くろのまち しょうせつばん 19わ「アビーとジョヴァンニのおはなし」
もう、ずっとずっとむかしのおはなしです。
あるのんびりしたちいさなまちに、アビー・マーガレットというとてもあたまのいいおとこのこがすんでいました。
アビーにはおとうとがいます。ジョヴァンニというおとうとです。
ジョヴァンニがほかのひとよりいっぱいせきをするので、アビーはくすりをいっぱいかってきてあげます。
でも、アビーとジョヴァンニのおとうさんは、おさけがだぁいすきです。おとうさんにあげるおさけもかわなければいけないので、ジョヴァンニのせきはあまりよくなりません。
アビーはあたまがいいので、わかっていました。ほかのひととおなじしごとをしていちゃいけない!どろぼうをしたり、はんざいをしたりしなきゃ!
おかねがいっぱいひつようなので、アビーはおかねをたくさんもらえるしごとをします。
ところで、ジョヴァンニにはゆめがありました。
おにいちゃんのアビーといっしょに、サーカスにいってピエロをみることです。なんてすてきなゆめでしょう!
アビーも、ジョヴァンニのゆめをすてきだとおもったので、いまよりもいっぱいおかねがもらえるしごとをはじめました。
どろぼうやちいさなはんざいよりももっとです。
でも、サーカスにいけるぐらいいっぱいのおかねをかせぐしごとは、たいへんです。たいへんなので、あるひしらないおじさんたちがおうちにやってきて、ジョヴァンニをつれていってしまいました!
おとうさんは、しらないおじさんたちにおさけをかうおかねをもらっておおよろこびです!
でもジョヴァンニは、おひさまのひかりをあびられないところにとじこめられてしまいました。
それをしったアビーはおこりました!おとうさんにおおきなこえでいいます。
「しんでしまえ!むしけらいかのさけびたり!」
おとうさんはアビーがそんなことをいったので、びっくり!あたまからまっかなワインをながしてほんとうにしんでしまいました。
さて、じゃまなおとうさんもいなくなったので、アビーはジョヴァンニをさがします。
「ジョヴァンニ!ジョヴァンニ!どこにいるんだい?!だいすきなサーカスにつれていってあげるからでておいで!だいすきなピエロにもあわせてやるからかえっておいで!」
ジョヴァンニはなかなかみつかりません。
でもだいじょうぶ!アビーはとってもあたまがいいので、ジョヴァンニをみつけられます!
あっちへはしり、こっちへはしり、まちのすみからすみまで。
ときにはネズミさんにきいたりもします。
「ジョヴァンニはどこだ!おれのおとうとはどこだ!おまえらしゃかいのがいちゅうどもがさわっていいはずがないんだ!おとうとのいばしょをおしえないと、かたっぱしからころしてしまうぞ!」
ネズミさんはびっくり!くちからあわをふいてひっくりかえってしまいました!
いっしゅうかんがたち、にしゅうかんがたち、それでもジョヴァンニはみつかりません。
とうとう、アビーはかんかんにおこってしまいます。
まちのはんぶんにひをつけました。
まちのすいどうに、どくをながしました。
まちのいちばんえらいひとをばらばらにしてしまいました!
「ええい!おとうとをかえせ!おとうとをみつけるまでおれはやめないぞ!つぎはおまえたちのばんだ!」
これには、ジョヴァンニをつれていったおじさんたちもまいりました。
「わかった!おれたちがわるかった!たのむからやめてくれ!」
おじさんたちは、アビーにごめんなさいをすると、ジョヴァンニのいばしょをおしえてまちからいなくなりました。
「ジョヴァンニ!ジョヴァンニ!にいちゃんだよ!またせてごめん!さあ、いえにかえろう!サーカスにいこう!」
おやおや?でもジョヴァンニはなんにもいいません。
それもそのはず。なんと、ずっとおひさまのひかりをあびなかったジョヴァンニは、ドライフラワーびょうというびょうきになって、はんぶんばけものになってしまっていたのです!
じゃじゃーん!これにはアビーもびっくりぎょうてん!ジョヴァンニはもうすぐにんげんじゃなくなってしまいます!
「ジョヴァンニ!ジョヴァンニ!ごめん、ごめんな!にいちゃんがぜったいになおしてやるからな!いっしょにサーカスにいこう!ピエロをみよう!にいちゃん、なんでもするよ!」
そうして、そのひ、アビーというおとこのこはいなくなってしまいました。
でも、かなしいことはひとつもありません!そのかわりに、スマイル・ザ・ジョイボーイというピエロがうまれたのです!
めでたしめでたし!




