その8
「何か召喚してみようと思う」
そんな言葉を聞けば何か、何を召喚するのだろうと気になる所だが、周りの血を媒体にするのであまり優しい者を召喚できる気はしない。
「召喚...ね、どこで覚えたのやら」
呆れた声で白斬が呟くが、別に魔王にちょこっと教わっただけなので別にさほど難しいものでもない。
そんな会話を済ませながら、周りの、俺が殺した人間達の血を媒体に召喚術を行う。
ここで、何故召喚術を行うかについてだが、簡単な話言う事を聞いてくれる、使いやすい配下が欲しかったのである。白斬は自分の意思が強すぎるし、何より俺の配下って感じじゃない。
そんなこんなで召喚が成功したようだ。
そこに出てきたのは、小さく優しそうで言う事を聞いてくれそうな女の子だった。
その少女は俺を見るなりそっぽを向いてしまう。
「これは...吸血鬼だな」
そんな解説が横から入る。
吸血鬼、物語などでも度々出てくる有名な魔族で血を吸う事を目的に人を殺すという恐ろしい悪魔という話だったが。
「にしたって小さいよな?子供か?」
そう、見た目は完全に子供なのである。
「子供だな、下級吸血鬼とでも言おうか」
「そうなのか?」
「吸血鬼が大人になれていないという事は、人を殺して血を吸うという食事ができていないという事になるだろう?つまり吸血鬼として弱いという事になる」
丁寧な解説どうも、つまりあれだ。
ハズレを引いたのだ、俺は。
「そうよ、私は弱い吸血鬼残念だったわね?わたしみたいなのを召喚するなんて」
と卑屈的に、自分を殺す発言をスラスラと並べる少女、それはおおよそ自分では言いたくない事だろう。
「別に下級だろうがなんだろうが構わん、俺に忠実であればなんでも良い」
「忠実?そんなものある訳ないじゃない」
そう言いきられてしまった。
「おい、ヴェルナこやつはさっさと殺して召喚し直した方が賢明だと思うが」
召喚のし直しとかできるのかこれ、ただこの少女を殺して代わりにって感じになるのか。
「別に良いわよ殺したって、こんな生き方つまらないもの」
「言ったな?殺したって良いって、じゃあ俺のために動いてから死ね。せめて俺の役にたってから死んでくれ、召喚術もただじゃないんだ、魔力をかなり持っていかれるんだよ」
もう死ぬ運命しかないというのならその生き方を俺に寄越したって良いだろう。
「そんな意味のわからない誘い方で私が頷く訳ある?」
「じゃあなんだ、何か報酬が欲しいのか?」
配下として動くならそれなりの報酬はくれてやらないと反逆される可能性もあるからな。
「報酬...?じゃあ何?血でもくれるって言うの?」
冗談混じりに言っているように聞こえるが知らん。
「別に構わんよ、血ぐらいな」
そう答えると驚く顔を見せた少女。
「正気か?吸血鬼に血を吸われると言う事はお前も吸血鬼になる、もしくは意識の無い眷属になるだけだぞ?」
「その時はその時だろう?」
頭おかしいのかと、そんなふうな言葉が白斬から聞こえた気がした、いや少女からもそんな気配がする。
「んで?どうする?少女、俺から提供するのは吸血鬼が欲しがるであろう血になるが」
「本気で言ってるのね、意味がわからない、でもわかった、良いわ協力してあげる」
そんな風に協力関係が結べた所で召喚術が完成する。
「我らが契約を持って汝と契約す」
そんなお決まりの閉めをし終えたが何やらバチンと音がしてた気がした。
ふと見ると少女の首には奴隷紋が刻まれていた。
魔族領地に来てから度々目にしていたものだが、何故だろう?これは奴隷契約では無いはずなのだが。
「おいヴェルナ、あいつお前に奴隷術かけてたぞ、お前の契約術に紛れ込ませて奴隷術を入れたは良いが魔力負けして逆に奴隷にされてしまった訳だ」
またまた解説どうも、なるほどなつまりあの少女は俺を奴隷にでもして血を吸うだけ吸い取るつもりだったようだな。
「ど、どうして、どうして負けるのよ...」
そんな飛散的な声が聞こえた。
「奴隷になった気分はどうだ?少女」
「最悪に決まってるでしょ、こうなるんだったら最初からちゃんと契約結ぶべきだった...」
そうか、これが契約ではなく奴隷になったからこちらからの報酬も払う必要が無くなってしまったのか。
「別にちゃんと働いてくれるなら血はいくらでも分けてやるから、そう悲観的になるんじゃない」
「な、なんで?あなたは命令するだけで私を動かせるのに?」
「報酬を減らしたら減らしたで、パフォーマンスが下がるだけなのは目に見えてるだろう、だからきちんと働くやつにはきちんと報酬を出すよ」
正直奴隷だからといって寝首を掻かれない訳では無いので念には念をと言うやつだ。
「んで、早速で悪いんだが少し奥にあるであろう敵部隊の本陣を潰して来て欲しい、行けるか?」
数はそれなりにいるとは思うがどうだろうか。
「先に血をくれるのならば...」
そんな申し訳なさそうに言わなくても
「別に血くらいくれてやるって、ほら」
そう言って首元辺りを差し出す。
「ほんとにいいのね?頂くわよ?」
そう言って俺は吸血鬼に血を吸われた。
私はとある吸血貴族の女の子、貴賓ある由緒正しい家族。そんなお母さんが言っていたの。
「私達の家系は少し特殊で、普通の人間の血は不味く感じてしまって食事をまともに取れないのよ」と
「ならどうするの?」と聞き返すと
「ごく稀にとっても血が美味しい人に出会う事があるわ、それがあなたの運命の相手でもあるの」
「運命の相手?」
「そう、あなたが一生一緒にいても良いと思えるような相手よ」
「そんな人いるの?」
「きっと現れるわよ、きっとね」
とそんなお母さんとの会話を思い出しながら、今吸っている血がとっても美味しい事に気づく。
つまり、この人がこの方が私の運命の相手という事になる訳だ。
随分と長く血を吸うのだな、流石にそろそろやばい気がしてきた、と思った矢先に白斬が吸血鬼の少女をひっぺがす。
「吸い過ぎだ!馬鹿が!お前も何呑気に吸われてるんだ!」と
怒られてしまったようだが、その少女はとても満足そうにしていた。
「俺の血が気に入ったようなら何よりだ、報酬として差し出しているのにまずかったら元も子もないからな」
「えぇ、ありがとう、それよりあなたはもしかして人間なの?」
血の味で気づいたのか?
「あぁ、そうだよ?人間だ、たった今吸血鬼にでもされたみたいだがな」
と思ったのだが特に変化が見られない。
「じゃあ多分大丈夫よ、人間は吸血鬼の効果を受けない者、人間が受けるのは魅了なんだけど私が奴隷だからそれも効果がないでしょうしね」
つまりノーリスクって事か?それはそれで良かった。
「それで、血は足りたか?」
「えぇ、足りたわ本陣に行って殺してくればいいのね?」
「あぁそうだ、皆殺しで構わない」
そんな会話を終え向かおうとする少女に言われた。
「そうだ、名前をつけて頂戴」
「名前?俺がつけるのか?」
「魔族は元々さほど名前の文化があった訳では無いから、高貴な者か上の者が下の者に名を与えるというくらいなものなんだ」
へぇ、魔族ってのはまためんどくさいな。
名前、名前か、考えてみるけど難しいな。
「赤影というのはどうだろうか?」
名前の由来は赤い眼に赤い髪が特徴的な吸血鬼で、影から出てこれるようなのでそう名づけることにした。
「赤影、赤影ね覚えたわ、ありがとうそれで入ってくるわ」
そんな感じで割と嬉しそうに?行った少女もとい、赤影だった。
「一応白斬も付いて行ってやってくれないか?」
「私にあいつのお守りをさせるつもりか?」
別に良いだろう?今日なんもしてないんだから。
「まぁ良いだろう、少しは言う事を聞いて私もそれなりの報酬とやらを貰うとするかな」
と呟いて行ってしまった。爆速で走って。
「いや、報酬は用意するとは行ったがあくまで赤影は配下でお前は友人だろう」
という独り言は静かに風に消えていったのだった。




