ハッカーたちの挑戦
それからハッカーチームは、何時間もパソコンと向かい合った。三人の指は凄まじい速さでキーを叩いており、モニターには緑色の文字が表示されている。そんな調子で、サニーたちは幾度となく楽園システムへのハッキングを試みた。一度、彼女たちは夜を迎え、そして新しい朝を迎える。一晩中モニターを凝視していた三人は、酷く疲れている有り様だった。
花蓮はチョコをかじり、訊ねる。
「どうすんの? 花蓮ちゃんたちが総力を挙げてもこのザマじゃ、楽園システムを破壊するなんて夢のまた夢だゼ?」
この三人が力を合わせてもなお、楽園システムのセキュリティを突破することは叶わないのだろうか。吾郎は眼鏡を拭き、それを再び着用する。
「要するに、僕たちは死力を尽くした。しかし、楽園システムを破壊するには至らなかった」
ここに至るまでに、ハッカーたちは全力を出してきた。少なくとも、サニー以外はそうである。その例外になり得る少女のことは、花蓮と吾郎にはまるで理解できていない。この少女の底力は、未知数だ。
「ああ、確かに楽園システムにはハッキング出来なかったなぁ。だけど、アタシは楽園システムを破壊するとしか言ってないぞぉ?」
そう語ったサニーは、自信に満ち溢れた表情をしていた。彼女の真の目的は、楽園システムにハッキングすることではなかったらしい。それが彼女の強がりか、あるいは真意なのか――それさえも、他の二人にはわからない。しかし花蓮の中で、確かな猜疑心が芽生えてくる。
「そんなの言い訳だゼ。サニーは自分が失敗したことを、認めたくないんでしょ?」
彼女がそう思ったのも無理はない。事実、ハッキングは失敗し、今に至るまでに大きな変化などなかった。そんな状況下でも余裕綽々としているサニーの姿は、彼女からしたら目障りにも見えるだろう。
一方で、吾郎はサニーを信じている。
「まあ待つんだ、花蓮。サニーのことだ……何か考えがあるんだろう」
それは紛れもなく、彼自身があの少女に抱く尊敬の顕れた発言であった。そこでサニーは、自身の頭にヘッドセットを装着し、花蓮たちにもヘッドセットを手渡す。これから何が起ころうとしているのかを、二人はまだ知らない。無論、サニーは考えなしに動いているわけではない。
「あぁ、アタシたちは楽園システムに不正アクセスの痕跡を刻み続けてよぉ、そして御神玲威に自らの存在を主張したようなものだぞぉ。これがどういうことかさぁ、考えてみろよなぁ」
これから、何かが起きる。花蓮と吾郎は息を呑み、同時に身構える。
「何……? どういうこと……?」
「もったいぶらずに、話してくれ」
そう訊ねた二人は、怪訝な顔をするばかりであった。そんな彼女たちに対し、サニーは妙な指示を下す。
「すぐにわかるぜぇ。とりあえずよぉ、その時が来るまで、ハッキングは続行だぁ」
ハッキング自体は、このチームの目的ではない。しかしサニーは、花蓮たちにハッキングの続行を要求する。されど花蓮と吾郎からしてみれば、今は眼前の天才ハッカーを信じる他ないのだ。二人は深くうなずき、ハッキングを続行した。
変化が訪れたのは、その数分後だ。
突如、パソコンのモニターが一斉に砂嵐を映し出し、ノイズを鳴らし始めた。一見、これは良からぬ事態に見えるだろう。花蓮たちは緊張感を噛みしめていたが、唯一サニーだけは悠然と構えている。
「オメェら、もう手を止めていいぞぉ」
その合図により、とりあえず二人は手を止めた。やがてモニターの画面は切り替わり、そこにはヘッドセットを装着した御神玲威の姿が映し出される。花蓮や吾郎が唖然とする中、サニーだけが強気である。
「オメェを待っていたぜぇ、首相さんよぉ」
そう言い放った彼女は、楽しそうに笑っていた。




