命知らずな提案
一先ず、花蓮たちは本題を聞き出そうとする。
「今度は何を企んでるんだ? キミのことだから突拍子もないことを言い出しそうだゼ」
「僕たちに足を運ばせたということは、それなりの理由があるんだろうな?」
二人が早く計画内容を知りたいのも無理はない。彼女たちは飛行機を使い、海を越えてここに来たのだ。それを理解しつつも、サニーは二人を焦らすことを楽しんでいる。
「まぁまぁ、そう焦りなさんなぁ。インターネット一つ操るだけで、アタシたちハッカーは大きな影響をもたらすことができるだろぉ? 言っちまえばさぁ、アタシたちは世界で遊んでるわけだぁ」
何やら、ここにいる三人が行ってきたハッキングは、それなりの規模を誇るものが多いようだ。花蓮はポケットから板チョコを取り出し、包み紙を破る。そしてチョコを口にし、彼女はサニーを急かす。
「もったいぶらずに話して欲しいゼ。花蓮ちゃんと吾郎を呼んだってことは、粗方、結構やばいところにハッキングするとか言い出しそうだゼ……」
よほどのことがなければ、ハッカーを一か所に集結させる必要などない。吾郎は眼鏡の位置を整え、話が進むよう促す。
「まあ、先ずは本題からうかがおうか」
今のところ、足を運ばされた二人は、一人の少女に遊ばれているも同然だ。それを二人が面白く思わないのは、至極真っ当なことである。そこでサニーは、花蓮たちに凄まじい提案をする。
「ククッ……アタシらはこれから……楽園システムをブチ壊すぜぇ」
この少女は、まるでつかみどころのない人物だ。しかしこの時ばかりは、彼女は嘘を言っていない――花蓮たちはそう確信した。
無論、二人は理解している。楽園システムを破壊することは、決して容易なことではない。
「楽園システムを壊す? 相変わらず、キミはぶっ飛んだ発想をしているゼ」
「全くだ。何を言い出すかと思えば、要するに国家転覆か。そんなことをして、僕たちの身の安全は保障してくれるのか?」
「まあ、本題をチャットに書き込めなかった理由はわかったゼ。ネットワークに書き込みの履歴が残るとまずいもんね」
そう――楽園システムの破壊を試みるということは、国を敵に回すことと同じなのだ。ましてや、それがほぼ地球全域に及ぶ国であれば、なおさら気軽に敵対できるものではないだろう。
そんなことは、サニーにもわかっている。だからこそ、彼女はチャットに計画内容を書き込まなかったのだ。同時に、サニーは決して、仲間に無理強いをしたいわけではない。
「何も、アタシのために死んでくれとまでは言わねぇさぁ。オメェらが乗らねぇなら、アタシ一人でやるよぉ。ま、アタシ一人だけデケェことをして抜け駆けだなんだ言われたくねぇからさぁ、一応オメェらも誘ったってわけよぉ」
それが彼女の真意であった。元より、花蓮たちが話に乗るか否かにかかわらず、彼女は楽園システムを壊すことを決意していたのだ。
「なるほど……サニーらしいゼ」
「まあ、貴方らしい考えだとは思う」
どういうわけか、花蓮と吾郎は納得していた。彼女たちの知るサニーは、突拍子のない奇人であり飄々とした天才ハッカーなのだ。
「それで、どうするんだぁ?」
サニーは訊ねた。その質問が出る前から、仲間たちの答えは決まっている。
「最高に狂ってるゼ、キミ。だからこそ花蓮ちゃんは乗っちゃうよ」
「僕も乗ろう。貴方たちだけが楽しむのは癪だから」
これで話は片付いた。後はいよいよ、この三人で楽園システムへのハッキングを試みるだけである。
「うししっ……決まりだぜぇ」
そう呟いたサニーは、楽しそうに笑っていた。彼女の部屋にはすでに、花蓮たちの分のデスクトップパソコンも用意されていた。
サニーは元々、この二人であれば話に乗ると確信していたのだ。




