その3
あれから何時間が経っただろうか...
行くあても無くさまよい続け雨音に鳴き声を殺して貰いながら歩いていた。
すると忽然と姿を現したのは、古く崩壊寸前の教会だった。雨を凌ぐ為に教会の中へ入る。
「本当は今日は神から権能を貰う日だったはずなのにな....」
今日が誕生日である事を教会で思い出したヴェルナであった。
歩き続けていたからか教会の中へ入ってすぐ、寝入ってしまった。
そして夢の中で出会ったのは紛れもなく神であった。
『汝に力を与える、汝が欲する力とは何だ?』
欲しい力?そんなもの決まっている。
「あいつらを!村を焼き、妹を殺したあいつらを殺す事が出来る力を!寄越せ!」
相手が神であろうと知ったことか、俺が望むは奴らへの復讐のみ。
『汝に与えたるは復讐の力、ただそれは人を辞めた力でもある。それでも欲する力であるか』
「それが殺せる力であれば、復讐に足る力であればなんでも良い」
そんな会話を神と終えた。
目が覚めた。外は少し明るく雨は上がった様だった。
そして自分の体に違和感を覚えていた。
何かが変わった気がした、そんな気がしていただけで特段何が変わったのかは分からなかった。
「なんかの力を手に入れたみたいだな」
そう呟いては見るが、人を辞めたのだろうか?
あの神の言う通りなのであれば俺は人を辞め、人外と成り果てたはずだが。
そんなことを考えていると、近くから足音が聞こえた。
こんな廃れた教会に用があるやつなんてのは居ない、十中八九俺目当てだろう。
相手は奴らなのか、逃げたのがバレたのか?
そんなことを考え物陰に隠れた。
そしてそこに現れたのは、人ではなかった。
「魔族...なのか」
おおよそ人が人外と呼び化物と呼ぶ相手は魔族がほとんどであるが為に、昔から魔族の話は聞いていた。
実際に見たのは勿論初めてなわけだが。
「なにかの匂いが残っているな、誰か居るのだろう?出てくるなら早めに出てくる事だ」
そんな威圧的な声色を聞いて出て行けるわけが無い。
「そうか...出てこないと言うならば敵対とみなし、斬らせて貰おう」
そう言って剣を抜きこの廃教会をぶった斬った。
「やはり隠れていたではないか、まったく」
見つかってしまった。
「済まない、あまり体調が宜しくなくてすぐ様動けるような状態では無かったのだ」
そんな咄嗟の嘘をつき、難を逃れようとする。
白い髪に赤眼で角が生えているから鬼なのだろうか。
「なるほどな、体調が悪かったと。でそれがどうした?私の言葉の通りに行動出来なかったという事は敵である事に変わりないと思うが?」
こいつ...独裁者過ぎるだろ、自分の言う通りに動かないなら死ねってか、馬鹿言うんじゃない。
「それでどのようなご要件でこちらに?こんな廃屋に用事があったのですか?」
先程より少し謙って見ようと思う。
「いや、近くを通ったのだが嫌な雰囲気を感じたので立ち寄って見たらお前が居たからな」
嫌な雰囲気と言われてもな。
「何か勘違いじゃないですか?特にここに変わったものはありませんよ?」
何とか追い返したい気持ちでいっぱいいっぱいだった。
すると突然顔を近づけてきた。
「お前...人間か?」
これはどう答えるのが正解なのだろう、どう答えても敵だとみなされそうなのだが。
「人にしては闇の魔力が混ざりすぎているし、魔族にしては小さいし外見の変化もない」
そんなことを言われてもという感じである。
「中途半端だな」と言われてしまった。
「分かりません、自分の事は...ただ、殺したい相手だけです覚えているのは」
と記憶喪失の嘘をつく事にした、そうなったらおそらく気になってくるであろう。
「記憶が無いのか?だったらその闇の魔力は一体どうやって手に...いや....」
と考え込み始めた、狙い通りである。
闇の魔力と言ったか、人間には闇魔法は使えないはずだが...と先程の神との会話を思い出す。
『人を辞めた力』
そういう事か!本来、人では使えない力を得た訳だ。
「まぁお前が記憶がなかろうと、闇の魔力を持ってようと、私の知った事では無い」と剣の矛先をこちらに向ける。
斬りかかって来る白髪の鬼、逃げ回る俺。
逃げ切れるわけも無く、先程貰った闇を扱えもせずただ敗北し、死の窮地に至った。
「俺を殺すなら、俺が成したい事を成してからにしろ!」と半ばやけに言ってみたり。
「お前の成したいこととは何だ?言ってみろ」
言うだけ言わせて斬る、というつもりなのだろう。
「人間を殺し、国を.....堕とす!」
そう宣言した俺に対して、驚きと好奇心の顔に満ちた白い鬼は剣を下ろした。
「なるほど面白い、国を堕とす...か。お前にそんな力があると思わんし、自分でも理解している上でその発言か...」
続けて俺に言い放つ
「それが死に際で放つ、成したい事ならば叶えて見せろ、その生き様を私に見せてみよ!殺すのはその後だ」
そう笑顔になった白髪の鬼は俺に手を差し出し言った。
「私の名前は白斬だ」




