第一話 Start over! 上
俺は思う、この世で死ぬ時に
その最後の一瞬に
"後悔している事は一つもない"
と言えるのだろうかと
そんな人は存在するのだろうかと
2025年3月16日
俺はいつものように仕事から帰宅し
夕食を食べ、風呂から上がり
家のリビングのソファーでくつろぎながら
YouTubeを見ていた。
「蓮、そういえば明日、誕生日よね?
ケーキとかどうするの?」
キッチンでお弁当箱を洗いながら
仕事から帰ってきた母親が聞いてきた。
「二人しか居ないんだし小さいのを
二つ買ってくればいいんじゃない?
母さんの職場のほうに美味しいケーキ屋さんが
あるって言ってたじゃん?
そこに行ってみようかなって
明日、俺休みだし。」
「ああ、あそこのケーキ屋はチーズケーキが
美味しいって聞いたわよ。
おかずは何か買ってきた方がいい?」
洗い物が終わった母親がリビングのテーブルの
横に座り、テレビのスイッチを入れ
スマホのゲームを始めた。
「なんか適当に作るからいいよ。
母さん、明日仕事でしょ?
好きにするからいいよ。」
今年で33歳になる。
独身、彼女なし、実家暮らし
正直、誕生日なんてどうでもいい。
過ぎてしまった年月と過去の過ちは
酒の肴にしかならないもので
それを噛みしめるだけのイベントは
いらないと思っている。
甘いものはそんなに好きではないし
ケーキもいらない。
けれど、こうして誕生日を祝おうとしているのは
去年、亡くなった父が家族での
イベントを大事にしていたから、それだけだ。
俺はいつものように
好きなアイドルの新曲を聴きながら
眠りについた。




