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ドーンオブスレイヤー  作者: チュン
第二章:三人の老婆と死者の都
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第090話 「伝説の都」

 黄金郷へ向かう途中、老婆が私に何か持って来た。

 一旦、地上に降りてそれを受け取る。


「ほれ、魔導書を回収しておきました」

「おお! 私の魔導書ネクロギアではないか、ありがたい。む・・・・・・他の荷物はどうした?」


 老婆は魔導書しか持っていない。


「この老婆には重すぎて、そんなにいくつも持てませぬ。他の物は捨て置きました」

「何だと?! 物の価値が分からないのか!」


 人間化擬態薬やフィーバーポーションなど、私にとって必需品だ。希少な材料が必要で、中々作れない逸品だというのに!

 私は取りに戻るから落ちていた場所を教えろ、と老婆に詰めた。

 だが老婆は魔導書の気配だけ感知してそれを持って来たらしく、書が手元にある今となっては荷物の位置など分からないようだ。

 貴重な錬金術用具も沢山あった。あれ等が無ければ、薬を作る事も出来ないではないか・・・・・・なんという事を。


「あんなガラクタなど使わなくとも、彼の地には何でもありますよぉ。擦りこぎ、乳鉢、蒸留器」

「希少な薬草、毒草、マンドラゴラ! 鉱物、魔物の素材、毒虫も」

「なにせ彼の地は黄金郷。錬金術の道具材料、なぁ~んでもございますとも! ヒャヒャヒャ!」


 老婆達の余裕たっぷりな言い返し方に、私は鼻白んだ。


「ほ、ほう。そうか。……ならば良しとするか」


 本当だろうな? 薬が作れずバンパイアハンターに追い回されたら、お前等にどうにかしてもらうぞ。 


「さぁさ、参りましょう! いざ、黄金郷へ!」


 私がまだ文句を言いそうなのを察してか、老婆達は私に先を促した。



□■□■□■□■□■□■□■□■



 黄金郷は意外な場所にあった。

 ウェストリコより西に大分行った所に、古代文明の物とされる遺跡がある。

 その地下には墓、いわゆる地下墓地カタコンベがあって、説明が難しいのだが・・・・・・黄金郷は、その裏の世界である魔界に存在する。

 普通にこの場所を訪れても、ただの墓でしかない。

 私と三人の魔女は、地下墓地最奥にある魔界へのゲートを開いて黄金郷へと到達した。


「おぉ・・・・・・! これが黄金郷か!」


 ここは地下世界のはずだが、魔界には空があった。太陽は無く、夕焼け色の空がいつまでも荘厳な街並みを照らしている。

 街中は黄金の装飾が、至る所に施されていた。先程までの陰鬱な地下墓地の様相とは、まるで違う。

 私達は広大な街並みを一望できる、高台の城に居た。最奥のゲートがある場所が、こちらでは城だったのか。

 驚くべきは街並みだけではない。

 道を行き交うのは全てがアンデッドだった。

 ゾンビやスケルトンがひしめき合う中、大型の竜種の骨が荷馬車を牽引しているのが見える。

 数えきれないゴースト達が、建物の窓や屋根の上を飛び交う。

 ここはまるでアンデッドの国だ。


「黄金郷は錬金術の高度な文明であったと聞く。それ故に滅んだ、とも」

然様さようでございます」

「人の欲は恐ろしいもの」

「永遠に富を得ようとしてこうなったのじゃ」


 この古代文明がどのようにして今の有様になったのか諸説あるが、詳細は定かでは無い。

 ただ文献に残る共通点としては、錬金術の秘術が原因で滅んだ、という点で一致している。

 それは災害だとも、神の怒りだという説もあった。

 いずれにせよ何かろくでもない事が起こった結果、ここは空間ごと封印されたのだ。現実の裏世界である魔界に。


「さて、景色を見るのも良いですが、ここへ来たからには今後を占うべきです」

「そうじゃそうじゃ、中へ戻りましょう」


 老婆達が城の中へと誘う。


「何だ、その占いというのは?」

「ここには良いお風呂があるのですよぉ~」

「そうそう。湯船につかれば未来が見えますのじゃ」


 相変わらず訳が分からない事を言う奴等だ。そう思いながらも私はついて行った。


「かなり大きい風呂場だな」


 城の中に戻り案内された場所には、石造りの大きな湯舟があった。

 カビ臭く苔むしたそれを、老婆達が掃除し始める。


「……大丈夫か。その、腰とか」

「儂等を気遣ってくれるのですか!」

「あな嬉しや!」

「ケイオス様ばんざぁい!」


 私がちょっと心配すると、老婆達はウザい程に喜色満面になった。 


「なんのこれしき!」

「ケイオス様の為なら、えーんやこらですじゃ」

「ケイオス様ばんざぁい!」


 元気な婆共だ。まあこれだけ達者なら、やらせておけば良かろう。

 私は魔導書ネクロギアでも読んで待つとしよう。

 しばらくそうしていた。


「ケイオス様、掃除が終わりました」


 む、早かったな。


「火を焚く準備は万全です」

「水は……汲んでおりませんが」


 なるほど。水源は近くに無いのか。

 ここは城だ。嘗ては大勢の小間使いや奴隷達が、水運びなどを行っていたのだろう。


「いや、それしきの事は私がやろう。ご苦労だった」


 私なら水を創造する魔法など容易い。湯船に満杯になるまで水を注ぎこんだ。

 ついでに風呂釜の薪に火をつけてやる。薪は勢いよく燃え始めた。


「あいや、ありがとうございます」

「儂等の仕事だちゅうのに、申し訳無い」

「ケイオス様ばんざぁい!」


 湯の温度は任せたぞ、と私はまた魔導書に目を落とす。




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