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三日間の秘密の旅  作者: 里蔵光 (協力:OpenAi ChatGPT-3.5)
11/24

十一

自サイトでも公開しています。

http://gambler.m78.com/hikaru/sakuhin/3days-secret-tour.html

 この日の午前中は、色々奇怪(おか)しなことが起こり過ぎて、大統領の一行は如何やら午後の行程をキャンセルし、大使館に戻ることにした様だ。

 神田達は大統領が無事に大使館に戻るのを見届けてから、「扠、取り敢えず今日のところは此処迄です。大使館の門の向こうは、日本の責任範囲ではないですからね」

 「じゃあ、午後は自由時間?」蓮が期待に溢れた眼差しで訊いてきた。

 神田は首を横に振りながら「残念ながら『待機』の扱いです。流石に今日はもう無いと信じたいところですが、夕方等にまた大統領が外出する可能性もあるので。監視しながらいつでも出動出来る様にしておく必要があります」

 「えー、そうなのか。つまんない」蓮はふくれた。

 「まあまあ、旅館で卓球ぐらいなら、問題ないんじゃない?」知佳が慰めると、蓮は少し表情を緩めて、「そんなことより、おなか空いたな」

 一行は沖縄支部へ立ち寄って、昼食を取ることにした。

 支部の社員食堂で、子供達はワクワクしながらメニューを見ていた。

 「何にしようかな?」知佳が楽しそうに蓮に話し掛ける。

 「やっぱり沖縄らしいものが食べたいなぁ。ソーキそばや海ぶどう、ちんすこうとか!」

 「ちんすこうはおやつ!」知佳の指摘に蓮はぺろりと舌を出す。

 クラウンは面白そうなメニューを見つけて、ニヤリと笑いながら云った。「ほな、これや! 激辛バリカタゴーヤチャンプルー。めちゃくちゃ辛そうやで」

 「ゴーヤチャンプルーって、ゴーヤと豚肉と豆腐の炒め物ですよね。何がバリカタ?」神田が不思議そうに問う。

 「そやな。なんやろ……ゴーヤとか豚肉がバリカタじゃあ、食えたもんや無いで」

 そう云いつゝも、クラウンはその品目を注文した。

 「クラちゃん、ゲテモノ食い?」蓮のいじりに、クラウンは心外だと云う様な調子で、「それは食堂の方に失礼や。屹度何か素晴らしい料理に違いあるまいよ」と反論した。

 ユウキはそんな()り取りを尻目に、「カレーライスが好いな」とマイペースに注文する。

 一行は楽しいランチタイムを過ごした。バリカタゴーヤチャンプルーは何故かラーメンとして出て来た。博多ラーメンの様な堅麺の上にゴーヤチャンプルーが乗せられていて、その上から赤い香辛料が嫌と云う程掛かっている。味は担々麺(たんたんめん)の様だと、クラウンは云っていた。ゴーヤの意味はあるのだろうか。クラウンはひいひい云っていたが、それでも皆それぞれに、昼食を心行く迄堪能することが出来た。

 (まさ)に束の間の休息だった。クラウンが幻影スクリーンで常時大統領の外出をチェックし続けていることを除けば、皆は任務のことなどすっかり忘れて、銘々に余暇を堪能していた。

 沖縄支部は宿泊施設を備えている為、浴場も完備されており、知佳は蓮と共に二日振りの入浴を満喫していた。ユウキとクラウンはロビーに(しつら)えてあるテレビゲームで、色々なソフトを楽しんでいる。神田は一人、報告やなんかの事務作業を(こな)した後、マッサージチェアに身を横たえて、じっくりたっぷりの全身コースを味わい尽くしていた。


 「あー、生き返る。やっぱりお風呂がいちばんよねー」湯船に浸かった蓮が、おっさんの様に(うめ)く。

 「蓮、いろいろありがとうね」隣で浸かっている知佳が云う。

 「えー? 何が?」(とろ)けた目で蓮が反応する。

 「蓮がいてくれてよかったよ」

 「なぁに、可愛いこと云ってくれちゃってー!」蓮が抱き付いて来るので、知佳は慌てゝ身を(かわ)した。湯飛沫(しぶき)が上がり、蓮は頭から湯船に沈んで行く。

 「ああっ、蓮、大丈夫!?」知佳は慌てゝ蓮を抱き起すが、当の本人はゲラゲラ笑い転げていて、結局知佳は蓮の羽交(はが)い絞めに遭って仕舞うのだった。

 その頃ユウキとクラウンは、ロビーでテレビゲームを楽しんでいた。クラウンは興奮した様子でコントローラーを振り回し、ゲームのキャラクターを巧みに操っている。

 「おいユウキ、このボス強いで! よっしゃ、攻撃しまくってやる!」

 ユウキは小さな手でコントローラーを確り握り、真剣な表情で画面を見詰めていた。「くそう、負けない!」といつになく強い口調で対抗している。二人はゲームに没頭し、時折歓声を上げながら連携プレイを楽しんでいた。

 ユウキとクラウンがゲームソフトを格闘系の対戦ゲームに変えて、クラウンが三連勝程した頃、風呂上がりの蓮が(はしゃ)ぎながらロビーに入って来た。

 「知佳! 卓球やろ!」

 ロビーの隅に、畳まれた卓球台が置いてある。

 「うわー、本当にあるんだ、卓球」

 知佳は元々運動がそれ程好きではないので、余り乗り気ではない様だ。

 二人の会話を聞いていたクラウンが、ゲームコントローラーを握った儘「おっ、卓球えゝやん、このゲーム終わったら合流するで!」と声を掛けた。

 「僕苦手だな……背が届かないし」ユウキは詰まらなさそうな顔をした。

 「お手伝いしましょうか」何時の間にか、マッサージを終えた神田がユウキの背後に遣って来た。「念動力で、丁度好い高さでキープしますよ」

 グッパーの結果、蓮とユウキ、クラウンと知佳でそれぞれペアを組んで、ダブルスで戦うことになった。

 「クラちゃーん、幻覚禁止だからね!」「そっちこそ、テレポート禁止やぞ!」牽制し合う蓮とクラウン。

 神田が審判を引き受けて、蓮のサーブから試合が始まった。蓮が力強いサーブを放つと、知佳は必死にボールに喰らい付く。

 「知佳、がんばってよー!」蓮が敵陣から応援して来る。その横でユウキも一生懸命にレシーブする。試合は熱戦となり、笑い声や歓声がロビーに響き渡っていた。

 セットの取り合いが続き、最終的にクラウンと知佳のペアが勝利を収めた。

 「おお、なかなかの試合やったな!」クラウンが息を切らしながら云った。

 蓮が大きく息を()きながら、「もう一回やるよ! 次は勝つからな!」と元気に宣言する。然し知佳は、ひいはあ云いながら「あたしはもう、パスパス、抜けさせてー」と云って戦線離脱した。

 結局蓮がクラウンにリベンジマッチを申し込み、今度はシングルスで一対一の戦いが始まった。知佳とユウキはロビーのソファに身を沈めてその対戦を観覧する。

 クラウンがスマッシュを決めて勝敗が決すると、ふくれっ面の蓮が知佳の隣に身を投げ出した。

 「あーんもう、くやしいーっ!」

 「クラウンさん、大人げないぞー」知佳がヤジを飛ばす。

 「すまんなぁ。手加減なんかしたらかえって失礼かな思ってな」クラウンはカカカっと笑った。

 その時、幻影スクリーンに大統領の専用車が映った。

 「おっ?」クラウンが画面に見入る。車内の様子が映る様に調整して確認したところ、大統領本人は乗車していないようだった。

 「なんや。秘書官のお(つか)いかいな。ヒヤッとしたやんけ」

 「大統領は外出してませんね」横から覗き込んでいた神田が、クラウンに確認をとる。

 「ああ、大丈夫や」

 「じゃああたし、汗()いたからお風呂行って来る」蓮は一人、浴場へ行った。

 ソファに沈み込んだ儘の知佳が、気の抜けた声音で以てユウキに話し掛ける。「ユウくん、卓球楽しかった?」

 ユウキは幾分嬉しそうに、「楽しかったです。皆と一緒に遊べて、嬉しいです」と応える。

 知佳も嬉しそうに笑顔を返して、「私も。皆と友達になれて、よかった」と云った。

 結局この日は大統領側にも目立った動きはなく、午後は皆だらだらと過ごしながら日が暮れていった。

 卓球も好いだけ遣り、その後もテレビゲームや、トランプ等で時間を潰した。途中神田が何度か席を外して、何か事務作業等している様だったが、特に通達事項等も無く平和に時が過ぎて行く。

 夕飯は支部の食堂で取り、その後会議室でミーティングが行われた。

 「本日はお疲れさまでした。午前中に激しい戦闘が続きましたが、皆さん調子を崩されたりしていませんか」神田が()(きた)りな挨拶で始めた。

 「()し調子の悪い人があったら、ユウキ君に云ってください。ユウキ君、その際にはお願いしますね」

 「はい。でも皆さん、元気な様ですよ」ユウキの報告に神田は笑顔を返した。

 「さて、午後の(くつろ)いでいる間に、X国側から明日以降の行程の連絡がありました」神田は一拍置いて、「差し当たって明朝は、ひめゆり平和祈念資料館に行きます」

 「ひめゆり平和祈念資料館ってどんなところなの?」知佳の疑問に神田が答える。

 「沖縄戦の犠牲となった、ひめゆり学徒隊を追悼する場所です。迚も悲しい歴史の記録が収蔵、展示されていますが、我々日本人、取り分け沖縄県民にとっては、非常に重要な施設です」

 「ひめゆり学徒隊って、中学生の女の子達やんね。戦争の犠牲になったんや」クラウンが静かに横槍を入れる。

 「そう、ひめゆり学徒隊は学徒動員で集められた女子中学生達で、戦地で看護活動を行っていました。年端も行かない子供達が、非常に過酷な状況に置かれながらも、使命感を持って懸命な思いで、職務に従事していたのです」

 心做しか神田の声は辛そうであった。そんな神田の様子を気に留めることもなく、クラウンはぶっきらぼうに云った。

 「然しX国だって、戦時は敵方だった訳で。よくそんな所に行く気になるわな」

 「反省しに行くのかな?」知佳の予想を、蓮は冷やゝかに否定する「沖縄戦に直接関わった訳でもないだろうし、そこ迄殊勝でもないんじゃない?」

 「滅多なことは云うものではないですが、まああの大統領も、流石に大戦を経験している年齢ではないですからね。どこか第三者的な感覚があるのかも知れませんね」

 神田の分析に対して、クラウンは不満げに「他人(ひと)事っちゅう訳やな」とぼやく。神田は口元で笑いつゝも、全く笑っていない目でクラウンを見据えた。

 「あ、なんかすんません」流石に神田の不愉快そうな様子に気付いて、クラウンが小さくなって謝る。

 「ま、政治的な意見交換はこの辺にして、それ以降の行程も一応お伝えしておきます」

 会議はその後十数分程度で終了し、解散後は各自風呂に入って(蓮はこれで今日、五度目の風呂だ!)、男女別々の相部屋に分かれて就寝した。


「バリカタゴーヤチャンプルー」は ChatGPT の創作です。何がバリカタなのか判らないけど、GPT 君が云うには「めちゃくちゃ辛そう」とのことなので、書き直しに当たっては「激辛」の文言を追加し、ついでにラーメンと云うことにしました。

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