その13
「好きなとこ座ってええで」
そんな風にまるで俺を品定めするように後ろから話しかけてくるやつがいた
「自己紹介は皆集まってからでええでしょ」
そんな風に喋るやつを見ていたらまたしても後ろから聞こえてきた。
「邪魔だ、突っ立ってんなそんなとこ」
「そんな風に言わなくなっていいじゃーん、んね?」
機嫌が悪そうなやつと機嫌が良さそうなやつが来た、これで3人来たという事はこれらが四天王ということになるのだろう。
そうして3人が先に座った所で余った席に座る。
四天王が全員揃ったところで魔王が登場する。
「さてさて、全員揃った所で自己紹介から頼むかな」
と魔王が言うが誰の誰からどこのやつから自己紹介を始めるのだと思う。
んじゃ俺からと言わんばかりに手を挙げる1人
「俺はバージョンウィッチの説、東のあたりを統治してるからよろしく」
と俺に向けて挨拶をしてくれている、交友的なやつなんだろう。
バージョンウィザードとはどう言った種族なのだろうか、ウィザードというのだから魔法を専門とする魔族なのだとは思うが。
「覚えなくて良い鄒喆それが俺の名前だ」
簡素に愛想悪く言う、こいつは俺に交友的では無いらしいが、どこの統治のものだろうか3人目を聞けば自ずと分かるか。
「凛々って言うのよろしくね?任されてる場所は南の方だから!暇なら遊びに来てね?」
と陽気に喋る恐らくドラゴニュートと言うやつだろう、ドラゴンが人間っぽく振舞っているようだ。
「って言いたいんだけどさ?」
先程の陽気な感じはなく低音でまるで告発でもするかのように俺に言った。
「なんで白ちゃん四天王から降ろしちゃったのかな?なんで君なんかが白ちゃんの代わりになっているのかな?知ってる?白ちゃんってとても強いんだよ?意味がわからないよね?」
そんな告発とも審問とも尋問とも取れるような質問攻めを喰らった、どうやら白斬を四天王から降ろし、俺が四天王の座に座った事が気に食わんらしい。
「それとも何?君は白ちゃんより強いって言うの?そんなわけないよね?君は無名だった無名から成り上がった、白ちゃんの力を借りてね?配下に白ちゃんいるんでしょ?なんで連れてこなかったの?なんでそんな小娘を連れてきたの?」
やっぱりブチ切れである、魔王の前だとか四天王会議だとか関係なく俺にだけ、俺しか見えない様子でバチバチに切れていた。
ただまぁ概ね言ってることは正しいし、態々言い返すような事でもない、正直知るか。の一点張りなのだから俺からなにか反論する必要はないのだ。
だってあいつは四天王をやめたがっていたのだから、あいつはそれを知らないようだから。
「あんたみたいなクソドラゴンに何がわかるって言うの?あのクソ鬼よりマスターの方が強いし!んなごちゃごちゃ言ってんじゃないわよクソドラゴンが!」
クソって3回言ったぞ、おいおい女の子がそんな言葉遣いを...とそんな場合じゃなかった。
「おい、赤影。俺たちは今招待されている身だと言うのを忘れたのか?今日は挨拶であって戦いに来たわけじゃないってのを忘れたのか?」
そう、今日は顔合わせと言うやつで態々悪態ついて戦うようなことはしなくて良い筈なのだ。んまぁ最初に悪態ついて来たのは無効なわけだが。
「ごめんなさい、でもマスターがそんな風に言われて傷つくわ!マスターが許しても私が許さないってやつよ!」
「その気持ちは嬉しいがな?別にそんなに気にしていないよ、あんな戯言は無視に限るんだよ。一々相手にしていたらキリがないだろう?」
それもそうね、とようやく納得したようだった赤影をなだめた後挨拶に戻ろうとしたが。
「貴様!黙って聞いてやっていれば好き勝手な事を!凛姉様の言ったことが戯言だと?!ふざけるなよ?!貴様がどの種族だが知らないがドラゴニュートである我々より強いって事か?前四天王の白斬様より強いって言ったのか?」
と凛々の側近が喧嘩をふっかけて来るようだった。
「おいおい、ここは四天王の場の筈だろう?まずうちのバカ少女が先に無礼を働いたのは謝るからどうかその沸騰した頭を冷やしたくれ」
と宥めた、最大限宥めたつもりだったがそれが逆効果だったらしい。
「貴様!次から次へと上から目線で!もういい、貴様を今ここで殺してやる!」
と殺してやる、つまり宣戦布告を受けてしまってはこちらとしては相手をせざるを得ないわけだが。
「良いのか?凛々さんあなたの側近が暴れているようだけど?」
「良い、私の代わりに怒って君に激昂したのだこれ以上の幸福はないだろう?」
とまるで聖母のような語り口で喋る凛々を崇める側近龍だったが、こちらにちゃんと殺気を向けてきた。
「ちょいちょい、赤影。お前も殺気を返すなよ、元はと言えばお前の...いや違うか...」
あいつの言った言葉を借りるなら俺の代わりに怒ってくれた、激昂してくれた訳だ赤影は。そんな彼女を怒る理由なんて何処にもないのだから。
「わかったんじゃ俺も赤影の声明を聞いたからな、流石に動かざるを得ない訳だから、相手をしようじゃないか、一応これでも魔王様に認められた四天王だと言うことを証明する良い機会だろうしな」
そう言って戦闘が始まろうとしてすぐに終わった。
《"闇"第5階位魔法デビルイーター》
そんな魔法一発であっけなく相手のドラゴニュートの上半身は消し飛んだ。
消し飛んだというのは些か表現が違うな、喰われたのだ、俺が出した悪魔の口にガブッと。
そんな様子を見て顔が青ざめて行く凛々だった。
本気で負けると思っていなかったのだろうか、まぁドラゴニュートはプライドが高く負けない種族と聞くからな。
「で?どうする?俺が四天王だって認めてくれるのか?凛々さん?」
そんな煽り口調で言う。俺だって腹が立っていなかったと言えば嘘になるから多少なりとも仕返しはしたってバチは当たらないと思うのだ。
「わ...わかったわ...認めます...」
そんなぽつりぽつりと言葉を発する相手を見て流石に気の毒になってしまった。
先に仕掛けてきたのは確かに相手だが、先程も言った通り俺は今回は戦いに来た訳ではないので殺したくは無いと言う事はつまり。
「赤影、復活頼んだ」
そうして飲み込んだ上半身を吐き出し、ブーブー言う赤影を説得して何とか治してもらった。
数分経ち目が覚めた彼女は俺の事を化け物と呼んだ。
「化け物...!!も...申し訳ございません...ドラゴニュートながら...負けてしまい...ました」
そんなほんとに、ほんとに申し訳なさそうに謝る彼女を凛々さんは優しく大丈夫だと諭すのだった。
「礼を言う堕黒こちらから仕掛けた事なのに治してくれて」
とそんな先程とは打って変わって礼儀正しく、相手も四天王の1人なのだと認めんばかりに礼儀良くしていた。
「では改めて、新しく西領地を任されました魔人堕黒です。よろしくお願いしますね先輩方」
となるべく愛想良く、なるべく仲良くなれるように振舞って見たけれど時すでに遅しと言うやつだろうか。
彼らから向けられる目はまるで化け物を見るような目であったのだから。
いや、お前らが化け物じゃい。
そんな突っ込みを飲み込みざるを得なかった。




