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また読んでくれてありがとうでちゅー
「そっそれであんじぇりーな、様のお陰で元に戻る事ができるようになってしまった…」
「二匹とも準備は良いか?」
「もちろん…ですわ。けど、」
「できてるとも!」
「よし!では。ラッキーを拘束しろ!」
『了解でちゅー!!』
「ちょっと待って、君たち。僕まだ協力するなんて、それに痛いのもいやー」
「お待ちになって!」
「待ってください!隊長!」
『隊長の手出しはさせない!』
涙目のラッキーを猫のアンジェリーナ(ネズミ)とドニがかばい、ラッキーを守るように隊長に向かってとおせんぼしました。三匹を囲うように第四探索隊の隊員ネズミたちが守ります。
「お前たちどういうつもりだ。アンジェリーナ(ネズミ)とドニは兎も角第四探索隊まで、これは立派な社則違反だ。」
「君たち……」
「下手したらクビの上、多額の賠償金を支払うことになるぞ!お前たち借金地獄だ!」
「そんなもの僕の実家の財力でなんとでも……」
「それにラッキーの涙が手に入ったなら、みんなの願いが叶うんだぞ!想像してみろ、大きなチーズの塊を。」
「チっチーズ!」
「しぃ耳を貸すな!第二探索隊の隊長は俺たちを試しているんだ。例えどんな条件を言われてもラッキー隊長に従えるかどうかを!」
「きっ君達!」
「それでもおいら達はラッキー隊長が痛い目に合うのは見ていられません。」
『そうだ!そうだ!』
「その通りですわ。嫌がるネズミに無理やり涙を流させるなんて、ネズミとしての間違っています!」
「アンジェリーナの言うとおりだよ。例えアンラッキーすぎて色々慣れているラッキー隊長に痛いことをして、無理やり涙を出させようだなんて間違ってる!」
「お前たち何か勘違いしてないか?始めから私はラッキーに痛いことをするつもりはないぞ。」
隊長の言葉にドニ以外の第二捜索隊以外の動物たちは目をまん丸にしてびっくりしました。
「だって、だって、隊長ネズミさんたら怖い顔で、ラッキーを拘束しろなんて言うもんですから、てっきり痛いことするものだと。」
「うん。僕もそう思った。」
「そうですぞ。そうですぞ。第二探索隊の隊長が怖い顔なのがいけないんですぞ!」
『そうだ!そうだ!』
他の第四探索隊の隊員ネズミたちも文句を言います。
「うっ私はそんなに怖い顔なのか。」
「なんだドニ、お前知らなかったでちゅーか?隊チューはああ見えて根はいいネズミなんでちゅー。ただ怖い顔なだけのネズミでちゅー。まあお前は、まだ新人だから知らなかったんでちゅーね。」
「はい。全然知りませんでした。ごめんなさい。」
「私からも謝りますわ。ごめんなさい。」
「はぁいいさ。誤解されるのは慣れてる。ドニ帰ったらお前を復職させてもらえないか上に掛け合ってみよう。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
「それに泣かせるのには暴力をふるう必要はない!感動的な話やレモンの汁でも何でもある!ここはひとつ感動的な話で、ラッキーを泣かせて見せよう!」
「!!!!」
そう隊長ネズミは胸を張って、鼻を鳴らします。けれど隊員ネズミたちは慌てた様子でなにやら小さな声で話していました。
「たっ隊チューの感動的な話なんて……さむいおやじギャグに決まってるでちゅー。」
「そうでちゅーな。」
「あらっ聞いてみないとわからないじゃないですか?」
小声でしゃべる隊員ネズミたちの前にアンジェリーナ(猫)が割って入ります。
「その通りだよ。いくら隊長だってそれはないよ。」
「幸子もそう思う。早く始めよう。時間は有限だよ。」
ドニもあんじぇりーな(ネズミ)も続きます。
「そっそうでちゅーか?」
「おい何している早く始めるぞ!」
「はい。でちゅー。」
それから始まった隊長ネズミの話は、それはそれは酷いものでした。隊員ネズミ達は、話の途中に大あくびをしました。だけど、ラッキーとアンジェリーナ(猫)だけは熱心に聞いています。
「ふぁぁー。あんな話のどこがいいのでちゅーか?おかあちゃんが何回も聞かせてくれた定番のお話でちゅー。」
「そうでちゅーな。」
「……終わり。というわけだ。」
「なんて泣ける話なんだ!!」
「そうですわ!そうですわ!」
「そうだろう。そうだろう。」
「幸子はもう聞き飽きた。」
「僕もかな。」
『僕らもでちゅーー』
「そんなことない!勇者のバナナの話は、何度聞いても泣けるんだ!
見てくれ!僕の滝のような涙を!」
「今だ!」
「僕も手伝います。」
隊長ネズミとドニは力を合わせて、宝石をラッキーの滝のような涙に垂らします。するとどうでしょう?
涙にぬれた宝石は輝きだし、二匹のあんじゃりーなを包み込みました。そして全身を覆ったかと思ったら小さな爆発音が鳴り響きます。
「二匹とも大丈夫か?」
「心配だよ。
でちゅー。」
「涙が止まらないよ。」
「ラッキー隊長大丈夫でありますか?」
煙の中から元?の二匹が現れました。二匹は一目見た限りでは、あまり変わっているように見えません。
するとネズミのアンジェリーナが口を開きます。
「はい。心配をおかけして申し訳ありません。」
「幸子も戻ったよ。」
猫のあんじぇりーなも続きます。
「良かった。心配していたんだよ。」
「良かったでちゅー。これで一安心でちゅー。」
「僕の涙も役に立ったんだ。」
『はい。ありがとうございました』
みんなに取り囲まれた二匹は、嬉しそうに笑いました。
「それにしても変だ。」
隊長は疑問に思っていました。
それには理由があります。元に戻った二匹は、どことなく変だったからです。会話はそれなりにしていますがあれほど勇者の話に、夢中だったアンジェリーナが急に興味を示さなくなり、代わりにあんじぇりーなのほうが勇者の話に夢中になってしまっていたからです。
周りのみんなはその変化に誰も気が付いていません。
「なあアンジェリーナ……」
「あいよ。」
「はい!」
「いや。ネズミのあんじぇりーなの方じゃなくて、猫のあんじぇりーなの方……」
「そっそうかい。なんだい?ネズミたいちょー」
「いや。二匹ともに聞きたいことがある。なにか私たちに隠していることはないか?」
「いえ特に。」
「幸子もなんにもない。」
「そうか。」
「どうしたんでちゅーか?隊チューどこか変でちゅーよ?」
「まあいいから。よし!帰還するぞ。第二探索隊!」
「第四探索隊!」
『帰還の準備に移れ!」
『ハイでちゅー!!」
隊長ネズミ達の号令とともに隊員ネズミ達は駆け回ります。
「世話になったな。」
「あんたもな。」
「そのあんたのこと少しは好きになってあげてもいいよ?」
「『まあありがとうですわ。ダーリン。』なんてな」
「また後日お礼に伺いますわ。」
「おう。」
その間隊長ネズミとラッキーは猫のあんじぇりーなに挨拶しました。
「隊チュー準備ができたでちゅー。」
「ラッキー隊長こちらも出来ました!!」
『よしアンジェリーナ様を護衛しつつ本社に帰還だ!!』
こうして長かった第二探索隊の冒険が終わりました。「ちゅーーちゅーーちゅーー」おやおや。今度はどこに行くんでしょう?
「うーん。やっぱり可笑しい。確かめないと……」隊長ネズミがなにやら難しい顔で、どこかに行きますよ。このお話は、もう少しだけ続きます。