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三日間の秘密の旅  作者: 里蔵光 (協力:OpenAi ChatGPT-3.5)
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自サイトでも公開しています。

http://gambler.m78.com/hikaru/sakuhin/3days-secret-tour.html

 「では時間も押していますし、そろそろ行きましょうか」

 二人の会話が一段落したと見て、神田が声を掛けた。それと共に、三人の体がすうっと宙に浮く。

 「えっ、ちょっ!」

 知佳は慌てて蓮に(すが)り付くが、蓮は慣れている様で、くすくす笑うばかりである。

 「これが神田っちの念動力ね」

 「いや、出発って、今? お母さんに何も云ってないのに。準備だって……」

 「その点は心配いりません」

 初めて聞く声に、ぎくりとしてその方を見ると、三人の上方に誰かがぷかりと浮いていた。

 「初めまして。ドリーマーのクラウンです。ずっと待ってましたよ」

 クラウンと同じ高さで、三人の上昇は停止した。その男はパンクロッカーの様な出で立ちで、ピンクに染めた髪に、矢鱈(やたら)と顎の尖った細長い顔、細い眉毛に、左目の周りには星模様迄描いてある。然し如何(どう)も、如何見ても、中身は日本人である。

 「クラウンさん、お待たせして済みません」クラウンに向かって軽く詫びた後、神田は二人に向き直ってクラウンを紹介する。「彼の能力は幻覚です。可成(かなり)の長期間、大勢を相手に実体感のある共通の幻覚を見せることが出来ます。一般人には現実との見分けなどつきません」

 「えっ、それって麻薬みたいな……」

 知佳は心配そうに顔を歪めた。クラウンの外見からの連想か、家族が麻薬漬けになる様な、恐ろしい連想をして仕舞った。

 その様子を見てクラウンは苦笑し、「健康の心配は全くありませんよ。抑々現実だって幻覚の一種みたいなもんですからね。集団幻覚の中で彼らはあなた達と、今迄通りの生活を続けていけますよ」

 「へえ、すごい……」説明してはくれたが、知佳には余りよく理解出来なかった。凄そうだ、と云うことだけは解った。クラウンは知佳の反応が思ったより薄かったので、(やや)不満そうである。

 そんな()り取りを気にも留めず、神田は四人を念動力で移動させ続けていた。

 「もう一人合流します。それで全員です」

 眼下には雲が見える。若干肌寒いが、我慢出来ない程ではない。それも神田の能力の効果なのだろうか。

 「ドリーマーさん、遠く離れても幻覚を続けられるんですか?」蓮が誕生日でも聞くぐらいの軽い調子で、質問を発した。

 「ドリーマーは名前じゃなくて特性なんで。クラウンって呼んでもらえないかな。なんならピエロでも好いよ、同じ意味なんで」

 何処から如何見ても純血日本人にしか見えないクラウンは、稍口を尖らせ気味に抗議してから、「そうだな、僕は初期値やストーリー設定を与えて、スタートボタンを押すだけなんだ。後は相手の方で勝手に幻覚を見続けてくれるのさ」

 「便利なんですね、クラちゃんの力って!」

 「ク……なんだって!?」

 蓮は楽しそうにケタケタ笑っている。こう云うところは、知佳は蓮に全く敵わない。

 〈蓮の人たらし〉

 すっかり気が緩んで居た所為か、知佳はうっかり心の声を、皆に送って仕舞った。

 「んん? 知佳? 何か聞こえた様な気がするけど?」蓮が(とぼ)けた調子で絡んで来る。

 知佳は稍赤面しながら、「ごめんなさい、つい、心の声が漏れちゃった……」

 「もう、人たらしとか。知佳ったらひっどい」蓮は軽く頬を膨らまし、「ぷぅ」と云った。

 「ごめん。なんか、うらやましくて……」

 普通「ぷぅ」なんて口に出して云わない。そう云うところなのだ。「クラちゃん」なんて可愛らしい呼称を付けられて仕舞ったクラウンのプライドも、蓮の前では脆いもので、なんだか複雑な表情ながらも、口の端に微笑みが浮かんでいたりする。本当に羨ましい。本当に(ずる)い。伸ばしっぱなしの髪を束ねることもしていないのに、あちこち跳ねたりせず素直に真っ直ぐ(まと)まっていることさえ、(ねた)ましい。そんな事この際全く関係ないのに。

 そんな知佳の鬱屈した想いを他所(よそ)に、蓮は「ふうん、ま、いいけど。知佳だから」と云って、知佳の体をぎゅうと抱き締めた。「親友だもんねっ!」

 靄々(もやもや)した思いなんか、一気に吹き飛んで仕舞った。結局知佳も、この蓮の魅力の虜なのだ。

 「そっ、そんなことより、神田さんっ!」

 耳迄真っ赤になった知佳は、蓮の腕の中で身を(よじ)らせながら、神田の方に顔を向けた。

 「もう一人、来るんですよね? ――きゃあっ! ちょっと、蓮!」(くすぐ)られて知佳は、バタバタ暴れた。

 神田は返答のタイミングを逃し、困った顔をした。

 「蓮さん、あの……やめてあげて、戴けますか」神田に(たしな)められて、蓮は笑いながら知佳を放した。それを見届けて()()()溜息を吐いてから、「はい、もう一人の仲間が参加します」と神田は続けた。「五人目にして最後のメンバーは、治癒者(ヒーラー)です。傷や病気や、疲労などを癒すことが出来るんですよ」

 雲の下から、誰かが昇って来るのが見えた。これも神田が引き上げているのだろう。声が届く距離迄来た時、その少年は丁寧に挨拶した。

 「こんにちは、ユウキと云います。よろしくお願いします」

 ユウキは見るからに幼かった。小学一年生か、下手したら幼稚園児かとも思える程小さい。知佳の弟よりも幼い様だ。

 「ええー、かわいい!」真っ先に反応したのは、矢っ張り蓮だ。

 「やめろ。体の発育が一寸(ちょっと)遅れてるだけだ。見た目程幼くないんだぞ!」

 「へえ、何歳なの?」

 「他人(ひと)に訊くならまず自分から……」

 「女の子に年齢訊くとか、あり得ないよー」

 ユウキは唇をぎゅっと噛んで、何かを堪える様にした。そんなユウキを蓮は妖しく見つめ、「八歳。そっか、確かに見た目よりはオトナだね」と、したり顔で(うなず)いた。八歳なら知佳の弟より上である。

 「えっ、なんで?」ユウキは狼狽えた。

 「蓮、ズルしたでしょ」知佳が軽く睨み付けると、蓮はぺろりと舌を出した。

 「戦略勝ちね。知佳の能力を借りて、ユウ君の心に鳥渡質問してみたの。――ホントに鳥渡だよ――ちょーっとだけ、挑発したら、あっさり正解を送り返してくれたんだよね」

 蓮はユウキに向かって、パチリとウインクして見せた。ユウキは何故か赤面した。

 「まあなんにしても、私達のチームへようこそ。これからもよろしくね」

 知佳が優しく微笑みながら手を差し出すと、ユウキは益々赤く染まりながら、「は、はい、よろしく、お願いします」と応えながらその手をしっかと握った。

 「未だ目的地迄は距離がありますが、そろそろ説明をしておこうと思います」

 わちゃわちゃとした掛け合いなど全く眼中に無いかの様に、神田が改まった調子で皆を見渡しながら云った。

 「私達は今、沖縄へ向かっています」

 「えー! 沖縄! スゴイ! 楽しみ!」蓮が(はしゃ)いだ。

 神田は一寸(ちょっと)間を置いてから、「残念ながら、遊んでいる暇はないと思いますが」

 「ちぇ」蓮は明白(あからさま)にがっかりした。

 「目的は何でしょうか? 沖縄と云えば、X国の大統領が訪問している(はず)ですね」

 「鋭いですね、クラウンさん。(まさ)にそれが、我々のミッションに大きく関わっているのです」

 「なんか難しそうな話ですか。ついていけないかも……」知佳が申し訳なさそうに呟くと、ユウキが横目で見ながら鼻をふんと鳴らした。

 「ユウ君? あなた今、知佳のことバカにした?」蓮がユウキを睨み付けると、「な、何も云ってないぞ!」と、ユウキは必要以上に怯えた。

 「いいよ蓮、仕方ないよ。あたし考えるの苦手だから」

 「知佳さん、気に病まないでくださいね。解り(にく)ければ丁寧に説明しますから」と神田が穏やかに声を掛ける。

 「お気(づか)い、ありがとうございます」

 神田は一瞬だけ微笑んだ後、淡々と続ける。「私達の任務は、X国大統領を警護することです。沖縄に到着したら、大統領とその周囲を注意深く観察しましょう。それから、必要ならば行動を起こす判断を下します。そして知佳さん、或いは薄々感づいているかも知れませんが……」神田は云い(にく)そうに言葉を切って、知佳を見た。

 「えっ……なんでしょう」知佳は(やや)緊張して、居住まいを正し、神田に向き直る。

 「到着後直ぐに、あなたの能力が必要となると思います。情報収集には、あなた無しでは相当に難儀することになります。と云うか、あなたは半分、その為に選ばれたのですよ」

 知佳は息を呑んだ。ずっと自分を悩ませてきたこの能力が、今こそ役に立とうとしている。――同時に云い知れぬ不安感に包まれた。正気を保っていられるだろうか。

 「ご心配はお察します。然し私は結構楽観視しています。あなたには屹度(きっと)出来ますよ」

 「神田っち、無根拠なこと云っちゃだめヨ」蓮が知佳を心配そうに見やりながら、口を挟んだ。

 「いや、然程(さほど)無根拠でもないのですが……説明は難しいですね。時が来れば自ずと答えは出るでしょう」

 一同の視線が知佳に注がれた。

 「うう、が、がんばります……」知佳は皆の視線から身を護る様にしながら、やっとのことでそれだけ云った。

 蓮はそんな知佳の肩に手を置き、「知佳、私達はいつでもあなたの味方だから!」と、稍芝居掛かったことを云う。

 「神田さんの見立てが正しいなら、心配ないでしょう。余り気負わず気楽にいきましょう」クラウンも気軽な調子で同調する。

 稍タイミングを外して、ユウキが「知佳姉さん、僕が癒してあげるから、がんばって」と囁く様に云った。

 知佳は彼らの言葉に少し安心感を得て、「ありがとう、皆。足引っ張らない様に頑張ってみます」と応えた。

 然し蓮がユウキの言葉を聞き咎め、彼を横目で見ながら、「知佳……ねえさん?」と、必死に口元の薄笑いを隠しながら囁いた。

 「な、なんだよ、なんかおかしいかよ!」ユウキは精一杯の虚勢で返す。

 「いやぁ、べつにぃ? ふぅーんって、思っただけ」

 「なあに蓮、どうしたの?」知佳が不思議そうに、蓮とユウキを交互に見やった。何故かユウキの顔が、再び朱に染まる。

 「ハハーン、そうか」何かに気付いたクラウンが、意地悪な笑みを浮かべながらユウキを見()る。

 「なっ、なんだよお前ら! 嫌いだ!」

 「まあまあ、あたしたちは(みんな)君のこと、大好きだよぉ」蓮がねちっこい口調で、ユウキに詰め寄る。「知佳だってきっと」

 知佳は不思議そうにその遣り取りを眺めていたが、軈てフフッと笑いながら、

 「ああ、皆の考えてることが判らない! こんなに素敵なことってない!」

 久しく味わっていなかった当たり前の感覚に、知佳は打ち震えた。ユウキの赤面の理由なんかは別に如何でも好かった。


クラウンは名前、能力含めて、完全に作者の子です。

ユウキは名前と能力が ChatGPT によるもので、幼い子供としたのは作者です。変な恋愛ネタ絡めたのも作者です。ChatGPT 君はあまり理解してくれなかった……

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