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三日間の秘密の旅  作者: 里蔵光 (協力:OpenAi ChatGPT-3.5)
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十四

自サイトでも公開しています。

http://gambler.m78.com/hikaru/sakuhin/3days-secret-tour.html

 ピートは興奮した体で、ずっとシルヴィアに何事か語っていた。合間合間にシルヴィアが首肯(うなず)いたり、何か短い言葉を返したりしているが、略ピートが一方的に捲し立てゝいる様だ。神田達はその様子を凝と見守っていたが、軈てピートが皆の方に振り向き、何処かバツの悪い表情で、(ゆっくり)と頭を下げた。

 「何を話していたの?」知佳にはY国語など丸っきり解らない。それは蓮もユウキも、そしてクラウンも同様だった。

 「私も然程Y国語が判る訳ではないのですが……」神田はそう云い訳をした上で、「シルヴィアさんはいきなりテレポートされて戸惑っていた様でしたが……」と説明を始めると、蓮がぺろりと舌を出した。

 「ピートが状況説明し、(やや)不安ながらも一応納得された様ですよ」

 「ピートが何をしたか、しようとしてたか、シルヴィアさんは知ってはるんですか」クラウンが訊く。

 「詳しくは知らない様ですが、なんとなく察してはいる様ですね」

 〈どうぞご無事で。お幸せに〉知佳がテレパシーを使って二人にメッセージを送ると、シルヴィアは鳥渡意外そうな顔をしたが、直ぐににっこりと微笑みを返してくれた。

 〈すまない。恩に着る。いずれ何処かでまた逢うこともあろうが、一旦はお別れだ〉ピートが全員に告げる。

 能力を封じられたピートは、神田に地上迄降ろして貰うと、二人寄り添いながら何処(いずこ)かへと立ち去った。

 「ピートとシルヴィアには、無事でいて欲しいものだ」神田が小さく呟く。

 蓮と知佳、ユウキが、ピートとシルヴィアの姿をいつ迄も見送っている横で、神田とクラウンは再び警戒の目をひめゆり資料館に向けていた。知佳達もピートの姿が見えなくなると、それに合流する。その途端知佳が、「何か変」と戸惑いながら云った。

 「どうしましたか?」神田が尋ねる。

 「何か変な気配があります。誰がとか云う訳じゃないんだけど……なんだか人々の心がざわついていると云うか」

 大統領は、丁度ひめゆり平和祈念資料館から出て来たところだった。不穏な気配は、資料館の横に立っているひめゆりの塔から漂っている様である。

 「これは……ガスか!」

 神田が気付いた通り、無色透明の毒ガスがひめゆりの塔方向から流されて来て、無差別に一般人が巻き込まれようとしていた。既に何人かは不調を(きた)し始めている。

 神田が意識を集中し、ガスを選択的に拡散させ、無害な濃度に迄薄めようとしている。然し後から後からガスが流れて来る為、(とて)も追い付けるものではない。神田が苦悩していると、背後からユウキが手を添えた。

 「僕にやらせてください」ユウキは神田のスタミナを回復させながら、毒ガスに捉えられた人々に対して気を放つ。一帯が少しだけ明るくなり、倒れていた人々が回復して行くと共に、ガスの毒性が消えてゆく。その効果は連鎖的にひめゆりの塔迄遡って行き、最終的には無毒な大気が流れるのみの状況となった。

 「ユウキ君ありがとうございます。大変助かりました」神田が感謝の言葉を掛けると、ユウキは照れ臭そうに頭を掻いた。

 「大統領が移動します。次は確か、首里城へ行く筈ですね。ガスの出所が気になるので、クラウンさん、移動しながら調べておいてくれますか」

 一行は大統領の車を上空から追い掛けながら、クラウンの幻影スクリーンに群がっていた。

 「うーん、ガスを発生させていたらしい装置は判るけど、その周りに人の気配は無いねんなぁ」クラウンは首を傾げている。

 「無人の全自動ってこと?」蓮の質問に、「うーん、そうかも知れへんなぁ」と、自信なさげにクラウンが答える。

 蓮は、知佳が稍困った様な顔をしているのに気付いて、「どうしたの?」と声を掛けた。

 「うーん。なんでだろう。この装置、ピートさんの気配が……でもすごい(かす)かだし、本人もうどこか遠くに行っちゃったし……」

 「仕掛けた儘忘れて行ったのかも知れませんね」神田の指摘に、クラウンが呆れ顔で「やったら、迷惑な話や――ったく、あの無能め!」

 知佳は思わず、笑って仕舞った。発生した現象自体は、笑い事では済まされないものなのに。

 「真実彼が仕掛けた儘忘れていた物なのだとしたら、これ以上何かが起きる気遣いもないでしょうね。只確証がある訳ではないので、引き続き装置に近付く者などがいないか、監視を続けてください」

 大統領の車が首里城に到着すると、SP達に護られながら大統領が車から降りて来た。クラウンはもう一枚の幻影スクリーンを出して、大統領の行路の前後や、周辺施設などを目視確認してゆく。知佳もそれに併せて、周辺の人々に悪心や邪心が無いかを確認する。

 首里城は大規模な改修、もとい復興工事中であった。大統領の興味も、首里城そのものやその歴史と云った文化的なものより、復興の状況や、其処で使われている技術的な方に向いている様だった。

 「首里城って、火事で焼けちゃったんだよね?」蓮が訊く。

 「そうですね。令和元年の秋だったと記憶してます。全ての復興が終わるのは、令和八年か九年ぐらいと聞いてます」神田が詳しく教えてくれた。

 「なぁんか、おっきいプレハブ倉庫みたいな感じになっちゃって、全然お城じゃないのね」

 「あの中で懸命な復興作業が行われているのですよ。大統領も今、其処でいろいろ説明を受けていますね」

 「あ、撤去された」クラウンが会話に割り込んできた「毒ガス装置、業者っぽいのが来て持ってったで。Y国の工作員かな」

 「撤退したなら、其方はもう良いですよ」神田の指示で、クラウンは幻影スクリーンを閉じた。

 「大統領の監視に集中しましょう」

 神田の言葉を機に知佳が大統領周囲の者達の心を走査(スキャン)していると、何か違和感のようなものを感じた。再度同じように走査して、それが危険な想念であること迄は判ったが、如何にも実態が掴めなかった。

 「大統領の周りにいるあのSPの人達、誰もが危険な気持ちを抱いているんだけど……なんだかボウっとしていて、よく解らないな」

 知佳の言葉に、一同は周囲の状況を注視してみたが、危険想念の正体は(よう)として知れなかった。最大の能力者とみられるピートは既に去った。Y国に彼を上回る能力者の備えがあるとも思えなかった。あったとしてもこんな短期間に投入は出来ないだろう。自爆テロ未遂で幕を開けたところから見ても、Y国は最初から全力で大統領の暗殺に臨んでいる。より強力な隠し玉を持っているとは、到底考えにくい。

 「然しそうすると、この危険想念の正体は一体何なのだ」神田は独り()ちた。

 ずっとSP達を注視していたクラウンが、つと顔を上げた。

 「これは知佳ちゃんには荷が重いわ」そして神田を振り返ると「彼らは緩い催眠状態ですね。然程強力な力ではないので中々判らなかったのですが、如何やら誰かに、催眠暗示を掛けられている様です。今迄気付かない程微かなものだったのが、時間と共に少しずつ染み出して来ている感じですね。今や知佳ちゃんが気付くぐらいに迄漏出(ろうしゅつ)してはいますが、それでも具体的な攻撃意思迄は芽生えていない様です。然しそれも、時間の問題かと」

 「解けますか?」神田が問う。

 「やってみましょう」

 クラウンは幻覚能力を反転させて、SP達の催眠暗示を一人ずつ中和させていった。人数が多いのでそこそこ手間が掛かったが、それでも数分程度で作業を終えた様で、「――解けた様です。彼らの意識が正常化しました」と報告する。

 知佳は再度SP達の心を走査し、先程の違和感が消えていることを確認した。

 「私も確認しました。もう大丈夫だと思います」

 「二人とも、ご苦労様でした。ありがとうございます」

 知佳はSP達に掛けられていた暗示の痕跡を辿ってみる。必ず誰かが掛けたのだから、遡れば必然的に辿り着く筈だった。然し或る時点で、痕跡はふっつりと途絶えて仕舞う。

 「だめ。どうしても辿れない……」

 知佳の無念にクラウンが答える。

 「ああ、それは多分、無理やろうな。あの暗示は能力者に()るものではないよ。恐らく薬物と、音波や何かを利用した、至って科学的な手段で掛けられたものやろな。問題は、いつ誰がそれをしたかやけど……」

 「そうなんだ……じゃあ」

 知佳はアプローチを変えてみた。暗示の痕跡ではなく、彼らの記憶、体験を探る。今朝の記憶。昨日の体験。そのずっと前の……

 「うそ、そんな前から」知佳は辿り着いた。「来日の一週間ぐらい前に、研修の様な形で奇怪(おか)しな体験してます。アロマの様な香りが漂う部屋に集められて、何か変な音を延々と……」

 一同は顔を見合せた。神田が軽く呻く。

 「そうか、最初の自爆テロもそれで」

 神田は考えを巡らせながら、(ゆっくり)と続ける。「詰まり敵は、来日するずっと前から行動を開始していたと云うことで、その手口も予想以上に巧妙だったんですね……もう少し情報が欲しい所ですが、その研修の名を借りた洗脳が誰の指示で、()の様に行われたのかなどが判れば」

 「解りました、もう少し探ってみます」

 「大変な作業かとは思いますが、無理のない範囲で、お願いしますね、知佳さん」

 「はい」

 然し彼らの心を如何(どんな)に深く読んでみても、新たな事実は見付からなかった。知佳は焦りを感じ、いつになく必死になっていた。

 「知佳さん、無理しないで」ユウキが傍らに来て、そっと気を送る。

 「うん、ありがとう、でも……」知佳には如何(どう)すれば好いのか判らなかった。

 難しい顔をしながら考え込んでいた神田が、助け舟を出すように、「SPの研修に暗示のプログラムが仕込まれていたと云うことは、X国の警備組織内にスパイがいると云うことですね。そこで思い出したんですが、昨日の午後、X国大使館から公用車が出かけて行きました。あれは誰が何処へ行ったんだったか……」

 クラウンも考えながら「監視映像残ってるんで、再生しましょう」と云いながら幻影スクリーンを出して、昨日の監視映像を映した。

 大使館から車が出る。車内の映像に切り替わる。二人の人間が乗っている。運転しているのは秘書官の様だ。助手席には国防大臣か。車は郊外へ向かって走り去った。

 クラウンは映像を停止させ、神田に向き直った。「秘書官と国防大臣やと思うけど、二人で郊外に走り去るのは、云われてみれば如何にも怪しい気がしてきますわ。目的地は不明やけど、映像は此処迄なんで、これ以上のことは判らんです」

 そしてスクリーンの映像を現在の様子に切り替えた。秘書官は大統領の斜め後方に控え、国防大臣は大統領の隣に立っている。クラウンはその二人の様子を観察しながら、「なんや奇怪(おか)しい」と首を傾げる。新たな幻影スクリーンを二つ出し、二人をそれぞれアップにして映し出す。そして再び「なんや奇怪しいわ」と呟いた。

 「この人達、心が空っぽ……」知佳も不思議そうに云い添える。それを聞いたクラウンが、緩慢に顔を上げた。「あー、そう云うこと」

 神田が説明を求めるので、「彼らは廃人一歩手前ですわ」とクラウンが答える。「麻薬が使われている様で……非道い話やなぁ」

 「麻薬の常習者と云うことですか」神田が確認すると、クラウンは首を横に振って、「一度に大量の麻薬が使われたんやと思います。傀儡(かいらい)ですわ。誰かの云い成りになっている様です」

 「僕この距離では、ちょっと……」ユウキが申し訳なさそうに囁く。

 「うん、今ではない。機会を待ちましょう」神田に従い、一同は監視を続ける。


ChatGPT が「大統領の周りにいる人たちが危険な気持ちを抱いている」とか云うので、如何しようかとこねくり回した結果、こうなりました。

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