王へ最後に報告に行かなければならない事を思い出し、憂鬱だった。

王宮に戻ってくれば、『やはり』と思うような態度の国王だったので、早々にトゥス国へ向かった。

何とか半年が過ぎてくれた、と、国境へ向かう馬車の中で、葵はぐったりしていた。

如何でしたでしょうか?


何だかなぁ~とも思うのですが・・・

書いてみたかったのです。


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