その4
その鬼は白斬と言った。なんとも不思議な名前だ。
そしてお前の名前は?と言わんばかりに、手を差し出してきている。
「ヴェルナです、よろしく白斬」
そう言って相手の手を取る。
「ヴェルナ...ね、やっぱり人間だったか」
そんなふうな反応を見せる白斬、名前の特徴の違いなんだろうか、白斬なんて不思議な名前してるだけあって向こうも違和感なんだろうな。
「んじゃ、このまま魔王様の所連れて行くわ」
なに?!魔王だと...?あの魔王がいる場所へ連れて行かれるというのか...いや良いのか?
「こんな面白いやつ魔王様にも見せてやらねぇと怒られてしまうからな」
とさながら子供がおもちゃを見つけたかのように無邪気に笑う。
「俺はおもちゃではないんだが」
そんな呟きも虚しく、脇に抱えられ運ばれてしまう。
流石の鬼と言った所だろうか、軽々持ち上げられてしまいちょっとした荷物の気分だった。
「お前はどこまで記憶があるんだ?」
とことこと歩いている白斬が不思議そうに聞いてきた。
「あぁ、いや、実は記憶がない訳じゃないんだ」
「なに?嘘をついたと?」
「そう」
事実を言ったら怒られるか殺されるかとも思ったが
「なるほどな、では1つ嘘の借りだな」
と妙な事を言っていて特に気にしていないみたいだったので良かった。
そんな感じで抱き抱えられながら数時間歩かられていると、海が見えた。
「ここって人間領地の果てか...」
片田舎の村だったとは言えこんな近くに果てがあったとは...
「西の領地の果てだな」
と説明してくれたは良いが、そういえばこいつはなんで人間領地に居たんだろうか?
「なんで白斬は人間領地にいたんだよ?バレたりしないのか?」
「人が作る町や料理が好きで偶に視察に行くんだよ」
「人を殺しにくくなったりしないのか?」
「美味い飯作れるからと言って仲間を殺した敵を殺せないと?」
何言ってるんだ?みたいな感じで言われてしまった。
まぁ割とご最もではあるが。
「ここから魔族領地に入る、入ったらすぐ魔王様のところに行くからな?一応聞いて置くぞ?」
真剣な顔で問いただされた。
「もう人間には、人間の領地には戻れないと思った方が良い、ここが最後だぞ」
まるで心配でもしてくれているかのような発言だが、何を言っているんだろうこいつは?
「言っただろう?俺は人を殺す為に生きてるんだよ、それを見届けるのがお前の役目だろうが、しっかり見とけを次ここを訪れる時は国を堕とす時だから」
そんな風に啖呵を切る。
「良かった良かった、もし戻るなんて言われたら斬り殺していた所だよ」
だろうな。
「それじゃあ行くよ?魔王様に会いにさ」
そう言って魔族領地に入った瞬間、ワープゲードのようなものが表れた。
「これってワープゲード?どうしてこんなもの今出すんだよ」最初から出しておけば良かったのにと。
「魔族領地内しか使えないんだよこの魔法は」
なんとも不便極まりない魔法だ。
ただ魔族領地内であれば好きな所に行き来できるのはすごいな。
そんなこんなで魔王城にやって来た。
内装は物々しい感じもなく思ったより普通だった。
そうしているうちに魔王がいる部屋まで来たみたいだった。
「魔王様ー入りますよー」
そんな軽い調子で扉を開けた先にいたのが。
威圧感凄まじく、圧倒的オーラに身を包む者。
「こんにちは魔王」
臆したら負けだとそう思った
「こんにちは闇の魔力を持つ人間君」
そう言い放たれるだけでわかる、お前は見透かされているのだと、ここに立って居るのもおかしいのだと。
「人の国を堕とす手伝いをしてもらいたい」
臆す訳にはいかない、俺にはやるべき事がある。
そんなやり取りを横で聞いてる白斬は少し驚いた表情を見せて微笑んでいた。
あいつの笑いちょっと怖いんだよな。そんな事を思っていたら魔王がこちらを向いた。
「国堕としか...面白いことを言うね、しかもそれを手伝えと?白斬、君が連れてきただけの事はあるみたいだ」
白斬が得意げに「だろう?」と言わんばかりの顔だった。
「良いだろう、ただし君はまだ若く、弱いからね...
そうだな、5年程修行してきなよ?そうした上で私を納得させれるほどの力を身につけて来てね」
5年?!5年だと...そんな悠長にしてる暇は...
いや、確か勇者も5年程の修行がいるとか言ってた気がするな。
「なるほど?勇者とでもやり合わせようって話ですか?」
そんなわけでは無いのだろうがな。
「よくわかったね、勇者は5年の間修行するらしいが国に手を出す事はさすがにできないのでな、ならば勇者が出てきてからその勇者を潰せるものが現れれば良い」
なるほどなと納得した。
「じゃあ俺に力の使い方を教えてくれ」
そう言って、俺の修行が始まった。




