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何と無く、想っている事をかいてみました。


お気に召して頂けましたら幸いです。

よろしくお願いします。

「「聖女様だ」」

「「聖女様が降臨された」」



光に包まれたと思ったら、たくさんの騒めきに囲まれた。

「えっと」

座り込んだまま、顔をあげて辺りを見回した。


「聖女様、我が国へようこそお越しくださいました」

「いえ、我が国へおいで下さいましたのですよね」

「あの」

言っている言葉は聞き取れたが、服装は見たこともないもので、髪の色も皮膚の色も少し違う。

「何を言っている、我が国の祈祷が通じて降臨された聖女様だぞ」

「いいや、我が国の祈祷にお応えされておいでになったのだ」

口々に大勢の人々が言い争っている。



「わ、私は聖女ではありません!巫女です!」

そんな中、両手を固く拳にして立ち上がって叫んだ。

人々がその声に驚き、静けさが広がった。

「私は聖女ではありません、巫女です」

もう一度言葉にして辺りを見回す。

「えっ?聖女様ではない?じゃ何故ここにいる?」

「お前の国の刺客か?」

「否、お前の国の刺客だろう?」

人々が騒めき始めた。

ずりずりと後退りを始めた巫女は怖かった。

聖女でなければ殺されてしまうかもしれない。

でも、自分は既に聖女では無いと言ってしまった。



「静まれ」

周りの兵士より位が高いのか、一人の若者が言い争っている間をかき分けて巫女の前まできた。

「貴方は聖女様ではないと?」

「ええっと、聖女とはそもそもどの様な?」

「ああ、異界からきたから言葉の意味が違うということか」

その声を聞いて周囲から安堵の空気が漂った。

「聖女とは我らの祈祷により異界から降臨された女性、その慈悲と癒しの魔力に寄って民に寄り添うお方です」

目の前の位の高そうな男性が説明してくれた。


「あの、たぶんですが、私の元いた世界とここはかけ離れているのと、ここに来る記憶が無くて突然だったので、『祈祷により異界から降臨された女性』はあっていると思います、『魔力』とはどういうものでしょうか?そう言うものは以前の私は持っておりませんが?」

目の前の男性は物腰柔らかに話してくれるので、率直に聞いてみた。

「手を翳してみて頂けますか?」

「こうでしょうか?」

男性が自分の掌をゆっくり差し出すとその上に自分の掌を翳してみた。

白っぽい柔らかな光が丸みを帯びて出て来た。

「「おおー」」

周囲で感嘆の声が上がる。

「これが癒しの魔力です、貴方は持っておりますね」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、間違いありません、私の掌から感じます、温かで痛みや疲労が薄れていきます」

「どの辺で止めたら良いのでしょうか?」

「ああ、申し訳ありません、もう良いですよ」

「あ、ありがとうございます」

巫女はさっと手を引っ込めた。



「貴女はこちらの世界で言う『聖女様』で間違いないようです」

「そ、そうなんですか」

女性の目の前で、男性が片膝を付いて手を差し伸べた。

「聖女様、ようこそお越しくださいました」

ざざっと、後に続く様に男性の部下が膝を付いて頭を垂れた。

「ええっ、とぉ、どうすれば良いのでしょうか?」

小首を傾げて対応に戸惑う女性。

「否、貴公にそのまま聖女様を引き連れて行かれては困る、我が国の祈祷によるものなのだから」

突然、奥からかき分け、目の前の男性よりは年嵩な男性が来た。

「そう言われても、事の成り行きを治めたのは私ですから、我が国へ来て頂きます」

若い男性も立ち上がり聖女の前に立つときっぱりと言い切った。

「そうは行かない、そもそも、ここは国境、そちらが呼んだのであれば何故そちらの領土に現れなかったのかな?それこそが証」

「それであればそちらも同条件ではないか、国境に現れたのだからそちらの国とは限らないのだから、先に聖女様の手を取った私に分がある」

お互いにこの場で剣こそ抜かないが、睨み合いには殺気が籠っていた。



「あの、この状況はどういう状況なのでしょうか?」

自らを巫女と言っていた女性が口を開いた。

「そうでしたね、聖女様は突然の事で何もご存じないのですから、ご説明をさせて頂いた方がよろしいでしょう、お疲れでしょうから、我が国に来てゆっくりお休みになってから、説明致しましょう」

「そんな事は許さん、自国の都合の良い事ばかり伝えるのは目に見えているではないか」

「そんな事を言っても、聖女様は突然の事でお疲れだ、早めに休まれた方が良いではないか、聖女様に失礼だろう」

「ならば我が国でお休みになれば良い事だ」

「それこそ自国の都合を押し付ける気だろう、そんな事は許されない」

どちらも譲らず、(らち)が明かない。


「あの、あちらの木陰に座ってお二人の話をお聞きするのは如何でしょうか?それとお水があったら頂きたいのですが、ございませんでしょうか?」

渦中にある自分が声をあげた方が良いだろうと、(あおい)は提案した。

あまり人が居てもという事で、3人だけで木陰に移動した。

水は目の前にいた若い男性が手持ちの水筒からくれた。




切り株に若い男がハンカチを広げてくれ、そこに座る様にと促されて座った。

「改めまして聖女様、私はスー神信仰のトゥス国のクリスです」

若い男が先程と同じ様に片膝をついて名乗る。

「改めまして聖女様、私はギー神信仰のメタナ国のレリマです」

同じ様に年嵩の男も名乗った。

「私は葵と申します、聖女と言われますが、私は巫女として神に仕えていました」

失礼かと思ったが座ったまま挨拶をした。

「おお、異界でも神にお仕えとは」

クリスが感嘆な声をあげた。

「成程、道理で身のこなしが違うと思いました」

レリマも葵を褒め称えた。

「ですが、私が仕えていた神と貴方方の神では違いますよね?そこはよろしいのですか?また、聖女様と呼ばれますが、先程の魔力は本当に役立つものでしょうか?よくわからなかったのですが?」

葵が双方に問い掛ける。

「聖女様、そうですね、では先にお話しておきましょう、先程の癒しの魔力ですが、確かに書物に書かれていた歴代の聖女様より魔力は弱いかもしれません、ですが、ある事は確かです、白く光ったのが癒しの魔力の証です」

先ず、クリスが返事をした。

「私はそれを見てはいないが、そうなのか?」

レリマがクリスに確認する。

「レリマ殿の国でも聖女様に関する書物はあるだろう?それはだいたい、瀕死の重傷を負った兵士を癒したと書かれていないか?」

「ああ、そうだな、だいたい、死にかけていた将軍を助けた、と書いてある」

「そうだろう、我が国でもそうだ、だが、私が差し出した掌がそれ程の重症では無いから弱かったのかもしれないが、恐らく聖女様の魔力はそこまで強くは無いと思われる」

「そうなのか」

「勿論、これから、何か瀕死の重傷の者を目の前にしたら能力が開花されるという事もあるが、今は恐らく無い」

「そうか、でも、聖女様の存在自体が貴重だ」

「ああ、我が国でもそうだ」

二人は先程とは違って穏やかに話し合っている。

「あの、それ程魔力や癒しの力は重要では無いという事でしょうか?」

意味合いは理解したのだが葵は念を押した。

「いえいえ、あからさまに魔力が弱いと言えば差し障りがありますが、その存在の方が重要と言う事ですよ」

「成程、承知致しました」

クリスの説明に納得した葵だ。



「それで、ここからは我が国に関してのご説明です」

そう言ってクリスが話してくれたのは、スー神信仰のトゥス国の事である。

クリスの国では男性も女性も自由に学ぶ事が出来、仕事を持つ事も出来る。

ただし、王国で国は王が治め、貴族の身分制度があり、その範囲の中でという前提条件だ。

クリスの身分は高いらしく、権限もある程度あるらしい。

スー神様が唯一で、神への祈りも行事もあるらしい。

だが、神様に対して自分を犠牲にする事は無いらしい。


続けてレリマが話してくれたのは、ギー神信仰のメタナ国の事だ。

こちらも王国で国は王が治め、貴族の身分制度があると言うのは同じなのだが、自由度が違った。

身分に関わらず、女性は学ぶ事も制限されており、仕事を持つ事などもってのほかで、家から自由に外出する事もままならない。

出来るだけ肌が出ない様な服を着て、男性の後ろに控えている。

だから、力強く女性を抱え込める男性に嫁いだ女性は暮らしが楽になるが、そうではない所へ嫁いでしまうと女性の一生が左右されてしまう。

ギー神様が絶対的唯一で他の神は存在すら否定されている。

この世界はギー神が創造したものとされている。

ギー神の前では個人は犠牲になる事を(いと)ってはいけないらしい。

御身もギー神様に捧げられたものとして扱われるらしい。

そして両国はこの『唯一の神』が自国の神だと争っているらしい。

その両国の境界線が、葵が降ってわいたこの地らしい。

「何とも大変なところですね」

話を聞き終わって、真っ先に出て来たのは大きな溜息とその言葉だった。

「ですが、我が国の神は神ですから譲れません」

「私どもにとっては絶対唯一です」

二人とも神に関しては譲れないらしい。



「私の話を聞いて頂いてもよろしいでしょうか」

葵が二人に問い掛けた。

こくりと頷く二人を見て、葵が話を始めた。

私がいた国では『八百万の神々』と言う言葉があります。

これは数多くの神が存在するという意味です。

この小石一つにも神が宿ると言われています。

神々を身近に感じて、そして敬い尊ぶのです。

個々の神がそれぞれに秀でているので比べるものではありません。

どの神様も同じ様に尊い神様です。

ですから、私達はどの神様も敬っております。

穏やかに澄んだ葵の声は良く通った。


「神は唯一ではないのですか?」

話し終わったと思ったのか、クリスが問い掛けた。

「違います、畑の神様、稲作の神様、海の神様、山の神様、たくさんいらっしゃいます」

葵も淡々と答えた。

「我々の神は唯一で全てを司る神だ」

レリマも重ねてくる。

「私の国では神は分業です、勿論、多くの事を司る神様もいらっしゃいます」

「すべての事が出来ない不完全な神ではないのか?」

「いえ、それぞれが得意な事を発揮しているのです、そして、年に一度神様達は皆で一つの所に集まり話し合います」

「そこでもめたりしないのか?」

「神様同士で争いはしません、人々がよりよく暮らしていける様に、禍福は糾える縄の如しとされるのです」

「かふくは・・・?」

「幸福も不幸も表裏一体で代わる代わる来るような事と言う意味です」

「何故、神が不幸を呼ぶのだ、やはり不完全な神ではないか?」

「いえ、不幸と言うものはものの見方でもあるのです、例えば洪水の様な惨事が起きても、それによって畑が潤い作物が次の年から良く育つようになれば、人々にその時は不幸でも行く行くは幸福に繋がります」

「ああ、成程、それはそうだ、畑は何もしなければ年々痩せて行く」

「そうだな、だからこそ肥料を欠かせなくなるが、山奥からの恵みがあった翌年は要らない事が多い」

「そう言う事です、そして、乗り越えられない試練は与えないとも言われます」

「そうだな、人によってそれは違う幸不幸がある」

「はい、勿論、乗り越えられずに命を落とす事もありますが、人が(しゅ)として滅ぶ訳ではありません」

「それが神から見た見え方か」

「そうだと思います」

「それは大局的な見地だ」

「ええ、決して、自分の周りだけでは無い考えを神々はお持ちかと思っております」

葵とクリスとレリマの議論が続いた。



「ところで、お二人の国が争っていられるのはどちらの神が上かという事ですか?それとも神は唯一なので、相手の神を認めないという事ですか?」

葵が改めて二人に問い掛けた。

「メタナ国でのギー神様は世界で唯一の神様だから、トゥス国のスー神は認めないと言う姿勢だ」

レリマがはっきりと告げた。

「トゥス国では少し違う、ギー神よりもスー神の方が人々に自由を認めている、特に女性や子供達の自由だ、それを広めようとしている事の方が重要視されている、信仰はその次だ」

クリスの方が穏やかに話している。

「だが、それはギー神様を否定する事になる、だから我々は認められない」

レリマが畳み掛ける様にクリスの言い分を否定する。

「そうでしょうか?」

間を置かずに葵がレリマに問い掛けた。

「どういう事だ」

「ギー神様は自分に向けられる祈りの数を気にしていらっしゃるのでしょうか?」

真っ直ぐに向ける葵の瞳は澄んでいた。

「それは、多い方が良いだろう?神様だって」

「そうでしょうか?何と無くあまり心も籠っていない様なついでに祈られても数が多ければ嬉しいのでしょうか?」

「そんな事は無い、我々は真剣にいつも祈っている」

「であれば、戦争をしている間のお祈りは?」

「それは、仕方が無いではないか、戦っている最中に祈ってはいられない」

「そうですよね、で、あれば、お祈りがされない、もしくはおざなりにされたとしてギー神様はお喜びになるのでしょうか?」

揺るがない強い意志を葵の瞳から感じる。

「それは・・・」

レリマは考えた事も無い事を立て続けに言われ、返す言葉も無く口籠る。

「戦争をするより、他国の神を否定するより、心を籠めてギー神様に皆さんからお祈りする方がギー神様はお喜びになりませんでしょうか?」

「それはそうかもしれないが、ギー神様以外に神がいるなど許される事ではない」

「そうでしょうか、ギー神様はギー神様に向けられるお祈りの方が気になるのではないでしょうか?先程数が多い方が良いとおっしゃっていましたよね?」

「それは・・・」

「ギー神様が他の神様を否定なさった訳ではありませんよね、寧ろ、ギー神様は他の神様の話をする信者の方がお嫌なのではないでしょうか?」

「それは・・・」

「他の神様に意識が向けられる事の方が、ギー神様にとって不愉快なのではないでしょうか?それよりも、一心にいつもギー神様に向かってお祈りをしてくれる方が良いのではないでしょうか?」

「そう、かも、しれない、いつもギー神様にお祈りをして、ギー神様の教えに沿って暮らしている姿を見せられる方が良いのかもしれない」

畳み掛けるような葵の問い掛けに、レリマの肩が項垂れる様に落ちて行った。



「レリマ殿、我が国の最近の変化でおそらくメタナ国に知られていない事があるのだが・・・」

「どの様な?」

クリスの声を小さくした発言に少し顔を上げたレリマだった。

「メタナ国は女性に自由が無いだろう、我が国ではそれがあって女性も文官や最近は王妃の護衛騎士まで誕生している程、女性が活躍しているのは漏れ聞こえていると思うが」

レリマが大きく頷いた。

「その思想が我が国では拒絶の元だ」

「そうだろう、だが、これも、実は一部の女性の話だ、最近は女性初とまでの活躍ではないが、男性と同様という女性が増えてきているが、まだ、男性に保護された様に暮らしている女性もいるのが実情だ」

「そうなのか、トゥス国では女性は皆男性に反抗心が強いと評判だ、だから我が国の女性がそうなっては困ると信仰を揺ぎ無いものにしなければとなっている」

レリマが驚きを隠せず、目を見開く。

「そこまで飛躍しているのか?そんな事は無い、現に我が兄の妻は兄に従順で仕事もしておらず、昔からの侯爵夫人としての務めを楽し気にしている、それは本心か?と一度兄に内緒で聞いた事があるのだが、自分には王宮でバリバリ気を吐いている女性の様な才覚は無いから、兄に嫁げて幸せだと言っていた、そして、侯爵夫人の役割なら自分を活かせるので楽しいと満面の笑みを見せられた、そして私の婚約者候補とされている様な令嬢達も同様だ」

クリスは苦笑いをしながらレリマを見た。

「えっ、それは、本当か?」

開きっぱなしの口に漸く言葉を乗せるレリマだ。

「ああ、確かに国を挙げて女性の活躍と躍起になった時もあるが、それに乗る者乗らない者どちらもいるので、確かに前提の情勢の自由はあるかもしれないが、全てが宗教によるものではないと思う、国の政策だ」

淡々と答えるクリス。

「我々は何のために戦っていたのだ」

ドンドンと拳で地面を叩き嘆くレリマ。

「まだ間に合いますよ、他国は他国、他神は他神と、宗教と文化を分けて、交流を深め互いが違うという認識を持ち、自分達の神を信じて、自分達らしい暮らしをする方向へ変えては如何でしょうか?多くの選択肢の中から、ギー神様を信じる者同士が恙無く暮らしていく方が、皆が幸せになるのではないでしょうか?」

葵が静かにレリマとクリスを見ながら語った。




それから、3人は皆の元へ戻った。

皆を前に葵が『八百万の神々』の話をした。

当然、最初のレリマの様な反発もあったのだが、それはレリマが説明した。

そうなると、メタナ国の兵士は項垂れる者が多く、トゥス国の者は驚く者が多かった。

それでもと反抗心を剝き出しにするメタナ国の兵士はレリマが力尽くで押さえた。

不思議な事にトゥス国の兵士にはそこまで反発する者はいなかった。

寧ろ、戦争が終わりに向かう事に安堵する者が多く、この戦争の意味合いの違いが明暗を分けた。


如何でしたでしょうか?


少しでも皆様の気晴らしになったら良かったです。

引き続きよろしくお願いします。

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