その2
大炎上
言葉そのまま、火が大きく燃え上がり、木々が家々が全て赤く染まっていた。
自分の家に駆け寄りたいが火が邪魔で駆け寄ることも出来ないまま唖然としていると、微かな声が聞こえた。
「お....お兄ちゃん...」
とても細く、今にも息絶えそうなほど小さい声でヴェルナを呼ぶのは妹のヴィレッタだった。
「ヴィレッタ!!!」
火傷の後は無い、あれほどの炎の中でそれは良い事だ、だが体から血が溢れ出ている。何かに切られたのか?何が起きて?そんな疑問だらけの俺に
「お兄ちゃ...ん......隠.....れて....」
そう言われた所で自分だけ逃げる訳にも行かず妹を持ち上げて近くのまだ燃え広がっていない木裏に隠れた。そこで見たのは。
先日見た、あれは王国の近衛騎士団だ!
助けてくれる!そう思って体を前に出そうとしたが止められた。妹に。
「駄目....見つかっ...ちゃ....駄目...」
妹の傷、広がる炎にものともしない騎士団の人間、その手には血で濡れた剣、そして妹の発言。
全てを把握した、把握してしまった。
あれらが敵である事を。
理由は分からない、分かりたくもない、まだ生きていたであろう村の住人達の悲鳴が木々が燃える音と共に大きく劈く。
「何だ、なんなんだこれは、なんで騎士団の人間が村の人達を殺し回っている、何故村に火を付けている、まさか俺もここで死ぬのか、いやそれより先にヴィレッタが死んでしまう、このままだとでもどうやっても逃げることが出来ない、周りには恐らく兵士達が多く鎮座しているだろうから医者に見せに行く事もままならない、少し遠くの医者にコソコソと隠れながら行く事ならば可能なのかもしれないがそんなことをしている余裕も猶予もない、ならばヴィレッタを見捨てて逃げる?そんな事出来るわけないだろうたった1人のまだ8歳の妹を見捨てて逃げれる兄がいる訳がないだろう、ならばこの状況をどうやって、何を考えても、力が足りない、何もかもが足りない、俺ではどうも」
「落ち着いて...お兄ちゃん」
そんな微かな声に正気に戻る。
「お兄ちゃんは...英雄になるの...レインには悪いけど...勇者よりも...凄い...英雄に...だから...ここは....逃げて....」
そんな事できるわけがっ!
「お兄ちゃん....大丈夫だから....私も後で.....行くから.....大丈夫.....すぐ.....追いついて見せる......から」
そうやって徐々に喋れる量が減っていき、呼吸が減っていく妹を手に俺は
「わかった、英雄にはなれないかもしれないが、せめてヴィレッタが誇れるような兄になってみせるよ」
そんな言葉を聞いて安心したのか涙を流しながらも笑顔で答えた
「おに....いちゃん.....だい.....すき........だ......よ」
その言葉を最後に妹は止まってしまった。
「あぁ、、あぁ、、、俺もだ」
最大限声を抑え、最大限愛を込めて、笑顔な妹に言う。
涙を堪え前に進む、怒りを携え前を向く、妹を思い後ろは向かない。
そう心に決めたのだった。
丁度日付も変わり誕生日にして最悪の日。
ヴェルナ(10歳)が復讐を誓った日である。




